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タイサル!第42話「2年ぶりのタイ調査!出国準備〜隔離ホテルチェックイン編」

みなさんこんにちは、豊田です。

渡航直前にいろいろあってお休みをいただいていたタイサル!ですが、休載期間がすっかり長くなってしまいました。タイの調査地からのリアルタイム配信も考えていましたが、正直今回はそんな余裕はほぼありませんで、毎日個体識別に苦しめられていました。そんなこんなをしていたら、あっという間に調査は終わってしまいました。諸々一段落ついたので、いよいよ今週から更新を再開しようと思います。とはいえ、4月5月と怒号のごとき忙しさに忙殺される可能性がありますので、しばらくは不定期配信となりそうです、ご容赦ください。

今回、実に2年ぶりのタイ調査が実現したわけであります!
というわけで、久しぶりのタイ調査に関する記事を書きます。遅くなってしまうとどんどん記憶が薄れていくので、備忘録的な記事にしたいと思います。最初は出国準備〜隔離ホテルチェックイン編です。

渡航前の手続き

渡航規制下でのタイ入国に際し、入国に向けた準備が結構大変でした。用意しなければならない書類がたくさんありました(入国に際し必要な手続きは2022年1月末時点のものです)。

①ワクチン接種証明書の取得

これは岐阜市の保健所に出向き、本人確認とワクチン接種券を提示することで即日発行されました。

②渡航前のPCR検査

これが一番緊張する場面でした。私の渡航は2月9日水曜日でしたが、3日前に当たる6日は日曜日で病院はお休み。よって、7日月曜日に検体採取し、8日に結果が出て陰性証明書をもらうという日程。その翌日には渡航です。万が一陽性だったり、証明書受け取りでトラブると渡航ができなくなります。このギリギリ日程は最後までハラハラしました。

③ThailandPass申請

タイに入国するためにはThailandPassを事前に取得しなければなりません。このThailandPassを取得するために必要な書類は、
・パスポートのコピー
・ワクチン接種証明書
・往復航空券
・隔離ホテル予約証明書
・US$50,000をカバーするCovid-19対応の海外旅行保険加入証明書
です。

これらの書類を集めて、渡航の2週間前を目処に申請します。私の場合、渡航2週間前は1月26日でしたが、ここで悩ましい問題が生じます。

タイ政府は、2月から入国時の規制緩和を決めており、2月1日申請分から、1週間の隔離を求めるAQスキームの他に、1日目と5日目だけホテルに宿泊しPCR検査を受ければOKというTest&Goスキームを再開するというアナウンスが出ていました。

2月まで待ってThailandPassを申請すれば、隔離期間が短くなり、隔離費用を抑えることができます。一方で、申請が殺到して承認までに時間がかかることが予想され、下手をすれば間に合わないというリスクも。

結局私は、以下の2つを理由にAQスキームを選びました。

理由①確実に陰性であることを証明してから調査地に行きたい
入国条件を満たしてタイに入国しているとは言え、調査地や地元の人からしたら「感染者の多い日本から研究者が来た」という事実に変わりはありません。しっかりと1週間隔離期間をおいて、陰性であることを証明してから調査地入りすることが、調査地で私を受け入れてくれる職員さんたちの安心につながると判断しました。また、野生動物の調査をするわけですから、確実に陰性であることを担保しておきたいという理由もありました。サルたちにうつすリスクがゼロではないので、気をつけねばなりません。

理由②Test&Goスキームは調査日程上メリットが少ない
Test&Goスキームは、入国初日と5日目にホテルに宿泊しPCR検査を受け、陰性であれば翌日チェックアウトし自由に行動できるというシステムです。問題は5日目にもホテルに宿泊せねばならないという点です。要するに、1日目の検査で陰性で2日目に解放されたところで、5日目にはまたバンコクのホテルに戻ってきて宿泊しPCR検査を受けなければならないのです。その間わずか3日の間で調査地を往復するのは交通費の無駄なので、結局バンコクで足止めを食らうことになります。それでも結果的に短縮できる隔離期間はわずか1日だけ。3日間、感染者数の多いバンコク市内をうろついていては、余計に感染リスクに晒されるだけです。だったら、7日間ホテルに缶詰にされている方が遥かに安全で確実だという結論になりました。

というわけでAQスキームで行くで!と決断し、1月28日時点でThailandPassを申請しました。申請はサクサク進み、ポチった瞬間、秒で承認されてQRコードが送られてきました。早い!

ちなみに、今回の渡航に際し、スムーズに書類が揃ったのは、全て旅行代理店さんが手はずを整えてくれたおかげです。

私はいつも海外出張の際は「業務渡航センター」さん(ホームページ:https://www.gtcenter.jp)にお世話になっています。コロコロと規制や必要書類が変わる中、これだけの渡航書類を自分一人で用意するのはほぼ不可能(しかも科研費支出対応の形で領収書諸々をミスなく用意するのはそれだけで神経を使う作業)なので、研究者の出張を専門にする旅行会社さんの助けを得られたのは非常に大きかったです。

おかげさまで、私は渡航前にリバイズ原稿を1本再投稿し、新しい論文を1本投稿するだけの余裕がありました。


いざ、出国!

私は中部国際空港からの出発なので、岐阜から名鉄電車で移動します。中部国際空港行きに乗ったわけですが、私みたくキャリーケースを持って空港に行く明らかに海外渡航者みたいな人はゼロ。おまけに風貌的に明らかに”海外出張にいくサラリーマン”ではない私は、どこからどう見てもただの”旅行者”。「このご時世海外に行くのかよコイツ」みたいな冷ややかな視線を受け続け、道中ずっと精神的ダメージを喰らい続けました。

そこに追い打ちをかけたのが、これ。

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どうやら前日に着替えの用意をしていた僅かなスキに、我が家の猫たちにジャケットの裾を囓られていたようです。すでに電車の中。替えのジャケットなんかないし、空港で買うのもめんどくさい...こんな貧乏くさい格好でタイに入国せねばならないのか...と思うと、もう泣きたくなる始末。服囓るのほんとヤメテ...

そんなこんなで心も服もボロボロの私は、なんとか中部国際空港にたどり着き、搭乗手続きカウンターへ向かいます。書類チェックと荷物の預け入れ、搭乗券の発行です。

預入荷物の重量制限は30kg。でも今まではだいたい2kg超過までは見逃してくれるというのが普通でした。今回は久しぶりの渡航だったので、調査機材含めて持っていかねばならない荷物が多く、どう頑張っても30kgを超えてしまいます。なので、今回も2kgまでなら許してもらえるはず...と高をくくって、32kgぴったりでパッキングしました。

結果、見事に超過料金2kg分、約10,000円、きっちり徴収されました\(^o^)/

ここで貴重な手持ち現金から諭吉がひとり消えました。

また精神的ダメージをくらい、出国ゲートを通過しました。

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このゲート...待ちわびたよバンコク...!!
ここでちょっと気力が回復します。

しかし免税店はほとんど閉鎖状態。開いているお店もありましたが、お菓子などのお土産はほぼなくて棚は空っぽ。人が来ないので、賞味期限のある食べ物は置かないんでしょうね。困った...何も買うものがなかったので、おまけのグラスにつられて700mlのクラフトジン「六」(3,300円)を買いました。

バンコク行き搭乗ゲートは人はまばら。30人いるかいないかというガラ空き具合でした。一方でゲート前に長蛇の列ができて密々で大混雑していたのがベトナム航空のゲート。これは一度陽性者が出れば数十人単位で機内濃厚接触者になるやろな...というレベルでした。


搭乗から入国まで

バンコク行きの便は人が少なかったので、みんなそれぞれ数列の間隔を開けて座席に座っていました。なんとなく安心できる感じでした。

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久しぶりの飛行機だったので、こんな機内食の写真を撮っちゃうなど。この機内食に出ていたラープ(豚肉ミンチのやつ)が久々の本格タイ料理って感じで美味しすぎて、ひとりで感動の涙を流していました。

CAさんがなぜかずっと僕にタイ語でしゃべりかけてきたのが気になるフライトでした。タイ語で「私日本人です」って伝えたのに、その後もタイ語で対応され続ける始末。タイあるあるですが、タイ語で「タイ語が喋れません」と言っても無意味なのです...すでにしゃべってるやん!って思われるんですかね。まぁかろうじて理解はできるから良いんですけど...

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機内で配られた質問表。記入したはいいものの、入国時にこの書類を提出することはありませんでした。なんで書かせたんや...でも入国できたのでマイペンライ!

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こちらも機内で渡された書類。「COVID-VISA」と言われていましたが、正式名称は不明。ちなみにこの書類はTest&Goスキームのスタンプが押されていたので、CAさんに「僕AQスキームなんですけど」と伝えたのですが、「それでOK」と言われました。ホンマかいな?と思いつつ、必要事項を記入します。

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飛行機を降りると、タイランドパスのチェックポイントヘ進みます。

ここでタイランドパスのQRコード、ホテルの予約書、保険証書、ワクチン接種証明書、PCR陰性証明書、COVID-VISAと呼ばれる書類を出します。案の定、私のCOVID-VISAはTest&Goスキームスタンプがあったので、ここで新しい書類に書き直しとなりました。CAめ、全然OKじゃないやんか!でも入国できたのでマイペンライ!

書類をさらっと確認したら、そのままパスポートコントロールへ。あっという間にスタンプが押され、預入荷物を回収したら、もう出口。

着陸から空港出発まではわずか40分程度でした。

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ゲートを出ると、正面には隔離ホテルの送迎受付カウンターがずらーっと並んでいます。この中から自分が泊まるホテルの名前を見つけ出し、名前を伝えます。本人確認は特になく、リストの名前と一致すれば連行されます。

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私の名前を伝えたところ、対応のお姉さんに「アルトヨタ。アル?アル!アルウウ!キャハハ」と散々名前をバカにされたのち、車に連行されました。ここでも精神的なダメージを喰らいました。お姉さんはなぜかちまきを2個持っていました。


隔離ホテル到着

今回手配してもらった隔離ホテルは、Centre Point Hotel Silomでした。

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お部屋は広々、快適です。

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冷凍冷蔵庫、電子レンジ、台所に洗濯機と、生活には不自由なさそうです。洗剤とスポンジまで用意されていました。

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お風呂も広々。バスタブとシャワー室が別々になっているのもいいですね。

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1週間分のおやつもありました。

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部屋からの眺め。あー...この喧騒、このにおい、バンコクだ...


というわけで、私の隔離生活が始まりました。

次回は隔離生活のお話です。

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タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓

連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5

タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439
第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na32091a5b055
第20話「南部調査その③:見慣れたサルのはずなのに...ベニガオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3488e5942c1a
第21話「南部調査その④:アナタどこにでもいるわね!カニクイザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n219720155be3
第22話「北部調査その①:黄金の赤ちゃんを求めて〜ファイヤールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndeb079c8825c
第23話「北部調査その②:ガイコツの隣でうんち拾い...アッサムモンキー編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/naf23f701a677
第24話「南北調査おまけ:噂のココナッツモンキーを求めて−モンキースクール編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfb50e551aa1a

第25話から調査地シリーズに戻ります↓
第25話「年に一度の風物詩!コウモリ集団飛翔の撮影秘話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n0b4911b372e2
第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n264fade216ea
第27話「思い出いっぱい!タイで購入したmy冷蔵庫の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n071966d6f39a
第28話「クリスマスにひとりで死にかけた話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nead29459b1db
第29話「調査地での同居人・チンチョッとの日々のあれこれ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nab48db873ca1
第30話「30回更新記念:タイサル!シリーズの振り返りと今後について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd7f4df7fdc46
第31話「雨の日の定番!カエルの唐揚げができるまで」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n46e0aa051425
第32話「ベニガオザルの噂の真相」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndde380f51a93
第33話「担当イラストレーターさんとnoteコラボやオリジナルグッズ誕生について対談してみた」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n2d34def8697b
第34話「調査地を思い出すタイの歌ー独断と偏見で選ぶ私的25選」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n95cddb7e6dfb
第35話「11月といえば!タイの恒例行事、ロイクラトンの話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n2999bc1434a5
第36話「調査地の山に眠る黄金の仏陀像を拝みに行った話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5f6521ee811
第37話「第2の調査地開拓なるか!?お隣さんの視察調査の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n913898fb06a2
第38話「あくびシリーズの隠れミッション:ベニガオさんの犬歯サイズを記録せよ!」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne3dcefbabb72
第39話「謹賀新年!2021年の振り返り&調査地で過ごした年越しの思い出」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n70a15e661168
第40話「調査地で出会った憧れの奇蟲スペシャル※蟲警報再発令!」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nc0b490d76cf7
第41話「ついに完了!コツコツ骨計測&オンラインガイド振り返り」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9aa1341b7e13

番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2

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Twitterはこちらです。ベニガオザルのみならず、これまで撮影してきたサルたちの写真を載せています。

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