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エッセイ

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自身の記事の中から、エッセイをまとめています。
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#人間

秋の手をとる

秋の手をとる

今年は暑さが長く続くと聞いていた。
だから秋が遠い、もしくは来ないのではと、遠く秋へただ手を伸ばしていた。

しかし9月が近づき始めると、秋の足音がするではないか。空に浮かぶ雲は秋へと流れ、虫の声は移ろい秋を呼んでいる。まだまだ猛暑日と言われるなか、どことなく以前より過ごしやすく感じ、秋の気配へ目を移す。

そして思うのだ。
ごめんね。
ありがとう。

それはまるで、親が子を思う様に似ている。

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憧れの君

憧れの君

とある画家がある朝、起き出したかと思ったら一気に白いキャンバスに色を置いていく。そんな風に、目覚めたら世界が一気に春になっていた。

冬が嫌いというわけではないけれど、春になると、ようやく会いたい人に会えた様な気持ちになる。わくわくするとか、ときめくとか、そういった気持ちに自動的になる。

春ってどこか特別で、主役級の華やかさがあるけれど、でも「主役」ではない。そんな感じがするのは、とてつもないイ

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人間について

人間について

テレビ番組で、2000年前に沈没した船に眠っていたとある円盤から、驚くべき発見があったと紹介されていた。それは数十個の緻密な歯車でできており、月の位置やオリンピックの開催年などが分かる機械。「言わば2000年前のコンピュータ」なのだそう。おお、すごい。これは驚いた。専門家も大変驚き歓喜したとのこと。「こんな文明が、2000年も前にあったなんて!」とテレビが言う。たしかに。と思う反面、どことなく、で

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大仏様

大仏様

鎌倉の大仏様はどこかハンサムなお顔立ち。

空や雲といった自然を背景にしたお姿は
より一層神秘的で、風景や思想も含めて有機的でした。


宗教や宗教美術って、
不思議ですごいものだなと思うんです。

人々の思想や祈りといった無形のものが、
儀礼や彫像、絵画などの「かたち」になって生み出される。
そしてそれが多くの人の信仰の対象となり
同時に芸術として多くの人を魅了し、
何世紀もの時を経て在り

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