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面白い本、おすすめの本を紹介していきます。
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#読書

テクノ・リバタリアンという、新しいアナキストたち

テクノ・リバタリアンという、新しいアナキストたち

"テクノリバタリアン″と呼ばれる人たちのことをご存知だろうか。

テクノリバタリアンとは、技術(テクノロジー)とリバタリアニズム(自由主義)を組み合わせた言葉であるが、テクノリバタリアンをChatGPTに聞いてみると以下のような答えが返ってくる。

おそらくこの定義に間違いはないだろう。テクノ・リバタリアンはテクノロジーの進化を推し進めることで中央集権的な管理から自由になること。そしてそれが社会全

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最近読んでいる本の紹介(5冊)

最近読んでいる本の紹介(5冊)

先日、「趣味は読書の人の醍醐味〜私の本の読み方・買い方〜」というタイトルで記事をアップしたが

その中で私は、5冊くらいの本を並行して読んでいるということを書いた。それはふだん持ち歩いて読む本、お風呂に入りながら読む本、そしてトイレにこもって読む本など、読む場所によって読む本を分けるという読み方だ。

このnoteの読者の方から「どこで、どんな本を読んでいるのか気なる」というコメントをいただいたの

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「趣味は読書」の人の醍醐味〜私の本の読み方と買い方〜

「趣味は読書」の人の醍醐味〜私の本の読み方と買い方〜

「本を読まない人が増えた」と言われるようになって久しい。私のように出版社に籍を置く人間や本屋さんからしてみたら、商売あがったりの実に厳しい時代である。

ネットやスマホの影響はもちろんあるが、私は何よりも本(活字)というコンテンツに魅力を感じる人が少なくなったことが、大きな理由だと思っている。

つまり本よりも魅力のある娯楽やコンテンツが増えたということだ。

可処分時間はサブスクの映画やドラマ、

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ロシア文学に出てくるロシア料理で、食の妄想をふくらませる

ロシア文学に出てくるロシア料理で、食の妄想をふくらませる

ロシアというとあまりよいイメージのない昨今ではあるが、本屋で思わず手に取り即買いしてしまったのが

『ロシア文学の食卓』(ちくま文庫)である。

本書は、東京外語大学教授の沼野恭子さんによる、ロシア文学に登場する食や料理をテーマにした本である。

有名なロシア文学作品に登場する料理や食事のシーンが紹介され、その料理や食事に込められた意味や背景が解説されている。

例えばこんな具合だ。

それに対す

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スチームパンクとサイバーパンクが融合したSF小説に酔いしれる

スチームパンクとサイバーパンクが融合したSF小説に酔いしれる

サイバーパンクと呼ばれるジャンルの映画が好きだ。

例えば、リドリー・スコット監督の『ブレードランナー』、大友克彦監督の『アキラ』、押尾守監督の『ゴースト・イン・ザ・シェル』、そしてウォシャウスキー監督の『マトリックス』シリーズ。

サイバーパンクとは、近未来の世界を舞台にしたサブカルチャーの一つで、高度なテクノロジーや人工知能、サイバーネティックスが進化した社会を描いたフィクション作品や文化運動

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生産性とは、罠なのか⁉︎

生産性とは、罠なのか⁉︎

人間の平均寿命が80年くらいと考えた時、それははたして長いのか?短いのか?

百獣の王であるライオンの平均寿命が15年くらい、ライオンすら恐れて闘いを挑まないゾウの平均寿命が70年くらい、(陸の生物ではないが)野生のアオウミガメの平均寿命が80年くらいだそうだ。

つまり人間の平均寿命はアオウミガメと同じくらいで、それは他の生物と比べるとやはり長いほうなのだろう。

しかし80歳まで生きるとして、

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分厚いSF小説を読むことは、限りなく贅沢な時間を過ごすこと

分厚いSF小説を読むことは、限りなく贅沢な時間を過ごすこと

私の周りには「趣味は読書」と言いながらも、ビジネス書や自己啓発書以外は読まないというタイプの人たちがいるが、(あえて誤解と偏見を恐れずに言うならば)、私はそういう人たちにどこか貧相なイメージを持たずにいられない。

この本を読めばすぐに役に立つとか、すぐに使える知識が得られるとか、私がそういう即時的で生産的な読書が好きではないからだと思う。

効果があるとかないとか、ためになるとかならないとか、そ

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この正月休みに、「人類の進化」についての確かな知識を得よう。

この正月休みに、「人類の進化」についての確かな知識を得よう。

ダーウィンの進化論を、人生やビジネスなどの文脈で語る人は少なくない。

そういう人はまず、「ダーウィンの進化論にもあるように」と前置きをつける。そして次のように断言する。「生き残れるのは強い人間ではなく、時代に適応できる人間なんです」と。

なるほど、確かにその通りなのかもしれない。進化とは強くなることでも優越することでもなく、変化し続ける環境に適応することなんだと。かのチャールズ・ダーウィンがそ

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「弱さ」にこそ社会の伸びしろがある

「弱さ」にこそ社会の伸びしろがある

正直に言って、自分を強いと思ったことは一度もありません。

大学生の頃にあさくハマったレイモンド・チャンドラーの探偵小説。その主人公であるフィリップ・マーロウの有名なセリフは

男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない

というものでした。その時はカッコいいなぁと思い、「そんな男に私はなりたい」と思ったこともありましたが、

40も半ばを過ぎた今、「強さ」とか「強味(st

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奴隷根性から脱却するための本

奴隷根性から脱却するための本

「今の政治はひどい」と思っている人は少なくないかもしれません。しかし「そもそも政府なんて必要ない」と思っている人がいたとしたら、これは全然違う話になってきます。

政府なんて必要ないという考え方を、無政府主義(アナキズム)と呼びます。今からおよそ100年前、明治の終わりから大正時代にかけて、このアナキズムの急先鋒と言われ注目されていたのが大杉栄という人です。

個人的には大好きな、この大杉栄につい

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ダラダラしたい時に読む本

ダラダラしたい時に読む本

ダラダラしたい時に読む本というのがあります。例えば寒い冬にコタツにくるまりながらうつらうつらと読む本、あるいは「今日はもう何もしない」と決めた休日にソファでごろごろしながら読む本。

そんな本を考えた時に、今パッと思いつくのが内田百閒の『阿呆列車』です。(「あほうれっしゃ」と読みます)

用事がなければどこへも行ってはいけないと云うわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来よ

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ジャズを聴きながら、ある自由人のことを思い出す

ジャズを聴きながら、ある自由人のことを思い出す

今朝、通勤中に(なぜかむしょうに)ジャズが聴きたくなって、“NOW JAZZ BEST millennium”というアルバムを聴いてました。

私がジャズを聴くようになったのは、まぎれもなく植草甚一さんの影響です。この植草さん、一言で言ってしまうとむちゃくちゃ変なおじさんで、映画とジャズと古本(特に洋書)をこよなく愛し、コーヒーが大好きで、タバコを15分に一回吸うという超ヘビースモーカー。背は小さ

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海外ミステリー小説の楽しみ方

海外ミステリー小説の楽しみ方

大きな書店に行き、少し時間に余裕がある時は必ず「ハヤカワ文庫」のコーナーに行きます。ハヤカワ文庫には翻訳もののミステリー小説が多く、私はこれを読むのがこの上なく好きです。

外国のミステリー小説は、読む人と読まない人にきっぱり分かれます。それは以下の3点の理由によるのではないでしょうか。

① 登場人物が多過ぎて、誰が誰だか分からなくなる

② 外国の文化や習慣が微妙に理解しづらい
③ 時間を置い

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「ただ、そこに、居るだけ」に意味はあるのか?-自立か依存か、居場所とは何か-

「ただ、そこに、居るだけ」に意味はあるのか?-自立か依存か、居場所とは何か-

『居るのはつらいよ』(医学書院)を読み終えました。本当に素晴らしい本で共有したいことが山ほどあるのですが、できるだけポイントをしぼって書きます。

本書は副題にもある通り、「ケア」と「セラピー」の違いを徹底的に「現場感覚」で書き切った、いや、描き切った作品です。

冒頭から何度も出てくる「それでいいのか?」という声。それはセラピーを志す著者が「ただ、いる、だけ」のケアという仕事に対して、「

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