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スチームパンクとサイバーパンクが融合したSF小説に酔いしれる


サイバーパンクと呼ばれるジャンルの映画が好きだ。

例えば、リドリー・スコット監督の『ブレードランナー』、大友克彦監督の『アキラ』、押尾守監督の『ゴースト・イン・ザ・シェル』、そしてウォシャウスキー監督の『マトリックス』シリーズ。

サイバーパンクとは、近未来の世界を舞台にしたサブカルチャーの一つで、高度なテクノロジーや人工知能、サイバーネティックスが進化した社会を描いたフィクション作品や文化運動のことを指す。

サイバーパンクの世界では、テクノロジーが高度に進化した世界で人間が機械化されたり、仮想空間での行動が現実世界以上に重視されたりする。そういう世界観に、なぜか無性にワクワクするのだ。(一種の現実逃避だろうか?)


私は大きな書店に行くと、必ずといっていいくらいサイバーパンクの本が置かれているであろう書棚をあさる。(まあ、たいていはハヤカワ文庫の棚なのだが)

そして、まだ読んでいない本を見つけた。

『ディファレンス・エンジン』(ハヤカワ文庫)だ。この本は「サイバーパンクの生みの親である」とも言われているウィリアム・ギブスンと、ブルース・スターリングの共同執筆によるものであり、スチームパンクの要素を取り入れたサイバーパンク小説である。


本書は19世紀末のロンドンを舞台に、現実世界とバーチャル世界を繋ぐ巨大な機械「ディファレンス・エンジン」をめぐる陰謀と冒険を描いた作品である。

まず本書の最大の魅力は、その世界観にある。スチームパンクの特徴である蒸気技術や機械装置、ヴィクトリア朝時代のファッションや建築物や食文化などが、リアリティあふれる描写で描かれており、読者を自然とその世界に没入させてくれるのだ。

また、バーチャル世界におけるアイデンティティやプライバシー、情報の自由化など、現代社会にも通じる問題が描かれており、興味深く読み進めることができる。

さらに、物語の展開も秀逸だ。読み進めていくにつれ、主人公たちが追いかける情報や陰謀の糸口が次第に明らかになっていく後半は(前の内容をきちんと覚えていればであるが)かなり引き込まれる。

その過程で登場する多くのキャラクターたちも個性的で魅力があり、共著の小説でよくここままでの作品に仕上げることができたなと、正直驚いてしまうほどだ。登場人物たちのアクションやサイバーパンク的な要素が盛り込まれたシーンも多く、スリル満点のストーリー展開はまるで映画を観ているようにも思える。


本書の唯一の欠点は、多くのキャラクターや出てくる情報がマニアックすぎるため、途中で混乱してしまい読むのを止めてしまう読者もいるであろうことだ。

なので、あまり時間を空けずに上下巻を一気に読んでしまうことをお勧めする。



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