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#僕

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kimi koi
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#耽美

花と針

花と針

アオハルの破片は心の粘膜
透過して音もなく刺さるんだ
刺激と暴力を履き違えて
僕を一人にしないでよ

カラフルな喜びが花開く季節は
僕の心象モノクローム際立つ季節
拒絶と喪失が隣り合わせの空間で
青ざめた桜が開花する

誰か前線を止めて
描けない未来 進めない足
誰か冷戦を止めて
透明なピラミッドから転げ落ちる

窓から見える春霞の並木
校内お

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紫苑の水雫

紫苑の水雫

この光は 僕の目を痛めない
南中したフルムーンは 背徳と融和
扉を開いて 夜気が忍び込んだら
肺まで染め上がっていく 藍へ

恋をした君は 醜くなったね
空回る心 絡め取ってしまいたいの
蜘蛛が糸を吐くように うわごとは水煙管
ああ 雨垂れる本音が寂しい

一等星が かき消される空
瞳孔を焼かれた午後と 天秤にかけて
角砂糖で保つ 均衡

赤い瞳の君が 消えたいと喘ぐ
甘いなら痛みも 白い海に沈め

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トランジット・ノスタルジー

流れ落ちない砂時計に 君の目は反射して
泣いているように見えた のは 僕だったか
おざなりな明日は 溶けないビー玉が透けるだけ
アスファルトから スワロウテイルが抜け出す

新しい幸せを見つけて 戸惑っていた
バレエシューズの履き心地は 他人事のよう
孤独 飼い馴らした先で 手の平は空
少し昔の自分に戻っただけ

三つ隣のクラスメイトが好きだと言った
あの日の僕が馬鹿にした 古い映画
時間は

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猫目石/memories

コーヒーのミルクが ト音記号を描いて沈んだ
5月のスローモーション
君の中の桜色は 今どんな色してるの
そんな話をしよう

インクの中に 言葉 落として 落として
赤と青の巻き糸で 拾い上げる
或いは オリエンタルブルーに黄昏をステアして
あの日へと繋がるルームキー 探しに行こうか

思い出して
ここは 夜汽車が巻き上げた星屑のコクーン
君の好きな音楽を聴きながら
冷えたスプーンを口に運んだ

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青い部屋のカーネーション

潤む画面に海月 巡って踊るアンニュイ
透過して 肺は白 喉は赤 吐き出して錆色
僕の自由が一つ一つ奪われては
水底に集う花々に 吸い取られていった

回転させた 何度も吸い込んで
ヴァイオレット色のカスタネットは空振り
いつか見た景色が 狂った幸せに思えたから
ルイボスバニラの香りで 強引に誘ってほしい

液と液 混ざり合って溶けて 綺麗にして 僕を
指先のパルス 微かな誤差 深い眼差しの

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スワロフスキーと黒鳥の夢

オフホワイト色の夢 剥がれた
嗚咽して 吐き出した ただれた まどろみ
君のところまで 連れて行く天使の羽根は
夜の工場地帯 煤で汚れた純真

大切なものは 廃工場で 埋め立て地
水面は鏡 映し出して 向き合った 過去
ジェットブラックの世界 君の瞳は濡れていた
人間じゃないものが好きなのと言って
幽霊のようにふわり 旋回する影に 手を伸ばして

夢の国の土台には 幾千の凡庸が眠っていて

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アダージョ、間延び

君と氷の上で踊り続けて 黒い薔薇が揺れて
舞台 砕けてしまったなら 二人で
パープルブルーの水底へ 沈んでいく 冬
いつかこのガラスも 廃工場で終わりを待つ

石榴の瞳に 僕のせいで 涙浮かんだら 嬉しい
白昼夢の庭 羽化したばかりの
翅をむしり取って 笑う あの夏の夜
奪って 奪って 僕のものになっていく
それが 気持ち良かった

ポラロイドは公園の砂場で
蟻に噛ませて 朽ちていった

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紅、点して

君がマスクの下に隠したものは何
赤く 白い肌が燃えて
君の孤独が露わになって 薄曇りの昼間

視線は罪人のような気分
君の心の傷跡 間違いだとしても 触れさせて

君に自分の横顔は見えないから
僕が代わりに胸の前で 十字を切ってもいいの

祈って 僕の気が変わる前に 僕の気が狂うまで
深いサルビアの赤が溶けたような日
窓ガラスに頭預けて 見えやしない天国 拝んだ
君の身体と血 パンと葡萄酒

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インディゴの繭

心の電球消したら 一人
黒に近づいた藍に抱かれて 温かくて
僕のことを歌った唄や 昨日の君の言葉に
引っ張られて まだ 眠れないまま

太陽に怯えて 光を疑った
明るいものは僕を不意に傷付けるから
フクロウが首をかしげる 月が主役の舞踏会へ
ここなら きっと 守られる

空想 何処だって 思い馳せれば 都
白い肌 赤い目 痩せた頰に涙の跡
ラベンダー色のパウダーでかける魔法

僕の生んだ悪夢

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10月の輪舞

君はいつまでも僕だけの王女様で
トランプを敷き詰めた小部屋で
クッションの綻びに爪を立てる
舞い上がる幻想に 薄桃の白昼夢を見ていた

君が生まれた季節をセピア色に染めて
現実は噴水の向こうへ置き去り
日付けが変わって 君は灰の中から生まれ変わる
ハッピーバースデー 私の愛しい人

僕が嫌った太陽が 優しく微笑んで
青銅の鎧が溶ける
分かっていた これは現実なのに
何故だろう 今日は 泣いてしまい

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バニラの天蓋

君のシャンプーの匂いが
金木犀の香りを打ち消して
はらはら この夜に 堕ちてゆく
橙の花 暮れたら 淡い白 纏って 融解

天の神様の言う通り 指差して選んだのは
君の声
首に 目蓋に 指先に
季節外れの雪に散った 椿と見紛う
子猫が路地裏で戯れるみたいに
ふざけて 二人で幸せになれるから
朧月の瞳は そっと閉じていて いいの

一人じゃできないやり方で 幸せになれるなら
一人じゃな

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漏斗

君といると不安になるんだ
白いティーカップに滲み出す言葉
澱んで、積もって、溶けない角砂糖は汗
声に出したら ほら 崩れてゆく

好き 嫌い 好き と 唱えて
花びらを散らした 淡い恋なの
シロツメクサの冠を編んであげる
始まりは ただそれだけの 幼気な寓話

使い古されたシナリオに
溺れる役者は盲目な熱病
月が綺麗ですね と 語り掛ける
何処で覚えたのだろう 上滑りの言葉を

秘め事、履き違えて

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