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note始めてみました。 読書の感想が多めです📚🍷

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記事一覧

pray human/崔実

「声を上げられなくても自分を責めないで。守りに入ることは決して悪くないし、誰もが大声で叫ぶ必要はない」という著者の言葉に勇気をもらう人は多いのではないかと思う🕯…

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3年前
2

舌を抜かれる女たち/メアリー・ビアード 宮崎真紀 訳

声を上げる女性が増えた今、私は声をあげない女性をおもう🥀 受けた傷について、伝える人と、沈黙する人 その沈黙はどこからやってくる沈黙でしょうか🥀 暴力的なものの…

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3年前
2

個人的な体験/大江健三郎

サルトルに影響された著者が、"意志ある選択"を主題に小説を書こうとしたところに、自分の体験を重ねて生まれた物語なのだそうだ。 著者が自ら青春小説と呼ぶように、主人…

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3年前
8

貝に続く場所にて/石沢麻依

きっと痛みや苦しみを乗り越えるのには、完璧な計画よりも大きな物語が必要なのに、自分で感じた痛みや苦しみが、遠い物語的な記憶に変容していってしまうことはなかなか受…

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3年前
4

日本の文脈/内田樹・中沢新一

日本が他の先進国に比べて遅れてるだとか、ガラパゴス化だとか騒がれているが、別にそれでもいいじゃないか。むしろ、自らを守るためにこの国は無意識の部分で辺境性を保っ…

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3年前
2

声の娼婦/稲葉真弓

耳からはじまり 声、視線、心、身体と、 物語が葉脈のように体中駆け巡っていった。 稲葉真弓さんが立ち上げる世界をこんなにも信用できるのは、彼女の文章から孤独に対す…

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3年前
9

お姫様とジェンダー/若桑みどり

昔のこと。 ある時、女性に言われた。 「女の子はいいの、働かなくて。結婚しちゃえばいいのよ。」 またある時は、働いている女性に言われた。 「女はね、結婚して子育て。…

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3年前
7

はじめてのスピノザ 自由へのエチカ/國分功一郎

自由って、一言で言うのは簡単だ。でも自由は本当に扱いづらくて、難しくて厄介。そして皆自由がなんなのか、いつもわからないままだ。 スピノザは17世紀のオランダの哲学…

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3年前
18

🦆『正欲』🦆朝井リョウ

人はなんでも、何かに名付けたがるなと思います。曖昧なものをなかなかよしとできず、名付けることで安心したいのかもしれません。病名や現象、ムーブメント…何から何まで…

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3年前
7

🌿『ガーデン・ガーデン』🌿稲葉真弓

最高の時間を過ごさせていただいた、出会えて幸せすぎる本🤤視線の物語。 夫婦交換専門雑誌で、妻や夫たちの投稿写真の性器を消す仕事をしている"私"が、1枚の投稿写真の女…

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3年前
1

隣の感傷

どうして人はセンチメンタルなものに惹かれるんだろう?私は感傷って、生きてくのに邪魔な感情な気がする。けれども感傷に後ろ髪引かれながら生きている。隣の芝生は青いみ…

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3年前
1

目線をはずして

長編2作目執筆中、尋常じゃない落ち方をした。 初脚本でまだ撮ってない作品を書いた時も信じられないくらい落ちたけど、今もそれに負けないくらい相当落ちた。 ハッピーな…

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4年前
1

白鳥座

言った方は必ず忘れてる 言われた方は、すごく覚えてる 受けた傷を武器に戦える人もいる けどそんな人でもその戦いで更なる傷を受け 上書きされた傷に飲み込まれるかもし…

mimi
4年前
2

2018.3.21の雪の音

忘れもしない2018.3.21 大雪の中、私は引っ越しました。 とある事情で長く暮らした家を離れ、集合住宅の角部屋の一室に入りました。小さく激しく降る雪たちが頬に刺さって…

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4年前
5
pray human/崔実

pray human/崔実

「声を上げられなくても自分を責めないで。守りに入ることは決して悪くないし、誰もが大声で叫ぶ必要はない」という著者の言葉に勇気をもらう人は多いのではないかと思う🕯
以前、メアリー・ビアード著「舌を抜かれた女たち」の読後記録で私は、世界的な#Me Tooの動きから外れている人たちをおもってしまうと書いた💠
「pray human」の著者である崔実は、Me Tooの動きに勇気をもらう一方で、過去の

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舌を抜かれる女たち/メアリー・ビアード 宮崎真紀 訳

舌を抜かれる女たち/メアリー・ビアード 宮崎真紀 訳

声を上げる女性が増えた今、私は声をあげない女性をおもう🥀

受けた傷について、伝える人と、沈黙する人

その沈黙はどこからやってくる沈黙でしょうか🥀

暴力的なものの連鎖の日常に、傷を傷だと思わなくなってしまったのかもしれない、
傷の扱いに悩んで葛藤しているのかもしれない、
自らの傷を認めるのが怖いかもしれない、
本当は声をあげたいのに、話せないように、無理やり舌を抜かれたかもしれない、
自分

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個人的な体験/大江健三郎

個人的な体験/大江健三郎

サルトルに影響された著者が、"意志ある選択"を主題に小説を書こうとしたところに、自分の体験を重ねて生まれた物語なのだそうだ。
著者が自ら青春小説と呼ぶように、主人公の鳥(バード)の視点であっという間の日々を、激しく旋回しながらくぐり抜けた感覚を持った🦜欺瞞が膨れて大きくなるほどありもしない想像は広がり、鳥(バード)の心は侵蝕される。
いつかアフリカを旅することを夢見るまだ若い彼は、脳ヘルニアを患

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貝に続く場所にて/石沢麻依

貝に続く場所にて/石沢麻依

きっと痛みや苦しみを乗り越えるのには、完璧な計画よりも大きな物語が必要なのに、自分で感じた痛みや苦しみが、遠い物語的な記憶に変容していってしまうことはなかなか受け入れられない🍃
そして変容と同時に、忘却が始まってしまう。

ドイツのゲッティンゲンの森を舞台に、行方不明の友人と再会した主人公を始めとする人物たちが、過去と罪悪感を引き摺りながらも寄り添い合う🍃

傷を負った場所とそうでない場所、そ

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日本の文脈/内田樹・中沢新一

日本の文脈/内田樹・中沢新一

日本が他の先進国に比べて遅れてるだとか、ガラパゴス化だとか騒がれているが、別にそれでもいいじゃないか。むしろ、自らを守るためにこの国は無意識の部分で辺境性を保っている気さえしてくる。
この本はそんな日本の辺境性を肯定しつつ、構造主義、ブリコラージュ、贈与、レヴィナスとユダヤ、ユダヤ的知性、原発と一神教…等あげればキリが無いほど様々なトピックについて語られている💐

私が興味をそそられたのは、日本

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声の娼婦/稲葉真弓

声の娼婦/稲葉真弓

耳からはじまり
声、視線、心、身体と、
物語が葉脈のように体中駆け巡っていった。

稲葉真弓さんが立ち上げる世界をこんなにも信用できるのは、彼女の文章から孤独に対する絶対的な信頼感が伝わってくるから。
登場人物たちと私たち読者の根底にある孤独は共通している。
そして孤独に対する防衛を続ける。
稲葉さんはそれを、否定しない。
私は、そのことに紛れもなく勇気をもらっている。

お姫様とジェンダー/若桑みどり

お姫様とジェンダー/若桑みどり

昔のこと。
ある時、女性に言われた。
「女の子はいいの、働かなくて。結婚しちゃえばいいのよ。」
またある時は、働いている女性に言われた。
「女はね、結婚して子育て。あとはね、パートしてればいいの。勉強なんかしなくていいのよ」

思えば、小さい頃からそういう類のことをよく言われていた。なんとなく聞き流していた。
今思えば、なんというセリフなんだろう。
女が自分の人生を蔑ろにするようなことを言ってしま

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はじめてのスピノザ 自由へのエチカ/國分功一郎

はじめてのスピノザ 自由へのエチカ/國分功一郎

自由って、一言で言うのは簡単だ。でも自由は本当に扱いづらくて、難しくて厄介。そして皆自由がなんなのか、いつもわからないままだ。

スピノザは17世紀のオランダの哲学者だ🇳🇱
彼の哲学は、"コナトゥス"という、自分の存在を維持しようとする"力"がその人の本質であると述べる。(簡単に言えば、体の水分量が減れば私たちは喉が渇いて水を飲むように、常に我々の中で働いている力なのだ)この彼の考えは哲学史の

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🦆『正欲』🦆朝井リョウ

🦆『正欲』🦆朝井リョウ

人はなんでも、何かに名付けたがるなと思います。曖昧なものをなかなかよしとできず、名付けることで安心したいのかもしれません。病名や現象、ムーブメント…何から何まで私たちは既に名付けられている名前で呼びたがり、括りたがる。LGBTだってそうだ。名前をつけてその名前で呼ぶことで、そのものについて考えなくなる気がするし、なんだか本質が見えにくくなりそうだ。
でもこれは単に気まぐれに本質主義を齧ったが故の不

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🌿『ガーデン・ガーデン』🌿稲葉真弓

🌿『ガーデン・ガーデン』🌿稲葉真弓

最高の時間を過ごさせていただいた、出会えて幸せすぎる本🤤視線の物語。
夫婦交換専門雑誌で、妻や夫たちの投稿写真の性器を消す仕事をしている"私"が、1枚の投稿写真の女に惹かれながら"消す女"として過ごした日々。彼女は、普通ならば黒塗りで消す部分を様々な種類の花のシールで消していく🌹
彼女と、その女の距離感が好きだ。
決して明るくはないけれど、ずっとこの世界を見ていたいと思ってしまう。
粗野でヒリ

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隣の感傷

隣の感傷

どうして人はセンチメンタルなものに惹かれるんだろう?私は感傷って、生きてくのに邪魔な感情な気がする。けれども感傷に後ろ髪引かれながら生きている。隣の芝生は青いみたいに、たぶん誰かの傷は美しく見えるのかな、そしてたぶん人は、傷そのものと、傷から生まれるストーリーを履き違えてしまう。それは読書体験やテレビや映画の影響、原因は人様々だと思うけど、太陽の下や真っ青な海の近くでは生まれにくいもののような気が

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目線をはずして

長編2作目執筆中、尋常じゃない落ち方をした。
初脚本でまだ撮ってない作品を書いた時も信じられないくらい落ちたけど、今もそれに負けないくらい相当落ちた。
ハッピーな創作がしたいはずなのに、どうしてこんなことになるんだろう。
自分と向き合うなんて怖いことはやめた方がいいなと感じた。
自分が何者なのかなど、知らなくていい。
自分の中には何にもないなと感じた。

軽やかに毎日を飛び越えたい…

深く深く傷

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白鳥座

言った方は必ず忘れてる
言われた方は、すごく覚えてる

受けた傷を武器に戦える人もいる
けどそんな人でもその戦いで更なる傷を受け
上書きされた傷に飲み込まれるかもしれない

受けた傷を武器に戦う術を持たない人は
その傷を忘れるために、生きていく
生きる理由がそれであるかのようになる
知らず知らずのうちに自分の中で傷は肥えていく
肥大化した傷と向き合おうというときには
自分よりも傷の方が大きいことも

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2018.3.21の雪の音

忘れもしない2018.3.21
大雪の中、私は引っ越しました。
とある事情で長く暮らした家を離れ、集合住宅の角部屋の一室に入りました。小さく激しく降る雪たちが頬に刺さって痛くて、はっきりと、人生の第二章目に入ったんだと実感した日でした。家に置いてきた家具の中に備え付けられていた小さな鏡に写ったその朝の自分のなんでもない顔をまだ覚えている。

その頃、私は確かボロディンの四重奏曲が入ったアルバムをよ

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