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花と私

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花にまつわるエッセイについて💐
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#秋

天界に咲く花の託け

天界に咲く花の託け

「悲しい思い出」「あきらめ」「独立」「情熱」
これは彼岸花の花言葉である。
墓地の近くに群れて咲く赤い姿が印象的で、ひんやりした秋の訪れを感じさせる。
その凛とした姿は心の奥をざわつかせる妙な妖艶さがあり、怖いイメージがつきものだ。
しかし、よく見るとすらりとした一本の茎に真っ赤な細い花びらがきらきらと揺れて光る素敵な花でもある。
コンクリートとアスファルトに固められた都会じゃ見ることができないレ

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街には恋が愛に変わりそうな秋の香りが漂っていた。

街には恋が愛に変わりそうな秋の香りが漂っていた。

2021年9月11日 土曜日
研修だというのにしっかり寝坊してしまった。
まぁガンダしたおかげで電車に間に合ったからよしとしよう。
食卓にあった風呂敷まんじゅうと昨日私が夕飯で残したゆで卵だけでよくもあんなに走れたもんだ。
朝から走れる体力があることに感謝。
あと発達した交通網に感謝だな。
走っていたら今日はなんだか金木犀の香りがした。
金木犀の木を探している暇なんてもちろん無かったけど、帰り道に

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国道沿いの秋桜

国道沿いの秋桜

「誠実」

これは秋桜(コスモス)の花言葉である。
秋晴れの青空の下で心地よさそうに風に揺られている薄いピンクや濃いピンク、白やオレンジといった秋桜を見ると″秋が来たなぁ、今日はいい日だなぁ″と思うことが多いのではないだろうか。それは春の桜に心をときめかせるように、秋の桜であるこの花に、晴れやかな嬉しさや一抹の寂しさといった儚さを感じるからだと私は思う。

秋桜の古い思い出はまだ私が3歳の頃までに

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星の花の便り

星の花の便り

『気高い人』

これは金木犀の花言葉である。金木犀が咲くとあたり一面に甘く惚れるような香りと可愛らしい星の花が絨毯のように敷きつめられ、街はより一層華やかな秋の模様替えをする。街の中でこれだけよい香りのする花は少ないため秋の訪れを教えてくれるとても貴重な存在である。
残念なのは秋の長雨にさらされると小さな無数の星のかけらはあっという間に散って急に香りを落としてしまうことだ。それでも人は一瞬の高揚感

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楽園の花実

楽園の花実

「豊富・裕福・飽和・平安・子宝に恵まれる・多産・実りある恋」

これは全て無花果(いちじく)の花言葉である。1つの木に多くの実をつけることに由来して付けられた花言葉。しかし、″無花果″と書くこの果物は漢字の通り花を咲かさず、私たちが目にすることもない。花を咲かさずに果実をどうやってつけるのか分からなかった私は無花果のプチプチとしていて時折り口の中でどろっと溶ける食感を少し気味悪く不思議に感じていた

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桃のプライド

桃のプライド

「天下無敵」

これは桃の花言葉である。まんまるで艶かしい形と甘く豊潤な果汁をたっぷりと含んだ桃から想像もしていなかった花言葉に私は一瞬にして心が撃ち抜かれてしまった。あれほど小さく控えめな桃が古くから″不老長寿の実″、″魔除の効果がある実″と謂われていると聞いて、私はなんだかとてつもない力を感じてしまい青果コーナーにまっしぐらで桃をお迎えに行った。帰り道は手元の袋の中からあふれんばかりに漂よう甘

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揺れる花壇の線香花火

揺れる花壇の線香花火

「燃える思い」

これはサルビアの花言葉である。
丈が低く、花は二重構造になっていて暑さに強いサルビアは夏の花壇を彩るのにぴったりな花である。サルビアはセージとも呼ばれ多数の種類があり薬用や鑑賞用として用いられる。そのためのせいか学名は「健康でいるsalveo」に由来するとされている。

学校の花壇や家の庭で夏を彩る花として当然のように植わっていたのがサルビアだった気がする。小学生の頃は元より背が

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