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エッセイ:大ちゃんは○○である

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大学時代~役者を経て介護業界に飛び込み、現在までを綴るエッセイ。
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2020年11月の記事一覧

エッセイ:大ちゃんは○○である35

エッセイ:大ちゃんは○○である35

旅立ちの日は見事なまでの快晴だった。
何かイベントごとがある時は、必ずといっていいほど雨の祝福を受けていた僕だったが、
そんな雨男の僕が『嘘でしょ!?』とびっくりしてしまうぐらいの快晴。
これはなかなか幸先がいいじゃないかと、空に目をやり微笑んだのも当然だった。
東京行きの新幹線では、窓側の席に陣取った。
その時MDウォークマンで繰り返し聴いていた曲は今でも忘れもしない。
GLAYの『BEAUTI

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エッセイ:大ちゃんは○○である34

エッセイ:大ちゃんは○○である34

実家から京都の下宿先に戻ると、郵送物が届いていた。
それはオーディションを受けたプロダクションからだったもんだから
「えっ。まじで!?」と
封を切る前なのにガッツポーズが出た。
部屋に入る前だったのに、周りに人がいるかどうかも確かめず
興奮して、鼻水が左右にこんにちはしながら大きな声を出してしまった。
「やっっったっ!!」
担当者は合格した方のみに連絡をすると言っていたので、
この封筒が届いたとい

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エッセイ:大ちゃんは○○である33

エッセイ:大ちゃんは○○である33

父親は腕組みをしたままじっと俯き、下を向いて何かを考えているようだった。
心配が勝っていたんだと思う。それは絶対にそうだと思う。
『自分の人生なんだから、自由にさせてもらうよ。』
そう思う気持ちも、もちろん本音としてあった。
本音としてはあったが、育ててくれた二人の気持ちを全く無視して突き進むのもなんだか違う気がした。
挑戦を認めてほしい。応援してほしい。
そんな気持ちで自分の気持ちを話したんだと

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エッセイ:大ちゃんは○○である32

エッセイ:大ちゃんは○○である32

実家に戻った僕はリビングで両親の前に座った。
ダイニングテーブルで腕組みする父親と腕組みしてない母親。
重苦しい空気が流れる中、僕は切り出した。
「この度は本当に申し訳ありません。大学まで入れてもらって、
このタイミングで勝手に退学したことは本当に申し訳なく思ってます。」
なぜだか畏まった敬語になっていた。
両親の気持ちを思うと、僕のとった行動は心配と不安しかなかったと思う。
「それで、どうするつ

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