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エッセイ:大ちゃんは○○である32

実家に戻った僕はリビングで両親の前に座った。
ダイニングテーブルで腕組みする父親と腕組みしてない母親。
重苦しい空気が流れる中、僕は切り出した。
「この度は本当に申し訳ありません。大学まで入れてもらって、
このタイミングで勝手に退学したことは本当に申し訳なく思ってます。」
なぜだか畏まった敬語になっていた。
両親の気持ちを思うと、僕のとった行動は心配と不安しかなかったと思う。
「それで、どうするつもりなんだ?住む所は?」
父親は僕に尋ねた。父親の低温ボイスってやつは更なる緊張感を作り出す魔力を持っている。
「住む所は決めてきました。大学の退学届けも受理されて来月頭に引っ越しをする予定です。
大学に通いながら自主制作で映画作りをする中で
役者を仕事にしたいという気持ちが固まりました。やりたいことが決まった以上、大学に通い続けるのは自分の中で意味が見つけられなかったので
退学を決めました。すみません。」
「本当にやれると思ってるのか?そんな甘い世界じゃないぞ?
何の援助もしてやれないし、食べていけるようになるまで何年かかるか分からないんだぞ。
役者になりたい奴なんてごまんといる中で、成功する奴はほんの一握りだ。
それでも本当にやるのか?」
「やります。もう決めたことなんで。反対されるだろうなっていうのは分かってたけど、応援してくれたら嬉しいです。」
僕はまっすぐ父親の目を見て自分の気持ちを伝えた。

つづく

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