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エッセイ:大ちゃんは○○である34

実家から京都の下宿先に戻ると、郵送物が届いていた。
それはオーディションを受けたプロダクションからだったもんだから
「えっ。まじで!?」と
封を切る前なのにガッツポーズが出た。
部屋に入る前だったのに、周りに人がいるかどうかも確かめず
興奮して、鼻水が左右にこんにちはしながら大きな声を出してしまった。
「やっっったっ!!」
担当者は合格した方のみに連絡をすると言っていたので、
この封筒が届いたということはオーディションに合格したということだ。
急いで部屋まで駆け上がり、ハサミを使うのもじれったく、封を雑に切って中の書類を取り出した。
間違いなく合格の通知書で、プロダクションの概要や半年間のレッスン内容、
次回の日程等が細かく記載されていた。
『東京の地で足を踏み出す所ができた』
そんな安堵の気持ちと、興奮を抑えきれない気持ちとが交錯し
上京の日を今か今かと待ちわびる日々。
やはり人間、楽しみなことを待つというのは長く感じるものだ。
デートの待ち合わせで相手の到着を待つ時間然り、
夏休みを今か今かと待っていたあの頃然り、
お腹が空きすぎて、目の前に大好きな牛丼屋があるのに
手前の信号で赤信号に引っかかってしまい、「青になれ~青になれ~」と足踏みしている時然り。
とにもかくにもその日が来るまでに諸々の最終準備を行い、お世話になった方々、友人等に別れを告げ、
いよいよ役者道を突き進むべく京都を離れる日がやってきた。

つづく

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