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ま、こんな日もあるって

30
良いことも悪かったことも、嬉しいことも悲しいことも、皆時が経てば過ぎてゆく。だから一瞬一瞬がかけがえのないものなのだと思う。日々のエッセイ、たわいもないことの記録。
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#生活

待ち人をぶち猫と待つ

待ち人をぶち猫と待つ

「ねえ、どこから来たの」
「おうちはどこなの」

地元の駅に降り立って耳からイヤホンを外すと、ソバージュのおばさんが、猫撫で声で猫に話しかけていた。

直前に本降りの雨がザアザア降っていて、それが束の間上がったばかりだった。

足元には水たまりができていて、真っ暗な空が薄気味悪くうつっている。おばさんはまるで、邪悪な世界の底から出てきた魔女のようだった。

その白黒のぶち猫は、赤いポストの下でまる

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黄金色の栗あんを、空に捧ぐ

秋のお彼岸。

お団子屋さんの袋を片手に、京都にいる祖父に会いに行った。

中には前日に買った、焼き栗餅が入っている。

前日。

季節限定のものはありますか。
おすすめはどれですか。
日持ちはいつまでですか。

珍しく明るいうちに帰れた仕事帰り、駅中の美味しいお団子屋さんで、店員のお姉さんを質問攻めにして選んだのが、焼き栗餅と月見団子だった。

若い店員のお姉さんは、焼き栗餅と月見団子を、ていね

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大人になるということ

大人になるということ

先月誕生日を迎え、またひとつ歳を重ねた。

だからといって別に何も変わらず、今年もケーキを黙々と食べたぐらいである。

それにしても毎年思うのだが、いつまで経っても、何をやっても、大人というものになった気がしないのはなぜだろうか。

30半ばを過ぎても、いつまでも子どものような気持ちがぬけない。多分年齢と、この子どものような気持ちの差が、焦りを生んでいるのだと思う。

わたしは大人になりたい。

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髪を切っても何も変わらない【ちいさな日常】

髪を切っても何も変わらない【ちいさな日常】

髪を切った。

「失恋したら髪を切る」なんて言うけれど、失恋しなくても髪は切る。そして、何か変わるんじゃないかと期待するけれど、変わらないことのほうが多いことも、知っている。

ストレート、カラー、カット、トリートメント。

美容院代はいつも高い。果たして自分という人間にそこまでお金をかける価値があるのか、といつも思いながら、お金をかけている。

こうやって書くと、髪を切ることは宝くじを買うことと

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未婚、子なし、梅干しの味

未婚、子なし、梅干しの味

本来なら今は、まだじめじめした梅雨時期だ。

けれど、今年は梅雨入りの「つ」を言ったとたん、終わってしまった。
異例の梅雨明け。
どの新聞にも、そんな見出しが並んだ。

どうやら異例なのは、梅雨だけではないらしい。

毎年張り切って梅干し作りにはげむ祖母が、今年は 3kgしか作らないという。

3kgでもすごいが、作る量を減らすというのは衝撃だった。

なんといっても、梅干し作りは祖母が毎年大切に

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一票のゆくえ

一票のゆくえ

7月10日。

「やっぱり行っとけばよかった」と期日前投票に行かなかったことを後悔しながら、選挙に行く準備をだらだらしていた。面倒くさい、非常に面倒くさい。

外は「太陽で目玉焼き焼けるやろう、なんやったらベーコンも一緒にカリカリに焼けるんとちゃうやろうか」というぐらいのカンカン照り。アスファルトがよく熱されているのが、外に出なくてもわかる。

これではわたしもカリカリに焼けてしまう。こんな中、自

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ああ、大仏さま(中)〜大仏殿へ〜

ああ、大仏さま(中)〜大仏殿へ〜

そのまままっすぐ進んで、途中でチケットを買う。せっかくなので、東大寺ミュージアムと拝観がセットになったチケットを買った。
ミュージアムには帰りに寄ることにした。

さあ大仏殿へ。

人がどんどん吸い込まれていく。「入口付近で止まらないでください」と言われたが、渋滞していてなかなか前へ進めない。皆、スマートフォンや一眼レフカメラを胸のところまであげている。

やっと中に入れた。見上げる。

ああ、大

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人を傷つけているとき、同時に自分も傷つけている

人を傷つけているとき、同時に自分も傷つけている

先日、仕事で大きなクレームを受けた。

クレームには色々なものがあるけれど、今回のはネチネチ型だった。

「対応が悪い」から始まり、あれが悪いこれが悪いと手当たり次第、目につく全てのものの、悪いところを並べ立て、最終的にあなたそのものが悪い=人格否定になる、というパターンだった。

前の会社でクレーム対応にある程度は慣れていたので、相手のペースに流されてはいけないことぐらいわかっていたけれど、やは

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2022年は、ニコちゃんマークを忘れずに

2022年は、ニコちゃんマークを忘れずに

今更感半端ないですが、あけましておめでとうございます。ハナムラタケ子です。なんか久しぶりなので、挨拶してみました。本年もどうぞよろしくお願いします。

note書くの、約1ヶ月ぶりぐらいですね。

その間、少し心と体のバランスを崩していました。(このあたりは次の記事にあげる予定です)

仕事でもプライベートでも、「ついていけてない」と思うことが多くて、でも周りはどんどん先に進んでいく。みんなすごい

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今いる場所で呼吸、できていますか

今いる場所で呼吸、できていますか

 朝起きてすぐ、窓をあける。
それから大きく3秒ぐらいですう―っと息を吸ったあと、10秒ぐらいかけてゆっくりゆっくり息をふう―っと全部出し切る。
数回これを繰り返すと、だんだん周りがスローモーションのように、ゆっくり動いているのを感じる。それは寝そべって雲をじいーっと眺めると、ゆっくりゆっくり動いているのがわかるのと、何か似ている。

自分のなかに空気を送りこむと、新しい1日が始まった、と思う。そ

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救ってくれたのは、冷蔵庫のプリンだった

救ってくれたのは、冷蔵庫のプリンだった

1ヶ月ほど前から、週に1回のペースでこちらから実家に帰ったり、逆に母に来てもらい、買い物やちょっとした家事などをお願いしている。

30代半ばにもなり、己の面倒さえも己で見れず、むしろ本来なら逆の立場なのに、年老いた母親に身の回りのお世話をしてもらっているこの状況。

情けなくもあるし、抵抗もある。

けれど、最近はほんの少しずつだけど、
「…ごめんね。お願いしてもいいですか」
と言えるようになっ

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姪ができた

姪ができた

昨年の春、弟夫婦に子どもが産まれた。

祖母は「ひいばあちゃん」になり、母は「おばあちゃん」になり、わたしは「おばちゃん」になった。

母のスマートフォンには、弟から定期的に子どもの動画や写真が送られてくるようになった。

それを横から「どれどれ」と見せてもらうのだけど、彼女はいつも泣いていた。

あっちこっちで泣いていた。

それを見ながら、「あぁまた泣いてるわ」「泣いてんなぁ」と母と言い合うの

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今を大切に生きている人を、誰も見放すはずがない

今を大切に生きている人を、誰も見放すはずがない

「なんか上手く生きてるよなあ」と思う人が、周りにはいないだろうか。

自分には1物も与えられていないのに、天はその人には5物ぐらい与えてるんじゃないかって思う人が。

絵に描いたように、幸せそうに人生を歩んでいる人が。

わたしの周りには、いる。

正直、「羨ましいなあ、いいなあ」と思うし、「それに比べて自分は…」と自分の状況に情けなくなるし、そういう人たちに対して、嫉妬もすごくする。

そういう

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もし、生き方のレシピがあったなら

もし、生き方のレシピがあったなら

最近、思い立ったようにお菓子づくりをしているのだが、これがなかなかうまくいかない。

この前焼いたクッキーは、なぜかぽたぽた焼きのような、かたいせんべいになった。

「混ぜるだけでできる」というバナナのパウンドケーキは全然ふくらまず、なんだか、もっちゃりした食べものになった。

そして最新はこれ。

なんともいえない微妙な笑いでごまかしているが、一応クッキーである。

見切り品のかぼちゃが半額で売

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