夜明かしのカルアミルク

日々のこと。カメラのこと。音楽のこと……。できるだけ優しい言葉と写真で綴ります。   …

夜明かしのカルアミルク

日々のこと。カメラのこと。音楽のこと……。できるだけ優しい言葉と写真で綴ります。              𝚌𝚊𝚖𝚎𝚛𝚊:𝙵𝚄𝙹𝙸𝙵𝙸𝙻𝙼 𝚇-𝙿𝚛𝚘𝟹 | 𝚘𝚕𝚢𝚖𝚙𝚞𝚜 𝚘𝚖-𝟷/𝙴𝙴𝟹

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「本屋の片隅、音楽家の展覧会~ハルカ ナカムラと、音楽のある風景」

 先日、代官山蔦屋書店で開催中の「本屋の片隅、音楽家の展覧会~ハルカ ナカムラと、音楽のある風景」を観てきました。 副業のバイト終わりで身体はボロボロの汗グシャ…

イチョウの下で

コツコツと音がする。 頭の上から、小さくこだまして。 ブロンド髪と三輪車。 海の向こうの言葉は緩やかな流れのよう。 その間を縫うように コツコツ、コツコツと。 ブワ…

身の丈に合った胃袋

 先日、妻とちょっと良い蕎麦屋さんへ行きました。  すごーく丁寧に打たれた蕎麦がオシャレな量だけザルに乗ってやって来て、私はそれを1、2本ずつ掴んでは「ズ、ズズ……

瞳に花を

2024.9.30  〇〇ちゃん、こんばんは。今日は9月最後の日。日付は変わってまもなく2時になろうとしています。  このノートを開くのは約2年ぶりみたいです。最後の日記の…

『想像しなさい』

 朝起きて、「あ、これはダメだ」と思いました。久しぶりに来た目の奥の痛みと、それに釣られるように頭痛、吐き気。会社に電話して布団に包まります。  昼に一度起きて…

Shenandoah

 彼は内気な性格のようでした。顔を合わせてもいつも伏し目がちにしていて、みんなで食事をしてもすぐに部屋へ帰ってしまいます。  ですが彼が外へ出たいと思っているこ…

『ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ』さっそく観てきました。暗い、辛い。作品に食い殺されそうになりながら、それでもルイーズの心に巣喰う怪物の、鋭い牙向こうに何があるのか、気になって仕方ない。あ、言っとくけど、素晴らしい展示だったわ。

目黒の桜、バングラデシュの海

 彼はバングラデシュの生まれだと言いました。お金を稼ぐため日本に来たのだと。歳は30代半ばだと言っていました。向こうに家族がいるのかもしれません。  坂を下りなが…

飛沫の彼方で会いましょう

息が出来ない 清らかに見えた水の流れは 一粒一粒が重さを持った鉛玉のようで 膝が震えて倒れそうになった 凄まじい飛沫の音の壁 その向こうから般若心経が聞こえてくる …

今度こそ私の一番好きな季節が来た!
肌寒い朝。久しぶりの羽織もの。5時なのに暗い空。仕事終わりの空。白に還り藍へ向かう茜色。思考停止でカゴへほうる舞茸と薩摩芋。イヤホンからはaspidistrafly。
もうすぐ私の一番好きな花も咲く。秋さん、お願いだからもう逃げないでおくれ。

大きなイチョウの木の下で仰向けになってみる。まだ夏日だけれど、そよそよと吹く風は涼しい。時々、銀杏がぽすんと落ちてくる音がする。もうすぐ秋🍂

今日のお菓子はハンガリーのボソルカーニ・シュティ🇭🇺
魔女のクッキーと言われているそう。未婚の女性が男性に魔法をかけるお菓子だとか。
お味はほぼ森永のアーモンドクッキー。
もちろん、美味しいです🍪

『いつかあなたが読む話』

 「こんにちは……」  ギシギシ鳴るドアを恐る恐る引くと、私は薄暗い店内へ足を踏み入れます。  その建物は蔦に半分覆われていて、ところどころヒビの入った漆喰の塗…

今日は中秋の名月ですが私は三日月をいただきます🌙
従姉妹から「世界のお菓子コレクション」というお菓子の詰め合わせをいただいたのですが、これが本当に可愛いし選ぶのめちゃ楽しい!
一つずつ大事にいただこうと思います。
今日のお菓子はデンマークのバターミルク・クレセント🇩🇰

滝行をして来ました。想像をはるかに超える水圧に、立って息をするのもやっとでした。たしか水は冷たかったと思います。覚えていません。とにかく生きる為に必死。足を踏ん張って、呼吸して、そして手を合わせる。そうしているうちに、自分の中に静かにピンと張る糸のようなものを感じていました。

やさしさの瞬発力

 エアコンが寒すぎるのが気になる。隣でコクリコクリとうたたねのリズムを刻む妻の頭に肩を寄せ、車内案内板を眺めますが降車駅はもう少し先。ガタンゴトン。  次の駅で…

「本屋の片隅、音楽家の展覧会~ハルカ ナカムラと、音楽のある風景」

「本屋の片隅、音楽家の展覧会~ハルカ ナカムラと、音楽のある風景」

 先日、代官山蔦屋書店で開催中の「本屋の片隅、音楽家の展覧会~ハルカ ナカムラと、音楽のある風景」を観てきました。

副業のバイト終わりで身体はボロボロの汗グシャグシャで疲労感MAXでしたが、展示を観たらむしろ癒されるのではないかと思い、たまたま現場が目黒で近くだったこともあって、その足で代官山まで向かいました。

 結論から言うと来て大正解でした。心の中までベホマズン。元気100倍!というよりは

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イチョウの下で

イチョウの下で

コツコツと音がする。
頭の上から、小さくこだまして。
ブロンド髪と三輪車。
海の向こうの言葉は緩やかな流れのよう。
その間を縫うように
コツコツ、コツコツと。

ブワッと大きく風が吹く。
見上げれば空に動脈。
遊びだすオレンジのピンポン玉。
枝と枝を飛び跳ねながら
ピンボールみたいに落ちてくる。
大きく大きくこだまして。
コツコツコツコツ。
コツコツ、ぼすん。

みんな私の頭を避けてゆく。
当たれ

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身の丈に合った胃袋

身の丈に合った胃袋

 先日、妻とちょっと良い蕎麦屋さんへ行きました。

 すごーく丁寧に打たれた蕎麦がオシャレな量だけザルに乗ってやって来て、私はそれを1、2本ずつ掴んでは「ズ、ズズ……」とやったり、グワっとまとめて蕎麦つゆに入れて「ズルズルズルッ!」とやったものの、その後しばらくは勿体無くて手をつけられずにいたりして、楽しんだのでした。

 天ぷらも驚くほど美味しくて、それでもやっぱり小綺麗に見える量とサイズ感。一

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瞳に花を

瞳に花を

2024.9.30

 〇〇ちゃん、こんばんは。今日は9月最後の日。日付は変わってまもなく2時になろうとしています。

 このノートを開くのは約2年ぶりみたいです。最後の日記の日付は『2022.11.26 6:11 a.m』。私が記したものです。

 〇〇ちゃんが最後にこの交換日記を書いたのは2021年の12月21日です。この日から3ヶ月私は返事を書いていません。だから〇〇ちゃんはきっと、しばらく

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『想像しなさい』

『想像しなさい』

 朝起きて、「あ、これはダメだ」と思いました。久しぶりに来た目の奥の痛みと、それに釣られるように頭痛、吐き気。会社に電話して布団に包まります。

 昼に一度起きて袋麺を作り、食べ終えると、再びそそくさと布団の中へ。浅い眠りの中で日が落ちていくのを認めています。

 布団の中で痛みと戦っていると、心に暗い波が押し寄せて来そうになって、恐ろしくなりましたが、何とか逃げおおせました。危ない危ない。

 

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Shenandoah

Shenandoah

 彼は内気な性格のようでした。顔を合わせてもいつも伏し目がちにしていて、みんなで食事をしてもすぐに部屋へ帰ってしまいます。

 ですが彼が外へ出たいと思っていることを私は知っていました。カーテンの閉じられた薄暗い部屋で、何をするでもなく、ただテレビを観て横になっていることを知っていました。

 「いいです、いいです」その言葉は遠慮がちな彼の口癖になっていて、そして、それは彼が"流暢に発することの出

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『ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ』さっそく観てきました。暗い、辛い。作品に食い殺されそうになりながら、それでもルイーズの心に巣喰う怪物の、鋭い牙向こうに何があるのか、気になって仕方ない。あ、言っとくけど、素晴らしい展示だったわ。

目黒の桜、バングラデシュの海

目黒の桜、バングラデシュの海

 彼はバングラデシュの生まれだと言いました。お金を稼ぐため日本に来たのだと。歳は30代半ばだと言っていました。向こうに家族がいるのかもしれません。

 坂を下りながら、「今日は大変だった」と労いの言葉をかけ合います。暑い日差しが照りつける中、まだ木材がむきだしの新築住宅の3階に登って、滝のような汗を流しながら、屋根材をえいや、えいやと引っ張り上げました。でっかいはんぺんみたいな形の持ちづらい木材。

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飛沫の彼方で会いましょう

飛沫の彼方で会いましょう

息が出来ない

清らかに見えた水の流れは
一粒一粒が重さを持った鉛玉のようで
膝が震えて倒れそうになった

凄まじい飛沫の音の壁
その向こうから般若心経が聞こえてくる

呼吸をするのが難しい
大きく息を吸おうとしても
水圧で胸が膨らまない

なるべくして呼吸は小さくなり
心臓の鼓動も落ち着いてくる

ただ手を合わせる
いつの間にかお経は止んでいた

 朝5時、アラームが響きます。すでに起きていた私

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今度こそ私の一番好きな季節が来た!
肌寒い朝。久しぶりの羽織もの。5時なのに暗い空。仕事終わりの空。白に還り藍へ向かう茜色。思考停止でカゴへほうる舞茸と薩摩芋。イヤホンからはaspidistrafly。
もうすぐ私の一番好きな花も咲く。秋さん、お願いだからもう逃げないでおくれ。

大きなイチョウの木の下で仰向けになってみる。まだ夏日だけれど、そよそよと吹く風は涼しい。時々、銀杏がぽすんと落ちてくる音がする。もうすぐ秋🍂

今日のお菓子はハンガリーのボソルカーニ・シュティ🇭🇺
魔女のクッキーと言われているそう。未婚の女性が男性に魔法をかけるお菓子だとか。
お味はほぼ森永のアーモンドクッキー。
もちろん、美味しいです🍪

『いつかあなたが読む話』

『いつかあなたが読む話』

 「こんにちは……」

 ギシギシ鳴るドアを恐る恐る引くと、私は薄暗い店内へ足を踏み入れます。

 その建物は蔦に半分覆われていて、ところどころヒビの入った漆喰の塗壁は青白く、どこか不健康そうに見えました。おとぎ話ならこういう所には魔女が住んでいるでしょう。

 営業しているのか不安でしたが、店先に「今日のランチ」が書かれた黒板が置かれていて、ドアには「OPEN」の札が吊ってありました。『ここまで

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今日は中秋の名月ですが私は三日月をいただきます🌙
従姉妹から「世界のお菓子コレクション」というお菓子の詰め合わせをいただいたのですが、これが本当に可愛いし選ぶのめちゃ楽しい!
一つずつ大事にいただこうと思います。
今日のお菓子はデンマークのバターミルク・クレセント🇩🇰

滝行をして来ました。想像をはるかに超える水圧に、立って息をするのもやっとでした。たしか水は冷たかったと思います。覚えていません。とにかく生きる為に必死。足を踏ん張って、呼吸して、そして手を合わせる。そうしているうちに、自分の中に静かにピンと張る糸のようなものを感じていました。

やさしさの瞬発力

やさしさの瞬発力

 エアコンが寒すぎるのが気になる。隣でコクリコクリとうたたねのリズムを刻む妻の頭に肩を寄せ、車内案内板を眺めますが降車駅はもう少し先。ガタンゴトン。

 次の駅でドアが開いてワサワサと人が乗り込んできます。妻の目の前には白髪のおばあちゃん。チラと見てすぐ下を向く私。声をかけなきゃ。そう思って勇気を振り絞るコンマ数秒の間に、隣から爽やかな「どうぞこちらへ!」。

 声は若い男性のものでした。おばあち

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