夜明かしのカルアミルク

生活のディテールに耳をすませば 𓐍 𓏸 𓈒             聞こえるあたたかい…

夜明かしのカルアミルク

生活のディテールに耳をすませば 𓐍 𓏸 𓈒             聞こえるあたたかい陽だまりの音色 𓐍 𓏸 𓈒         できるだけ優しい言葉と写真で𓐍 𓏸 𓈒            𝚌𝚊𝚖𝚎𝚛𝚊:𝙵𝚄𝙹𝙸𝙵𝙸𝙻𝙼 𝚇-𝙿𝚛𝚘𝟹 | 𝚘𝚕𝚢𝚖𝚙𝚞𝚜 𝚘𝚖-𝟷/𝙴𝙴𝟹

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月の光

 「スヌーズレンをやりたいと思います」  新しく赴任して来た作業療法士さんはそう言いました。スヌーズレン?なんだかおしゃれでおいしそうな響き。一体どんなものなんでしょう。  機能訓練室という部屋にはマットが敷かれていて、その上には知的障がいを持った人たちが寝転んでいます。作業療法士さんは部屋の電気を落とすと何かのスイッチを押しました。すると、天井に星空のような光が広がって、床に敷いてあった透明なチューブは天の川のようにブワッと光り始めました。  私も一緒にマットに寝転ん

    • 背中を見て

       夫婦そろって早起きをしたものの、窓の外から照りつける夏の日差しに怯んでしまい、ダラダラと冷房の下、気づけば11時過ぎ。  2人揃っての休みは久しぶりでこのまま家にいるのも勿体無いし、映画でも観に行こうという話になりました。  ささっと近くの映画館のチケットを取ると、重い腰を上げて外へ出ます。梅雨はあっという間に過ぎ去って太陽は手加減を知りません。「夏ってこんなに暑かったっけ」と毎年のように言っている気がします。  ルックバックを観ました。もうほんとに最初から最後までず

      • ルックバック、観て来ました……。なんかもう最初っから涙ちょちょ切れてました。haruka nakamuraさんの劇伴も優しく切なくて……。まだ観てない人は是非観てほしいです。

        • 遠き日のマンドリン

           つい先日、従姉妹とその彼氏さんと飲みに行きました。婚約したそうです。おめでたいことですね。そして、その約束の日はたまたま"いいタイミング"だったので、私は代々木にあるとあるお店に2人を誘ったのです。  そこは本格的なアイリッシュパブで、美味しいギネスにフィッシュ&チップスを異国情緒漂う店内でいただくことが出来るのです。そしてアイリッシュパブといえばセッション。今日はたまたまその日でした。  みなさんはアイルランド音楽をご存知でしょうか?ケルト音楽と言ったらピンとくるかも

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          私は集合住宅に住んでいます。今コンビニへ行くため外へ出たのですが下の階の廊下に誰かいました。私がエントランスを出た後階段を歩く音が聞こえどこかの部屋が開く音がしたのですが……これって変じゃないですか?普通は一直線に自分の部屋へ向かうはずです。なんかちょっと怖い。ゾゾゾ……。

          私は集合住宅に住んでいます。今コンビニへ行くため外へ出たのですが下の階の廊下に誰かいました。私がエントランスを出た後階段を歩く音が聞こえどこかの部屋が開く音がしたのですが……これって変じゃないですか?普通は一直線に自分の部屋へ向かうはずです。なんかちょっと怖い。ゾゾゾ……。

          びしょ濡れ法螺貝、水止の獅子舞

           帰り道。家へと続く祝日の昼間の細い歩道。その先の信号が青になったのを見て駆け足。この信号はすぐ赤になるのに赤が長いのです。  信号を渡り終えて足の力を抜くと、同じように後ろから何人もの人が走り込んできて私を追い抜きました。そのあたりで「あれ?」と思いました。「なんでこんなに人が多いんだろう……」。  私の前にも人の列が出来ています。そしてその列は私の家の途中まで続いているようです。  「今日、水止舞だってさ」  近くを歩いていた二人組のお婆さんがそういうって納得した

          びしょ濡れ法螺貝、水止の獅子舞

          立ち枯れの紫陽花のように

           通勤路にある紫陽花が枯れ始めていました。あの瑞々しいまでの青や紫は褪せ白に還り、茶色いシミが浮かんでその輪郭は小さく萎んでいます。  寂しくも思いますが、私は立ち枯れの紫陽花が結構好きです。秋が深まった頃などにそれを見つけると、もう一度時期が来たかのように主役然として見えます。色のない紫陽花。失った青や紫はその紫陽花を優しく揺らす秋風に溶けたのでしょう。  立ち枯れの紫陽花を好きになったのは一枚のポストカードに描かれた水彩画がきっかけでした。  永山裕子さんの描く立ち

          立ち枯れの紫陽花のように

          ソルティグランマレポート

          ※不快な内容を含みます  その日は二つのものが燃えた。  一つは家でもう一つは祖父だった。 2021年12月29日 ココロの相談室  あずま様 はじめまして。 この度はお世話になります。 早速ですが、私は夫婦間の思い描く将来像の食い違いで悩んでいます。 妻はここ数年以内に子供が欲しいと思っており、私は全く子供が欲しくありません。しかし妻の意見を尊重したいと思っています。産まない選択をすれば、この先妻に罪悪感を抱き続けると思うからです。 ですが、どうしても子供を作

          ソルティグランマレポート

          大田区の無形民俗文化財、『水止舞』を観てきました。どんな行事かというと、縄でグルグル巻きにされた男性が法螺貝を吹きながらビッショビショになって私たちもビッショビショになって境内まで転がされた男性は縄を解いて舞台を作ったらそこで獅子が踊るというやつです。なんのこっちゃ。

          大田区の無形民俗文化財、『水止舞』を観てきました。どんな行事かというと、縄でグルグル巻きにされた男性が法螺貝を吹きながらビッショビショになって私たちもビッショビショになって境内まで転がされた男性は縄を解いて舞台を作ったらそこで獅子が踊るというやつです。なんのこっちゃ。

          風がないということ

           風がないということは、海が遠いということでした。  風は方舟。目に見えないものを運び届けます。夏の濃い緑の草いきれやはるか南の空の蒸された空気。そして今私の目の前に広がる小さな海から立ち昇る潮の香り。  ここ数日は風が吹いていました。私はその風が何か運んでくるのを、ただじっと待っていただけでした。  今日はそんな風がありません。だから私は潮の香りを吸い込みたいと思った時、その足を動かして砂浜へ降り立つ必要がありました。そしてサンダルを放って、いきおいあまってさざなみの

          風がないということ

          太古の雨

           夜勤明けでベッドに倒れ込んで目が覚めた時、「あ、まずい」と思ったのです。残念ながら、もう手遅れでしたが。  黒いモヤモヤしたソレは胸の中のわずかなシミから少しずつ溢れ、もうすでに全身を包んでいました。身体は重く、ベッドから這い出ることを拒否します。  思考もすでに侵されていて、悪いことや良くないことばかりグルグルと考えてしまい、私はソレを少しでも抑え込もうと耳にイヤホンを突っ込んで、YouTubeに違法アップロードされているダウンタウンの軽快なトークと観客の笑い声を、ギ

          プレゼントは夜

           昨日の夜、千葉に住んでいる友達とお酒を飲みました。私は次の日が休みで、その友達は仕事だったので、私が友達の家の最寄りまで行くことになりました。  19時前の津田沼行きの総武線はスーツ姿のサラリーマンでごった返していて、私は車両の隅に追いやられ、ドアと背中に挟まれてひたすら同じ曲を繰り返し聴いていました。  そういえば、こんな時間に電車に乗って家から離れたところへ向かうのはとても久しぶりなのではないでしょうか。  私は朝型です。ですが、消極的な朝型人間です。どういうこと

          素足で歩く、ただそれだけ

           サンダルはいいです。ポイっと蹴飛ばしてすぐに裸足になれるから。  家のすぐ近くにシロツメクサの原っぱと砂浜がある海辺の公園があります。私は気が向くとすぐにそこへ行きます。散歩したり、朝ごはんを食べたり、本を読んだり、noteを書いたり。  この時期はサンダルをつっかけて公園へ行きます。夏は身につけるものが軽やかで素敵です。  公園に着いてその一面のシロツメクサに足を踏み入れると、ポイっとサンダルを蹴飛ばします。瑞々しい緑の絨毯に素足を乗せると、やわかくて、ひんやりして

          素足で歩く、ただそれだけ

          水無月のプッシュ

           光が少しずつ少しずつ弱くなってゆくのが、海辺を去る人の足音の数でわかります。風の冷たさも、乾いていないシロツメクサの大地も、夜の世界のものなのです。  サンダルを放り出して冷たい砂に素足を預けます。ザラザラとすり足で歩いて砂浜に軌跡を描いてみれば、何か芸術的な絵になったりしないかしら。  片足だけの靴がポツンと置いてあって、私はそいつを主題にしてシャッターを切ります。その切り取られた時間の中で、その靴は何か生き物のように見えました。  これが映画のフィルムの一コマだと

          【さんぽカメラ④】 セミの声つらぬくは下町の夏空 【根津神社〜谷中銀座〜東京都美術館】

          ↓前回の記事 夜勤明けで上野にある東京都美術館へ向かいます。公募展で従姉妹の作品が展示されているらしいのです。 乗換案内アプリに会社の所在地と目的地を入れると、「上野駅」ではなく「根津駅」で降車しろとの案内が表示されました。 根津ってこの辺りだったんだ。会社の人が依然住んでいたらしく、「根津いいよ〜。根津に帰りたい……」とよく言っているので、名前に聴き馴染みはあったのですが、どんなところなのかは全く知りません。 会社を出るとまさに夏空といった感じの深い深い青が頭上に広

          【さんぽカメラ④】 セミの声つらぬくは下町の夏空 【根津神社〜谷中銀座〜東京都美術館】

          私は空っぽになった

           昨日のこと。ひとりで過ごす休日はずいぶん久しぶりでした。寝不足もあって起きたのは昼過ぎ。昼食と洗濯を済ませた後、散歩をして帰って来て、さて何をしようかと悩んで数週間ぶりにPCを開きました。  私は作曲活動をしています。している……といえるのでしょうか。ここ数ヶ月はほとんど何もしていません。  3月ごろに作っていた春の曲があって、約一ヶ月ぶりにその曲を頭から再生します。悪くない、と思いました。というか、良かった。  音楽というのは、聴いていた当時のことを吸収して保存する

          私は空っぽになった