夜明かしのカルアミルク

あたまのなか。日々のこととか。 写真と言葉で。

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【3月のまとめ】春のフルコース

3月31日。 カレンダーの端を指で摘んでちょっとめくりあげてみたら間違えて3枚もめくりあげてしまって。 春をすっ飛ばして初夏の陽気が吹き込んでくるようなキラキラした日。 それでも桜を観ずに先へ進むなんて、当然許しませんよ。昨日も十分暖かかったから満開までいかなくても7分咲き程度の木の一本くらいはあるでしょう。 そう思って近所の公園へ来たものの蕾にすらなっていない木がほとんど。ちょっとだけ咲いている木もあったけれど、私の中の〈桜〉を観た気分にはなれません。 それでも咲き始

    • 透明なベール

      パシャン、と音がしました。 下を向いて波打ち際でゆらゆらしている木の葉や枝、ペットボトルなんかを見て歩いていました。 音のした方へ頭を上げると、また、パシャン、と音がして、跳ねた小さな小魚のお腹が夕日を反射してキラッと光ります。 首からぶら下げたカメラを海の方に向けて、じっとファインダーを覗き込んで待ちます。 遠くの方で騒ぐ子供の声や首都高を走る大型トラックのガタガタという音がしますが、私の周りはとても静かでさざなみのゆれるかすかな音が、透明なベールのように私を包んで

      • ひとり

        遠くへ行く夢を見ました。 中学校からの友達と連れ立って人のいない夜の駅に降り立ちます。あたり一面を月明かりがこうこうと照らしていて、そこは見渡す限りの草原でした。駅からは丘の上までうねうねと白砂が敷き詰められた道が伸びていて、友達の背を追いかけながら私はそこを登って行きます。 ちょっと意地悪がしたくなって、わざと道を外れて青々としげる草を掻き分けて進みます。先回りしてびっくりさせてやろうと思ったのです。 すると私の背丈ほどの金網に突き当たりました。私は何も考えずヒョイと

        • 即死コンボ

          今日は遅番だったから午前9時前の少し人も増えた公園で朝ごはんを食べました。 いつもは日陰になっているベンチにも少し日が差してあたたかさを感じます。 風は強いです。 吹くたびに四方の木々が荒波のようにゴオォーっとうねって花殻が降って来ます。 また強い風が吹きました。 昨日スーパーで買っておいた惣菜パンを庇うように体を丸めます。 ……ぽとん。 おや、頭の上に何か降って来たようです。 ふるふると髪を揺らすと、そいつは服の袖の上に落ちて来ました。 シャクトリムシです。

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        記事

          【さんぽカメラ③】花曇りは薄味で【立会川駅〜大井ふ頭】

          ↓前回の記事 R6.4.5 傷だらけの車窓を透かして、どんよりした空。 出かけた帰りに桜を撮ろうとせっかく持ち出した愛機はさみしげに胸元でゆらゆらと、車内のアナウンスが次の駅を告げます。 『次は立会川。立会川。』 このまま帰るのももったいないし、なによりカメラが可哀想。 ガタガタ開かれたドアから慣れないホームに降り立ち、レンズキャップを外します。 立会川駅〜大井競馬場前駅京急『立会川駅』から東京モノレール『大井競馬場前駅』を通って『大井ふ頭』へ行くことにしました。

          【さんぽカメラ③】花曇りは薄味で【立会川駅〜大井ふ頭】

          マリネ

          ヒラリヒラリと。 散ってしまった桜を惜しみつつ歩く午後の公園で、桜の葉の緑もずいぶんきれいだなぁと思います。 桜の白、ピンクに目を奪われているうちにどうやら緑がスクスクと芽吹いていたようです。 いつもの公園のいつものベンチで見上げるいつもの空もいつの間にか狭くなって小さな葉がサワサワと揺れています。 長い長い緑道を歩きます。 差し込む木漏れ日が切り取る大気の中に細かな雪のようなものがキラキラと反射して降り注いでいます。調べるとどうやらケヤキの花殻のようです。道いっぱいに

          記憶のスコップ Instagram

          1ヶ月くらい前からInstagramを初めてちょくちょく投稿をしています。 2年くらい前までは少し写真を上げていたのですが、なんだか面倒になってすっかりROM専のアカウントになっていました。 『また、はじめてみようかな。』 そう思ったのは春が近づいて来てなんだかウキウキしたのと、川内倫子さんの写真展に行って写真欲を掻き立てられたこと。 川内さんの写真は複数枚の写真で構成されていることがあって、それらは共通する質感や構図で切り取られた時間と空間の隔たりを超えるのです。

          記憶のスコップ Instagram

          夢のあと

          ピピピピ。 しつこく鳴るアラームを何度かスヌーズしてようやく布団から出る気になります。時刻は9:30。アラームは5:00。早起きして桜を見に行こうと言っていたのにこの体たらくです。 締め切られたカーテンの隙間から細くなった日が差し込んで部屋の隅に積まれた本の山を照らしています。 歯を磨いて何か作ろうと流しに立つと、シンクの上にいくつもの紅色の軌跡。 昨日の夜桜を観に行った帰りにお土産に買ったりんご飴。見た目はかわいいけれど、いかんせん食べづらい。それなら家で食べようと妻

          あこがれのたべもの

          土がたべたい。 ええ、そうです。 草や木や花が育つ、私たちがいつも踏んづけている、あの土です。 それはずいぶんと前になるのですが、川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』という小説を読みました。 内容はもちろん素敵なのですが、私にとって出会いの多い小説でした。 一つはショパン。作品番号57番『子守唄』。 元々は『変奏曲』と付けられていたように、左手が変ニ長調のⅠ→Ⅴから成る音形をひたすら繰り返し、右手がひたすら変奏をしていくというもの。 変わらないもの、あたりまえ

          雨の道

           いつも雨が降っている道がある。正確には私が通る時はいつも、だ。帰りには止んでいることもあるけれど、行きは必ず、雨。  前に勤めていた会社は、家から自転車で30分くらいの距離にあった。そこそこ遠い距離なのだけれど、会社の立地が悪く、電車15分に加えて駅から20分ほど歩かなければならなかったから、毎日自転車で通っていた。   会社は東京の臨海部にある。まず家を出て多摩川沿いの堤防を海に向かって自転車を漕いだら、大きな橋を渡って首都高の下を行く。高架下沿いにある"まいばすけっ

          夏ではなくて?

          もわもわとした感じに毛布を蹴飛ばして布団から這い出ると、毛玉だらけのジェラピケのパジャマが少し汗ばんでいます。 窓を開けても冷たい風が吹き込んでくることはなくヒヨドリやピヨピヨという可愛らしい鳥の声にゴミ収集車のエンジン音や作業員の声が飛び込んで来ます。 オーライ、オーライ。 まだイビキをかいている妻のためにブランチを作ります。 切った水菜に細切りのベーコンを加えて粉チーズ、黒胡椒、醤油、オリーブオイルで和えます。今日は爽やかな春の日だから、白ワインビネガーも加えましょ

          かえるぴょこぴょこ

          かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ。 今日は遅番だったし、電車が止まっていたし。 お昼に職場のテレビでタサン志麻さんの素敵な番組を観てしまったせいで、スーパーであれこれ食材を探し回って、それが楽しくて気づけば夜8時すぎ。 両手にビニール袋をぶら下げてレジの会計に後悔しつつ、袋から飛び出たセロリと水菜の葉に目をやって少しウキウキしながら歩きます。 川沿いの道にはすっかり花をつけたカタバミが街灯に照らされ鮮やかな黄色。 さてさて、橋を渡って細長い道を真っ直ぐ歩いていると、あれ

          かまくら、かまくら

          春が近づくと鎌倉に誘われる。 なぜでしょう。 ついこの間も友達と行ったばかりなのです。 近いとはいえ電車で一時間はかかるのです。 前日にザーザー雨が降って、朝早く目が覚めたら止んでいて、よし、ならば鎌倉へ行きましょう。 そんな単純な直列回路でビビッと鎌倉にリンクする春の今日この頃。 かまくら、かまくら。 北鎌倉がいいですね。 鎌倉駅で降りると"いかにも"といった人混みに巻き込まれます。串に刺したイチゴを食べながら鶴岡八幡宮を目指すのも、実は悪くないのかもしれませんが。

          ダミアンの桜

          私は海をイメージする時、その後ろには朝焼けのピンクと青が混じったどこまでも続く空を思い浮かべます。 私は線香花火をイメージする時、蚊取り線香の匂いと草いきれが溶け込む深い夜の闇を思い浮かべます。 私は桜をイメージする時、夜桜を真っ先に思い浮かべます。 決して桜の名所ではなく、最寄駅から自宅へ向かうような私的な道のりで見つかる一本の桜。街灯の灯りで浮かび上がる白に近い桜色の花はもう散り始めています。 …………。 Instagramに上げる写真を探していました。 直前に投

          【さんぽカメラ②】なかなかハードなハイキング【鎌倉周辺】

          ↓前回の記事 鎌倉の空をそれなりのスピードで進んで行く湘南モノレール。ジェットコースターとか呼ばれているみたい。休日の9時半過ぎ。天気は晴れ。 西鎌倉駅についてドアを降りると、同じ車両の別のドアから降りて来た友達と目が合いました。 今回は観光ではなく鎌倉の自然散策メイン。 さあ鎌倉さんぽカメラ旅のはじまりです! 【西鎌倉駅〜鎌倉高校前駅】今日のおともはオリンパスのOM-1。 最近発売されたデジタル一眼ではなくてフィルムのほう。 フィルムが値上げしてからずいぶんと疎遠

          【さんぽカメラ②】なかなかハードなハイキング【鎌倉周辺】

          手付かずのランチ

          友達と鎌倉に行きました。 さて、お昼時。 休日の鎌倉は観光客でごった返しています。 日本語の方が珍しいくらい外国の方も多いです。 シラス丼なんてメジャーな食事を出す食堂は当然並んでいます。 裏道を歩いていると小洒落たパン屋さんがありました。 漆喰とライ麦パンの様な深い木の色が目を惹く、ベーカリーでもブーランジェリーでもないまさにベッカライといったシックな佇まい。 カフェスペースがあってガラス越しに店内の様子をうかがうと、若そうなカップル1組と貴婦人といった雰囲気の老齢の