マガジンのカバー画像

音楽楽

31
こんな視点や前情報があるともっと音楽が楽しくなるんじゃないかなぁ、ということを書いていきます。
運営しているクリエイター

#音楽史

大人のためのメタル話① 90年代の”洋楽ファン”はどれぐらいメタルを聴いていたのか

大人のためのメタル話① 90年代の”洋楽ファン”はどれぐらいメタルを聴いていたのか

20世紀に青春を過ごした方々のためのメタル話を書いていこうと思います。

トップ画像にした通り、現Burrn!編集長の広瀬和生が90年代を語る本「ビッグ・イン・ジャパンの時代」が発売されました。

disk unionの販売ページは→こちら

先だって炎やヘドバン誌で「1991年特集」が発刊され、90年代再評価、振り返りの機運を高めての出版。心待ちにしていました。個人的にもこの辺りを最近見返してい

もっとみる
Alternative(オルタナティブ)ロック史50年 Revisited:後編

Alternative(オルタナティブ)ロック史50年 Revisited:後編

本記事は後編です。前編はこちら。

Alternative(オルタナティブ)ロック史⑥:00年代前半オルタナティブロック(代替)がメインストリームへと変化した90年代を経た00年代。ロック観の大転換の後、どのような音像が出てきたでしょうか。

2000.新しいロックの幕開けWoodstock1999の大炎上(一部の暴徒化した観客による暴力と略奪、そして放火により大混乱に陥り、その荒廃した様子がメデ

もっとみる
Alternative(オルタナティブ)ロック史50年 Revisited:前編

Alternative(オルタナティブ)ロック史50年 Revisited:前編

※本稿はマガジンとして連載した記事を編集・修正したものです。大きな変更点は次の2点。

1.全連載を1記事(前後編)に集約
2.写真、音源へのリンクの削除(テキストのみ)

元のマガジンは初の有料マガジンにしています。ありがたいことに購入してくださる方がけっこういらっしゃったものの当然ながら閲覧数は減ったんですよね。ただ、オルタナティブロックに関するこれだけのテキストやデータってあまり日本語のwe

もっとみる
「自分で曲を作る(新曲を出す)」ということは特定の時代のブームだったんじゃないか

「自分で曲を作る(新曲を出す)」ということは特定の時代のブームだったんじゃないか

USでは音楽業界の売上で旧譜が新譜の倍(全体の3分の2)を占めている。

音楽史(人類史)を振り返ってみると、こうしてどんどん「新曲が出る時代」というのは一定のサイクルで起きていることが分かる。

たとえば西洋オーケストラ、中世以降の西洋伝統音楽(いわゆるクラシック)はバッハとかベートーベン、モーツァルトは新曲をどんどん出した。だけれどある時期から「過去曲」の演奏比率が増えていった。ある音楽シーン

もっとみる
90年代のBurrn!の影響を考える ー Burrn!は誰を表紙にしていたのか?

90年代のBurrn!の影響を考える ー Burrn!は誰を表紙にしていたのか?

先日、「グランジムーブメントがメタルに与えた影響」という記事を書きました。その中で『当時、日本のメタルファンの間では「グランジ、オルタナ」に対しては批判的な意見も多かった印象です。これは当時、日本のメタラーに多大な影響力を持っていたBurrn!誌がグランジムーブメントのアーティストに対して否定的だった、ということもあるでしょう。なぜそうなったか、は、また別の原稿で考えるとして』と書いたのですが、本

もっとみる
グランジムーブメントがメタルに与えた影響:1992-1995

グランジムーブメントがメタルに与えた影響:1992-1995

1991年、NirvanaのNevermindやPearl JamのTenの商業的成功によってUSの音楽業界は地殻変動が起きました。シアトルのバンド群を中心としたそのムーブメントは「グランジ(薄汚れた)ムーブメント」と呼ばれ、80年代中盤からのメインストリームロックの座を占めていた(当時の)ヘヴィメタルから王座を奪い取ります。ただ、最近改めて1991年の再評価※1が進んでおり、それらを読むと多くの

もっとみる
「日本らしい」音楽とは何か

「日本らしい」音楽とは何か

今週は邦楽ウィークとして、6枚のJ-POP作品を聴いてきました。その中で、「これは日本っぽいなぁ」と思うところがいくつかあったのですが、じゃあそもそも現代のポップスやロック、流行音楽に現れる「日本らしい」音楽要素とは何か、ということを考えてみたいと思います。

日本音楽の歴史はじめに、軽く”日本音楽の歴史”について振り返ってみましょう※1。日本音楽は、外国音楽の輸入 → 外国音楽の日本化 → 日本

もっとみる
これだけ聞いておけばロック史がだいたい分かる50枚(または30枚)【33333文字】

これだけ聞いておけばロック史がだいたい分かる50枚(または30枚)【33333文字】

前回の記事の続きです。書いているうちに予想外に長くなってしまいましたが、ロック史をなるべくエッセンスを抽出して振り返ってみたいと思います。前回、6アーティスト18枚のアルバムを選びましたが、それだけでは拾いきれない音像を追加で32枚選びました。前の記事と合わせると合計50枚。「これだけ聞いておけばロック史がだいたい分かる50枚」を目指しました。選ぶにあたって心がけたことは次の3点です。

・同じジ

もっとみる
ロックミュージックを総括する6組のアーティスト、18枚のアルバム

ロックミュージックを総括する6組のアーティスト、18枚のアルバム

ロックンロールが生まれた1950年代以降、70年近いロック史の中で数多のアーティスト、アルバムが生まれてきました。だいたい、ロック史において重要視されるバンドやアルバムは次の特長を持っています。

・ロックミュージックの領域を拡張した。
・その後、フォロワーが現れて一つまたは複数のサブジャンルを作った。

「聞いたことがない音楽」を提示して衝撃を与えると同時に、「私もこういう音楽をやりたい!」と後

もっとみる
データ分析で分かる音楽の変化『ポピュラー音楽の進化:USA 1960–2010』

データ分析で分かる音楽の変化『ポピュラー音楽の進化:USA 1960–2010』

データ分析をすると様々なことが分かります。たとえば音楽の聴かれ方がどう変化したか、とか。Spotifyにはデータ分析の専門チームがあり、「どのように音楽が聴かれているのか」を分析した論文を出しています。

「音楽ストリーミングサービスのユーザーのスキップ行動とその音楽構造との関係」と題されたこの論文は、「どんなタイミングで曲がスキップされやすいのか」を調べています。Spotifyは「ユーザーがいつ

もっとみる
インフォグラフで見るメタルのトレンド

インフォグラフで見るメタルのトレンド

メタルのジャンル別のリリース年をまとめたインフォグラフです、素晴らしいですね。この方(偽メタルさん)、凄い。凄まじい労力に感服します。

このデータはRate Your Musicからのデータ。音楽リスナーが投票するポータルサイトで、世界中のあらゆる音楽が投票の対象となっています。アルバムに対してユーザーがどんな音楽ジャンルかタグ付をできるので、いわば「人の耳で分類したジャンル」のリスト。メタルジ

もっとみる
ロック史だけじゃない、全体の音楽史ってどんなもの?

ロック史だけじゃない、全体の音楽史ってどんなもの?

音楽ジャンルを辿るのは面白い。ルーツをたどるのは物語を読むような気がするし、聴き手としての自分史にもつながるから。ということで、「ロックの歴史」を調べるのが好きな方におススメのサイトがこちら。

これは凄い。ロックの歴史が時系列でずらっと並んでいます。約100年分。細かすぎず、とはいえ重要なものはだいたい網羅。ハードロック、メタルの分類も細かい。大きくロックの主流で言えば「ブルース、ジャズなどの黒

もっとみる
ここ50年ぐらいの音楽の変遷

ここ50年ぐらいの音楽の変遷

音楽史をざっと俯瞰してみようと思います。

1950年代にロックンロールが発明され、若者たちの口ずさめる歌、WWⅡの後の人々の暮らしを彩るものとして、レコードの普及とともに音楽が家庭の中に入っていきました。レコードの普及は重要で、録音物で何度も聞いてもらえる曲と、ライブで一発勝負の曲だと作り方が違ってくます。ライブだとやはり定型化というか、はじめて聞いても馴染みを持てるスタイル(ブルースの曲展開に

もっとみる