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ジョブローテーションは危険かもしれない(就活生向け)


【Co-WARCサイトオープン】

WARCに所属している公認会計士・税理士の皆さんで組織された会計コンサルチームであるCo-WARC(コワーク)のサービスサイトがオープンしました。
是非御覧ください。


はじめに

今回は珍しく新卒向け(もしくは社会人2年目あたりまでの皆さん向け)の記事を書いてみたいと思います。

このnoteは、主にベンチャー企業の若手優秀層(25~30歳前後)を対象としておりますので、新卒向けの記事はおそらく書いたことがないと思うのですが、結構大事なことだと思いましたので、あえて書いていこうと思います。

テーマとしては「ジョブローテーションについて」です。

私自身は、10年以上一つの分野ばかり学び続けて、キャリアのほとんどをベンチャー企業の専門職として生きてまいりました。
周りにも専門職が非常に多く、経理、財務、経営企画、M&Aプロフェッショナル、法務、労務、人事などが多いです。

一方で、学生時代の同級生の多くは大手企業の総合職や公務員として勤めておりますので、今でもジョブローテーション方式で10年以上勤務し続けております。

この年齢になってくると、やっと周りが見えるようになってまいりますので、同級生と自分、周りにいる同僚たちと同級生などを比べることができるようになってきます。

そこでふと思ったのです。
ジョブローテーションって危なくないか?と。

異論反論もあるかと思いますし、それぞれの価値観によって結論は異なってくると思いますが、今回は一専門職の私見として書いていこうと思います。


1.ジョブローテーションとは

新卒又は学生の皆様の中には、ジョブローテーションが何たるかを知らない方もいらっしゃるかもしれないので、まずはジョブローテーションの定義から明らかにしていきましょう。

ジョブローテーションとは、入社後の数年~十数年間で、様々な部署への異動を経験し、ジェネラリスト(幅広い知識や経験などを備えた経営人材)を目指す制度のことをいいます。

主に大手企業の総合職公務員(行政官)などで見られる人事制度です。

会社によってジョブローテーションの期間は様々ですが、2~4年程度に1回のペースで異動するケースが多いかと思います。
そして、大体35歳くらいまでには主要な職種は全部回り切る感じになります。
このジョブローテーションの中で、優秀な人材については経営幹部から声がかかり、出世街道を歩みます。

そのため、配属先の順番や出世のスピードなどで、途中から「あの人は出世コースだな」「この人はもうあれだな」というのが大体わかります。
大手企業にいる同級生に聞いた話では、出世コースに乗っている男性はモテやすいらしいです。

出世コースに乗ることができている人については、順調に重要な部署・役職に配属されて、貴重な経験を積ませてもらえます。
場合によっては、早い段階で子会社の役員等に就任して「経営幹部」としての経験を積むことができます。
会社によってそういう経験ができる人の割合は様々ですが、大手の場合は毎年100人以上の新卒入社がいますので5~10%程度といったところでしょう。

一方で、出世コースから外れた人は、そこまで市場価値が高くない職種だけを経験する感じになりますので、若干厳しいキャリアになっていきます。



2.ジョブローテーションのメリット

では次に、ジョブローテーションのメリットについて、企業側と従業員側でそれぞれ見ていきましょう。


(1)企業側のメリット


まず企業側のメリットとしては、総合力を持った経営人材を育成できるというメリットがあります。
大手企業の場合、ある特定の分野にだけ詳しい人たちだけを集めても経営が成り立ちません。
様々な部署を一通り理解して、経営全体を見ることができる人材が必要不可欠です。

そういう人材を外部から連れてくることは可能ではあると思いますが、やはり内部事情に詳しい人材じゃないと成し得ないことも多いです。
そのため、将来の経営人材を育てるという意味でも、ジョブローテーションは必須の制度といえます。

また、長い時間をかけてじっくりと育成することができるため、長期的に社員が定着してくれやすくなるというメリットもあります。
現に日本の大手企業の定着率は非常に高く、わざわざリスクを冒してまで転職をする人は少数派です。



(2)従業員側のメリット


一方で、従業員側にもメリットがあります。
それは、様々な職種を経験することができるので、自分の向き不向きがわからない人でも安心という点です。

10年くらいかけて多くの部署を経験し、最も自分に向いて職種を目指せば良いので、非常に気が楽です。
あまり好きではない部署・職種でも、早ければ2年程度で異動できるので、いろいろと都合が良いです。

それに、先々大きな会社で経営層として活躍したい人材にとっては、ジョブローテーションは非常に有益で、経営全体を把握するのにも適しています。


以上より、ジョブローテーションは、企業側にも従業員側にもメリットがある制度といえるでしょう。



3.ジョブローテーションのデメリット

では、デメリットはあるのでしょうか。
こちらも企業側と従業員側に分けて検討していきましょう。


(1)企業側のデメリット


まず企業側のデメリットについて検討します。

すぐ思いつくものとしては、専門家が育ちにくいという点が挙げられます。

しかし、この点については、スペシャリスト志向の人材とジェネラリスト志向の人材を途中から分ければいいだけなので、新卒入社の数が多い大手企業であれば簡単に解決できる論点です。

最初はやりたいことがわからなかった若者でも、途中からやりたいことが見つかりだすものです。
そういう人たちに対しては、特定の分野の経験を長く積ませてあげることで、スペシャリストを育成することができます。


次に、教育コストが増加するという点が挙げられます。

ジョブローテーション制度の下では、数年ごとに職種が変更になり、その都度一から教え直す必要が出てくるため、教育コストがかかってしまいます。
この点は大きなデメリットかなと思います。

ただ、中途採用のような即戦力採用と違って、新卒採用は採用コストが安く、人件費も抑えられるため、教育コストを捻出したとしてもまだ経済的メリットが大きいかもしれません。

したがって、ジョブローテーション制度は、企業側にとってはそこまで大きなデメリットはなさそうです。
だからこそ、大手企業の多くが採用しているのだろうと思われます。



(2)従業員側のデメリット


一方で、従業員側のデメリットはどうでしょうか。
この点については、私の見解としては、結構大きめのデメリットがあるという認識を持っています。

まず、すべてが中途半端になりやすい(転職で不利になり得る)という点が挙げられます。

私の同級生たちは、今ちょうどジョブローテーションが一巡したあたりの年齢にいます。
役職としては係長あたりが多いですが、頑張っている人にはついては課長あたりまで出世しています。
大手企業で課長まで行けば、年収は700~1000万円ほどになります。

しかし、大抵の人が何ができるかよくわからないというのが実情で、本人たちの認識としては特にこれといって専門分野がないらしいです。
その会社では課長を務められるかもしれませんが、他社に行くと途端に何もできないという可能性があります(同業他社の同分野の事業部に転職する場合を除く)。
ある程度何でもできるけど、飛び抜けて優れた能力や経験は持っていないという感じです。

もちろん、中には素晴らしい人材も存在します。
若くして貴重な経験が積める部署に配属され、海外勤務や難易度の高いビジネスに従事してきた人たちです。
こういう方々については、ある意味専門職でして、特別な能力を持った人材です。

ただ、そういう人は極々一部でしかないので、大抵の人材が35歳前後で何ができるかよくわからないという状況になりやすいです。
大手企業では、この年齢帯はまだまだ若い方で、これから20年以上かけて少しずつ成長して、出世していくことが期待されています。

その大手企業に一生居続けるのであれば全く問題ないと思うのですが、転職するかもと考えると、若干不利になり得ると考えています。
私だったら、どうやって自分を売り込んだらいいのかよくわからなくなります……。

まだ若かりし頃の話ですが、私自身大手企業にいて、上司である40代~50代の大先輩方を見て、とても強い危機感を抱きました。
このまま行くとこの会社でしか働けない人間になりそうだなという危機感です。

ただ、ジョブローテーションの企業に長く勤めると、転職をしたいというインセンティブが働かなくなるようです。
若い頃は皆それなりに危機感を抱いていたと思うのですが、10年以上勤め上げると、会社への信頼や愛着が深いレベルで刻まれるので、転職という動機が低減していくのです。

企業側にとっては、長く働いてくれることになるのでメリットの大きなことだと思いますが、従業員側にとってメリットといえることなのかは怪しいところです。

そもそもジョブローテーションは、従業員がずっとその会社に居続けることを前提としている制度なので、転職するという選択肢が脳内から消えやすい(又は薄くなりやすい)制度です。

私がベンチャーに長くいるからだと思いますが、一つの会社に依存した人生は、非常にリスクの高いキャリアだなと思ってしまいます。
10年後、20年後、転職市場でより厳しく審査される年齢になったときに、本当にその会社が存続し続けているのかどうかもわかりません。

40代や50代でいざ転職せざるを得なくなったとき、これまでのキャリアが3~5年で職種がコロコロと変化している場合、どんなことができる人なのかよくわからないキャリアになります。
そのような人材であっても、転職市場は高く評価してくれるのでしょうか。
私の知る限りでは、ジョブローテーションの経歴が高く評価されたケースをあまり見たことがありません。

同業他社で、同じような働き方で働ける場所があるのであれば好都合だと思いますが、そんなに都合よく良い転職先が見つかる人は何割いるでしょう。

ゆえに、これは大きなデメリットになり得る感じています。


次に、キャリア転向が難しいというデメリットもあります。
別の言い方をすると、自分の思い通りのキャリアは描きづらいです。

ジョブローテーションは、定期的な異動を前提としており、就業規則上も拒否できないような作りになっていることがほとんどです。
したがって、会社側の命令があれば、それに従うしかありません。
基本的には断れないものですし、断っても上司からの心象が悪くなるだけなのであまりメリットがないのです。

例えば、入社して5年目(27歳~30歳くらい)で自分は経理専門職の方が向いているなと感じたとします。
そこで、人事に「経理に行きたいので経理に配属してください」と言ってそれが叶う人は極少数でしょう。

そうなったときに取り得る選択肢は、退職して経理にジョブチェンジするか、経理に配属されるまで自分で学習を続けてじっと耐え忍ぶか、諦めるかです。

いずれの選択肢もなかなか困難な道だなと思います。

そもそも20代後半以降から全く新しいジャンルの勉強をして、資格を取って、転職をするという行為自体が難易度が高いです。
私自身もその道を選んだ側なのですが、とても苦労しました。
奇跡的に良い出会いがあったから今がありますが、一時は絶望的な状況に追い詰められました。
今があるのは、当時未経験だった私を採用してくださった師匠のおかげです。
そういう奇跡的な出会いでもない限り、キャリア転向は難易度が高い行為だと思います。

ここ10年ほど、専門職のキャリアを間近で見てきて思うのですが、やはり専門職として成功している人は若いときから専門職であることが多いです。
特に経理・財務・法務などの職種は、高い学力と難易度の高い資格、それに加えて学歴や学位などが必要になる職種なので、一人前になるまでに長い時間を要します。
したがって、専門職になるなら若ければ若いほど良いといっても過言ではありません。
20代後半、ましてや30代になってからジョブチェンジするのは、よほどの幸運でもない限りは並大抵の努力では成し得ないことだと思います。

異職種からのキャリア転向の相談を毎年数十件ほど受けますが、20代半ばくらいまでが一つのリミットで、30代以降の人たちはあまり成功しておりません。
大抵は資格すら取れずに終わります。
極端な話ではありますが、資格が取れたとしても、年収を100~200万円下げた上で、それでも転職に成功するかどうか怪しいところです。


最後に、タイムロスが大きい点もデメリットだと思います。

ずっと同じ会社で働くという気持ちがあって、かつ、その会社で出世を目指すのであれば、ジョブローテーションはとても良い制度だと思うのですが、前述のように途中でジョブチェンジして、専門職になろうと思った場合は、大きなタイムロスが発生してしまいます。

専門職にとって、数年の実務経験を失うのは非常に痛いことで、その間に同級生との差が一気に広がります。
そして、その差を埋めることはとても難しいです。
2~3年くらいの短いロスなら追いついて追い越すことも可能だと思いますが、5年以上になってくるとなかなか厳しいものがあります。

専門職のスキルは、大体その経験年数に比例していくので、有益な経験を多く積みたいなら、若いうちから専門職に就くべきです。
そういう視点で見ると、専門職志向が強い人にとっては、ジョブローテーションはリスクの高い制度だなと感じています。



4.自分が新卒ならどうするか

ここが難しいところなんですが、自分が新卒なら、最初から専門職コースと、ジョブローテーションコースのどちらを選ぶのかという論点があります。

今の私なら迷わず「最初から専門職コース」を選びます。
理由はたくさんありますが、主なものとしては、稼ぎやすい、転職しやすい、「これができる」と堂々と言えるものがあるで安心できるという3点があります。

しかし、この論点については、様々な経験を積んだ今だからいえるだけで、何の情報もない新卒のときに同じことを言えるのかと言われると痛いところです。

そもそも、新卒の段階で、専門職に就くぞ!という人は少数派だろうと思います。
しかも、若い頃から専門職を志す人は、とても優秀な方々が多く、早い人では10代の後半からすでに難関資格の勉強を始めている人たちです。

今私が10代に戻れるなら間違いなくその道を歩みますが、万人に妥当する道ではないことも確かです。
なぜなら、青春を犠牲にすることとほぼ同義だからです。
10代の後半又は20歳ごろから難関資格の勉強を始めると、本気であればあるほど交友関係に割く時間が無くなります。
そのため、人生の夏休みと言われている大学生時代をほぼ勉強一色で過ごすことになります。

私が現在所属しているWARCには、公認会計士や税理士の皆さんが多いのですが、彼らの多くが青春を犠牲にしてその資格を手にしています。

それはそれで大変素晴らしいことではありますが、そのあとすぐに夏休みが来るかと言われると、しばらく来ません
専門職の場合、新卒入社直後から大抵激務でございまして、最初の5年~10年でみっちりと基礎を叩き込まれるので休んでいる暇なんてないです。
資格取得までの間は死ぬほど勉強しないといけないのですが、入社後は働きながら同程度の勉強をし続けないといけません。

せっかく資格を取って、士業や専門職の仲間入りを果たしたのに、激務で心身ともにボロボロになって脱落するという人も何割かは存在します。
そのため、資格さえ取れば後は順風満帆な人生というわけではありません。

そして、30歳くらいまでに修行期間が終わったとしても、30代半ばから40代終わりくらいまでが一番の稼ぎ時なので、その15年程度で5000万円から数億円の資産を形成しなければなりません(人によってはそこまで貯められないこともある)。

キャリアに大きなミスが無ければ、40代半ばくらいまでには(ある程度の健康を犠牲にすることで)1億円くらいは貯まると思うので、50代以降は趣味で仕事ができるくらいになっているはずです。
私の先輩方はそういう人生を歩んでいる人が多いです。
早い人では、30代で億単位の資産を形成しているので、40代以降は暇つぶしで仕事をしている人もいます。
専門職にはそういう夢があります。
※早い時期に家族を持つと話が違ってくる

専門職の成功パターンは、上述のように、若いうちに苦労して後々楽をするという感じなのですが、それを若い頃から意識して成し遂げられる人は少数派だと思います。
勉強という苦行、激務という苦行を耐え抜いた猛者だけがたどり着ける場所です。

最初のハードルとしては、一番体力があって、友達もたくさんできる楽しい黄金時代(大学生時代)を勉強に捧げられるかどうかです。
これができる人はあまりいないと実感しているので、万人に妥当するような道ではありません。

しかし、それでも私は、専門職コースをオススメしたいと思っています。

ジョブローテーションもけして悪いキャリアではないですし、そのコースでちゃんと出世して、社会的地位を手に入れている方も多く存在します。
しかし、私が知る限りでは、ジョブローテーションコースで成功している人は、ほぼ間違いなく専門職コースでも成功していただろうなと思いますし、より楽に成功していたと思われる人です。

そもそも、専門職コースは、凡人であっても、努力をし続ければある程度成功できてしまうコースです。
資格を取得するまでは相当な努力が必要ですが、一度取ってしまえば、資格が強力に補助してくれるので、無資格で戦うよりも、遥かに楽にお金を稼ぐことができます

また、途中で会社が潰れてしまっても、自分自身にスキルが残るので、比較的簡単に転職ができます
特に会計専門職については、経理・財務・経営企画・M&A・ファイナンス・内部監査など幅広い分野での活躍が可能なので、選択肢も豊富です。

さらに、何歳になっても「経理なら任せてください」とか「財務ならできます」という明確な強みが主張できるので、精神的にとても安定します。

それゆえ、新卒の皆さんにも、強めにオススメしたいところです。

最後に、ちょっと話しづらい話をさせてもらうと、正直に申し上げて、私はジョブローテーションコースで勝ち上がっていく自信がございません。
胡麻をする能力も低いですし、社内政治というものがとても苦手です。
そういう意味でも、コミュ力に強い自信がない人は、専門職コースの方が良いのではと思っています。

それに、専門職の世界には、そこまで飛び抜けた才能を持った人はあまり見当たらないので、努力の量がある程度報酬に比例する世界です。
特別な才能がない人でも、努力を継続することができるなら、十分な可能性がある世界だと思っています。



おわりに

長々書いてまいりましたが、ジョブローテーションを全否定する意図はありません。
日本に長く根付いてる制度ですから、それ相応の価値があるし、合理的であると思っています。

しかし、一個人のキャリアを考えると、リスクも大きいなと思っているので、新卒や20代前半の新入社員の皆さんは、自分の人生をよく考えて選択してください。

そして、専門職もありかもと思ったら、とりあえずSYNCA(シンカ)に登録してみてください😁
SYNCAはベンチャー企業の経営管理部門の専門職求人に特化した転職サイトなので、専門職の年収相場や待遇を調査するのに適していると思います。


有力な資格が取得できたら、スカウトも来ると思うので、挑戦してみてください👍

ではまた書きます。


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【著者情報】

著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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