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経理のキャリアを考えてみよう


【Co-WARCサイトオープン】

WARCに所属している公認会計士・税理士の皆さんで組織された会計コンサルチームであるCo-WARC(コワーク)のサービスサイトがオープンしました。
是非御覧ください。


はじめに

このnoteの発行母体であるWARCという会社は、ベンチャー企業の元CFOで、かつ、IPO経験のある公認会計士らが創業した会社です。

そのため、現在も会計コンサル、IPOコンサル、M&Aコンサル事業などの会計分野の事業を中心に行っていて、他にもCFOなどのハイクラス層を中心とした人材紹介事業ベンチャー企業の経営管理部門(経理・財務など)の求人に特化した転職サイトであるSYNCA(シンカ)の運営なども行っています。

上記のような事業内容なので、社内には公認会計士や税理士が多く、転職市場でも経理・財務・CFOなどの会計専門職の転職を支援することが多い会社です。

この記事の筆者である私(瀧田)も、WARCに所属しているおかげで、法務という職種ではありながら経理の皆さんの転職事例を多く見ることができました。
そのため、年に何度も、経理という職種がどれだけ重要な存在なのかを思い知らされております。
特にベンチャー企業にとっては、極めて重要な職種です。

経理が弱い会社は事業自体が上手くいかなくなることが多いですし、IPOなんて夢のまた夢です。
私個人としては、経営管理部門の中で最も重要な部署は経理だと思っているくらいです。
経理の重要性を認識できていない会社は、経理のスペシャリストの皆さんから見限られていくので、緩やかに停滞していきます。

そのような、経理の重要性を認識できていない会社で長々とキャリアを潰してしまうのは非常に勿体ないことだと思うので、優秀な若手経理の皆さんには、経理の重要性をちゃんとわかっている企業に早めに転職してほしいものです。

私は経理の皆さんを心から尊敬しているので、良いキャリアを歩んでほしいと強く思っています。
そこで今回は、私の視点から見た「経理」という職種のキャリア(主にメリット・デメリット)について考えていこうと思います。

そもそも経理という職種は、会計専門職の代表格といえる職種で、多くの会計専門職が経理担当者としてキャリアをスタートさせます。
また、他の会計職種に就いた方であっても、後々経理実務の重要性に気づき、あえて経理担当者として一から実務経験を積み直すというケースも多く発生しています。

それほど重要な職種であり、会計専門職の王道でもあります。
そんな経理職を少し深掘りしていきます。
若手の経理スペシャリストの皆さんの参考になれば幸いです。
なお、今回の記事の主なターゲットとしては、20代前半から20代後半の若手経理マンを想定しています。

そして、私で良ければ就活・転職・キャリアなど、いつでも相談には乗れますので、気軽にFacebook又はLinkedInでご連絡ください😁
私自身は人材紹介を行っていないので、相談に乗るだけ、又は経理財務専門のエージェントを紹介するくらいしかできませんが、それでもよければいつでも!


1.経理の役割

ではまず、経理の役割について改めて考えていきましょう。

経理とは、会社のお金の出入りを把握し、帳簿に正確に記載する担当者です。

経理という職種と関わりがない人からすると、請求書や領収書などとにらめっこして、会計ソフトに入力しているだけでしょ!と思われているかもしれませんが、これがとても大変で、かつ重要な仕事なんですよ!
すべての従業員が会計に詳しい会社なんてほぼ存在しませんから、普通は領収書や請求書の重要性を理解していない人の方が多いです。
期限内に請求書が送られてこないなんてしょっちゅうあります。

また、立替経費で買った商品の領収書すら管理できていない従業員も多く存在します。
そのような中で、すべての証憑類を集めて、管理し、期間内に正確に帳簿に記載するという荒業をこなさないといけません
これを毎月実施して、しかも3ヶ月毎に四半期決算をしますが、その4回に1回は本決算なので過去の証憑の全件チェックを行います。

さらに、年に1回は確定申告もあります。
毎月のように繁忙期が来るので、これらの業務をスムーズにこなそうと思ったら、必然的に全部署と関わらざるを得ません。
結果、コミュニケーション能力、専門性、先読力、調整力など様々な能力が必要になってくる仕事です。

そもそも、なぜ会計帳簿を作らないといけないのかというところもお話しておきましょう。
会計帳簿をつける目的
は、主に3つあります。

(1)確定申告をするため
(2)経営状況を把握するため
(3)開示するため

この3つの目的を達成するために、経理という職種が必須なのです。
以下、一つずつ解説していきます。


(1)確定申告


1つ目が、確定申告をするためです。
会社にも個人と同様に、所得税(法人の場合は法人税という)の納税義務がありまして、その税金は、所得に対して税率を掛けることで求められます。
そして、この「所得」を計算するためには、日々の取引について正確に金額を把握して、帳簿に記載しておかないと計算できません

仮に、帳簿をつけておらず、自社の売上も経費も全然わからないという状態になってしまうと、正確な税額がわからず、納税ができません。
納税義務を果たさないと、最悪の場合逮捕されます👍

このような事態を回避するためにも、日々の取引をすべて把握して、正確に帳簿に記載していく必要があります。
ただ、会社の取引数は、会社の規模が大きくなればなるほど増えていきますし、小さな会社でも日々数十件のお金の移動があります。
これをすべて整理し、仕訳して帳簿に記載するのは至難の業です。
この重要かつ難易度の高いミッションを背負っているのが経理の皆さんです。

具体的には、年次決算という業務で納税に関する情報を整理していくことになります。
毎年経理の皆さんを見ている限り、年次決算はお祭り状態です。
もちろん祭りを運営する側という意味なので、楽しそうには見えません🙄

経理が日々行っている業務がどれだけ重要なものか、これだけでも十分にわかりますね。
法律上の義務を果たすためにも、必須の役割といえます。


(2)経営状況の把握


会計帳簿をつける目的2つ目は、自社の経営状況を把握するためです。

経営者の立場で考えた場合、自社の売上が今いくらで、経費がどれだけかかっていて、利益がどれほど出ているのかを把握できていない状態って、極めて危険な状態ですよね。
どんぶり勘定やお小遣い帳などで経営を管理しているなら、その会社は遅かれ早かれ経営に行き詰まります。
どんぶり勘定が許されるのは、小規模の事業主だけです(それでもかなり危ない)。

優れた経営者ほど、日々の取引を正確に記録し、現時点での売上、営業利益、経常利益などを正確に把握できる状態を望みます。
そして、それを実現するためには、優秀な経理が必要です。

具体的には、月次決算業務によって経営陣に情報をレポーティングしていきます。

優秀な経理がいない会社の場合、先月の数値がいつまで経っても出てきません
先月の数値が確定するのは、2ヶ月後などというケースもあります。
そのような会社では、正しい意思決定なんてできませんよね……。

でも、実際にはよくあることです。
アバウトな数値しかわからないまま、なんとなくで経営を行っている会社は意外と多いです。
数的根拠に基づいて意思決定を行っている会社の方が少ないと思います。

日々の経営活動や意思決定において、自社の毎月の数値を把握することは必要不可欠なのですが、優れた経理マンが少ないことに加えて、日々イレギュラーが発生するがゆえに、なかなかその理想を実現できずにいる会社が多いです。
別の視点で見ると、経理という職種がどれだけ重要なのかをわかっている経営者は、優れた経理を探すために時間とコストをかけます。
優秀な経理が一人いるだけで、意思決定のスピードと正確性が格段に上がるからです。

違う視点で見ると、もし経営者が経理の重要性に気づいていないのなら、その時点で就職先(転職先)としてその会社を避けた方が良いと思っています。
おそらく感覚だけで経営をしているタイプだと思うので、危ういと思います。


(3)開示


最後に3つ目の目的は、第三者に開示するためです。
上場企業の場合は、財務諸表を開示することが法律で義務付けられているので、当然に正確な帳簿を作成して、株主や利害関係者に開示しています。
※実際は上場企業の一部でも、優秀な経理マンを採用する(又は維持する)ことができず、開示書類が期限内に出せないということがたまに発生します。

そして、この第三者への開示は、未上場のベンチャーでも必要になります。
例えば、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を過去に実施している場合、出資契約などによって、定期的に財務諸表を開示する義務が課されていることが多いですし、銀行から融資を受けるときにも財務状態の開示が必要になります。
これらの開示をスムーズに行うためにも、優秀な経理が必要になってきます。

すべてのVCを知っているわけではないので、あまり大げさな事は言えませんが、おそらくまともな経理がいない会社に出資するVCは少ないと思います。
たとえシード期の投資であっても、早い段階で優秀な経理をメンバーに入れるように言われるでしょう🤔
よほど小規模な事業でもない限り、経理がいないと正確な開示資料を作るなんてほぼ不可能ですからね。

経理も完璧にできる経営者は少数ながら存在しますが、それでもすぐに事業が忙しくなって手が回らなくなります。
株主や利害関係者に適時に自己の経営成績を開示するためには、かなり早い段階から経理が必要になるものです。

また、ベンチャー企業といえでも、最近は早い段階から子会社を設立することが多いので、連結決算業務も必要になってきます。
日商簿記2級以上を保有している方がわかると思いますが、この連結決算が曲者なんですよね🤔
難しい上に大変です……
少なくとも私にはそう見えます。
連結決算を行える経営者はほとんどいないと思うので、やはり優秀な経理が必要になります。


以上より、経理がどれだけ重要な役割を担っているかがわかります。
私の見解では、経理がいないとそもそも経営なんてできないと思っています。
私の中では、CEO・COOと並んで極めて重要な役職だと考えています。
経理を蔑ろにしている企業は、遅かれ早かれ痛い目を見るものです😒


2.経理キャリアの類型

さて、そんな重要な職種である経理ですが、どのようなキャリアの類型があるのでしょうか。
そもそも会計は、事業の全てに絡んでくる重要な学問なので、すべてのキャリアパターンを網羅的に洗い出すことはできそうにありませんが、代表的なものをいくつか挙げて、それぞれ簡単に解説していこうと思います。

私が考える経理の代表的なキャリアは以下のとおりです。
なお、最初に入った企業がそこで、まだ転職はしていないということを前提にしています。

(1)超大手企業での経理キャリア
(2)税理士事務所での経理キャリア
(3)外資系での経理キャリア
(4)中堅~大手での経理キャリア
(5)ベンチャーなどの中小企業での経理キャリア

以下、簡単に説明させていただきます。


(1)超大手企業での経理キャリア


このキャリアは、私の中では最高のスタートでは?と思うキャリアです。
超大手企業の多くは、そもそも就職難易度が高く、有名な大学を出ていても極一部の人たちしか就職できないほどです。
そういう会社に運良く入ることができて、しかも経理という専門職に就けるのは運が良すぎるくらい良いです。

イメージとしては、UFJなどのメガバンクの経理、トヨタ・SONY・野村證券Panasonic・NTTなどの超有名大手企業の経理をイメージしてください。
転職市場でもほぼほぼ出会えないレアな人材です。


(2)税理士事務所での経理キャリア


このキャリアは、税理士事務所での経理代行業務(記帳代行サービス)からスタートするキャリアです。
事例としては意外と多いので、候補として挙げています。

税理士事務所以外でも、公認会計士らが開業している会計事務所なども含まれます。


(3)外資系での経理キャリア


このキャリアは結構珍しいですが、私の周りには比較的多くいるので候補に入れております。
外資系にも様々ありますが、例えばデロイトやPwCなどの外資コンサル、スターバックスやコストコなどの小売業、その他にもAMEX、P&G、ユニリーバなどの経理をイメージしてください。

新卒で入ってこれらの有名外資系企業の経理につける人は、宝くじでそこそこの額を引き当てるくらいの運を持ってます。


(4)中堅~大手での経理キャリア


このキャリアは、経理キャリアとしては比較的数が多い層だと思います。
中堅企業又は規模としては大手に準ずるけど、超大手企業ほどの知名度はないというクラスの会社で経理キャリアをスタートするパターンです。
超大手企業の子会社や関連会社などで経理を担当する場合が該当します。

経理になれる可能性が高い層なので、新卒から経理を狙いたいと思っている若手には狙い目の層です。


(5)ベンチャーなどの中小企業での経理キャリア


最後に、ベンチャーを含む中小企業で経理としてのキャリアをスタートさせるケースがあります。
日本の企業の99%は中小企業なので、全体で見ると最も多いパターンです。

ベンチャーや中小企業は常に人材不足で、経理や財務などの専門職を採用するのに苦労しています。
それゆえ、未経験でも運が良ければ経理になることができるコースです。
簿記2級に受かってすぐの段階でも経理になり得るので、若手にとってはチャンスが多いゾーンです。



3.各類型のメリット・デメリット

では、上記の類型ごとに、そのキャリアのメリット・デメリットを考えていきましょう


(1)超大手企業経理のメリデメ


超大手企業で経理キャリアを積むメリットは、正直たくさんあります。

まず福利厚生が充実しているので、非常に効率よくお金を稼げます。
また、後々転職を考えるときもその会社のネームバリューを味方につけることができるので「おそらく優秀な人だろう」と思ってもらいやすいです。
さらに、超大手企業の場合、事業規模が非常に大きいので、普通の経理では経験できないような規模感の会計処理を経験することができます。
場合によっては国際会計にも触れられるでしょうから、とても貴重な経験を積むことができるでしょう。


一方で、デメリットもあります。

まず、超大手企業では、社員の長期的なキャリアを見据えた制度設計がなされていることが多いため、まずもって辞められなくなります(辞める気が起きない)。
待遇面でその会社を超えられる会社なんて数える程度しかないでしょうし、長くいればそれだけメリットも多くなっていくので、転職という選択肢が無くなっていきます。
良い意味でも悪い意味でも、牙が抜かれていきます。

また、その会社の制度に依存するところもありますが、多くの超大手企業では、内部統制がしっかりと構築し終わっていて、毎年そこまで大きな変化はないので、業務の細分化やルーチンワークが確立されています。
極論を言えば、経理だけでも相当な数のスタッフがいるので、新卒でも3~6ヶ月程度で仕事ができるような仕組みがすでに整っていて、細分化された仕事をこなしていけばそれで良いという状態が出来上がっていることが多いです。

これは経営者視点で見ると非常に素晴らしいことだと思いますし、コストを抑えられてもいます。
しかし、経理専門職として見ると、整い過ぎている組織というのは、学びが少なくなりやすいのです🤔
もちろん超大手企業の場合、各種研修制度が充実しているので、擬似的な経験を積もうと思えば積めるのですが、当事者として危機的状況を経験することや難易度の高い業務を早期に経験することはあまり期待できません。

新卒でもできる仕事ということは、それだけ簡単な仕事であることを意味しますから、そのような仕事を続けていても、技能は磨かれていかないことが多いです。
また、細分化された仕事をこなすだけでは、事業全体が見えづらいので、経理としての本当の価値は高まっていきません。

特定の業務をこなすだけの作業員としては有能になっていくと思いますが、経営全体を見て判断できるような経営人材にはなりづらいのです。
もし経営全体を見るような重要なポジションに就きたいのであれば、優秀な知能を持った社員が多くいる中で順調に出世していかないといけないので、競争が激しく時間もかかります。

私の知人にもう10年以上超大手企業の経理を続けている人がいますが、特定分野の業務を続けてきただけなので、それ以外の業務の経験がほとんどありません。
ゆえに、事業会社の経理のプロとは呼べないレベルにいます。
彼が今転職した場合、おそらく採用された後に非常に困ったことになるでしょう。

すべての超大手企業でそういう事態に陥るわけではありませんが、組織が大きいとそういうリスクも出てきます。
※多くの超大手企業では、本人の希望次第でジョブローテーションをしてくれるので、ある程度このリスクはコントロール可能


(2)税理士事務所のメリデメ


税理士事務所(主に記帳代行と仮定する)に勤める最大のメリットは、様々な企業の経理実務と確定申告書作成の経験を積めるという点です。

これは極めて有益な経験で、どこの事業会社にいってもすぐに活用できるスキルが身につきます。
記帳代行によって得た仕訳スキルや確定申告書の作成スキルはとても重宝するはずなので、税理士事務所で数年間経験を積めば、おそらくどこの中小企業にいっても経理としては困らないでしょう。

そのため、キャリアのスタートが税理士事務所というのは、とても良いスタートだと思いますし、若手の皆さんにもオススメしたいコースです。

一方で、デメリットもいくつかあります。

まず一点目として、税理士事務所の顧客の多くが、未上場の中小企業であるという点です。
その場合、経理実務が税務会計にかなり偏っていきます。
未上場の中小企業には財務諸表の開示義務がないため、確定申告書を作成するためだけの経理処理
になりやすいので、税務会計よりの会計処理能力だけが磨かれていきます。
そのため、PL科目に注力し過ぎて、BS科目の正確性が犠牲になることが多いので注意が必要です。

もし、先々上場企業や大手企業での経理を志しているのであれば、財務会計による経理処理(日本会計基準又は国際会計基準に準拠した処理)を身に着けておかないといけないので、別途勉強と経験が必要になってきます。
そのため、先々大手や上場企業での経理を目指すのであれば、10年も20年も税理士事務所で記帳代行だけをやっていくというキャリアはあまり得策ではないと思います。
5年程度で目処にして、キャリアアップを図った方が良いでしょう。
なお、先々税理士になろうと思っているのであれば、税理士事務所で長く経験を積むのは全く問題ないと思います。

次に、記帳代行はとても飽きやすいというデメリットもあります。

仕訳作業が主な仕事になってくるので、毎日代わり映えしない日々を過ごすことになります。
事務所の規模にもよりますが、多くの税理士事務所の顧客は中小企業なので、難しい会計処理もあまり出てきません。
器用な人なら半年もすれば、ほぼすべての会計処理を記憶できてしまうでしょうから、すぐに飽きます。
安定的な単純作業が好きな人ならば、むしろメリットだと思いますが、冒険心が強い人とか、成長意欲が強い人にとっては少し辛いものがあるかもしれません。

さらに、比較的報酬が安く、かつ上がりにくいというデメリットもあります。

税理士事務所の多くは個人事務所又は小規模法人なので、そこまで財源に恵まれているわけではありません。
むしろ、厳しい市場環境の中で、頑張って経営を行っていることの方が多いと思います。
そんな中で、税理士資格保有者でもない記帳代行の担当者や事務所内の従業員に、高い報酬を出せるかというと……難しいでしょう。
大手企業の経理担当者と比べると、比較的安い報酬になることも多いので、長く勤めるという視点で見ると、若干難しいところがあるかもしれません。

また、税理士事務所や会計事務所のボスとの相性も論点となり得ます。

もしボスと馬が合わないなら、長く働くことは難しいかもしれません。
逆に相性が良ければ、非常に働きやすい職場になると思います。


(3)外資系経理のメリデメ


外資系企業の経理の最大のメリットは、日系企業と比べて報酬が高いことが多いという点でしょう。

ほぼ同じレベルの業務だとしても、年収で100万円~200万円程度の差が出ます。
もちろん、外資系なのに中身は日系という企業もありますが、大体は外資系の方が年収が高いです。

また、日系企業ではなかなか積めない経験が積めるというのも大きな魅力です。
外資系企業の多くでは、本社機能が海外にあります。
それゆえ、本社とのやり取りは原則として英語でなされ、かつ、国際会計基準に則った会計処理をしていくことになります。
これらは極めて市場価値の高い経験でして、後々転職をする際にも高く評価してもらえることでしょう。


一方でデメリットについて考えてみると、あまり思い当たりません🤔

強いて挙げるとすれば、日系企業に戻りづらくなるという点と、クビになる可能性が日系企業よりは高いという点だと思います。

まず、日系企業に戻りづらくなるという点については、経済的・心理的な理由に基づくものが多いです。
外資系は日系と比べると自由度が高い働き方を認めていることが多く、報酬も高いです。
そして、外国人と関わる時間も比較的長いので、海外への憧れが強い人や外国人とのコミュニケーションが好きな人にとっては居心地が良い場所です。

そのような恵まれた環境で長く働くと、日系企業に行こうという気が起こらなくなると思います。
現に私の知人らはもう半分外国人です。
「日系企業に戻るくらいならアメリカに移住する」と言っているので、よほど居心地が良いのだろうと思います。
そう考えると、むしろメリットと言っても良いのかもしれないですね。

次に、クビになる可能性が日系企業よりは高いという点についてですが、これは外資系全般に言えることです。
日本では、労働基準法や労働契約法があるので、簡単にはクビにできません。
しかし、基本的に海外では労働者を過度に保護するような法律は無いので、労働契約の解除は原則自由です。
アメリカなんて特にそうで、簡単にクビにできます。

そのため、日本でも比較的頻繁に解雇又は退職勧奨が行われていますし、実績が出せない人については、自主退職してほしいと言われることもよくあります。
法的な話でいうと、外資系企業であっても日本では簡単にはクビにできませんが、外資系に勤めるのであれば、多くの人が転職を前提に働いているので、退職や解雇は日系企業よりは起こりやすいものだと認識しておいた方が良いでしょう。


(4)中堅~大手経理のメリデメ


中堅企業又は一般的な大手日系企業での経理は、日本では比較的多い事例です。

このキャリアのメリットとしては、まず安定が挙げられると思います。
超大手企業並とは言いませんが、中小企業と比べると遥かに安定した身分が得られます。
また、このクラスの企業の場合、上場していることも多いですから、上場企業で働いているというステータスも得られます。
これは、住宅ローンを借りるときなどにも有利に働くことです。

そして、報酬もある程度もらえます
外資系企業や超大手企業と比べると若干見劣りすると思いますが、それでも平均よりは高い報酬になると思われます。
さらに、社内の制度や福利厚生もある程度整っていることが多いので、長く働くには適した場所だと思います。


一方でデメリットとしては、差別化が図りづらいという点がまず挙げられます。

一生その会社で働くのであれば全く問題のないデメリットではあるのですが、いざ転職市場に出ないといけなくなったときに、これといって強い特徴がないキャリアになりやすいです。
けして悪くはないのですが、決め手にかけるという状況になりやすいので、もし転職をするのであれば、強めの資格で能力を証明するか、経験して得た実務スキルを具体的に記載するなどしておくほうが良いと思います。

ただ、いきなりCFOや部長クラスの役職を狙わなければ、企業としては最も欲しい層(ミドル層)の人材だと思うので、比較的転職自体はしやすい層でもあります。

デメリット2つ目としては、平均よりちょっと上の待遇であるがゆえに、転職への踏ん切りがつかないことが多い点です。
今のままで良いのかという漠然とした不安を抱えつつも、ある程度安定した身分であるがゆえにそこまで強い危機感を抱けず、何年も悩んで結局転職をするというリスクを取れないというケースが多いかなと思います。

気持ちはよく分かるのですが、一歩間違うと危険なキャリアとなり得ます。
今いる会社が順調に発展していき、自分自身も順調に出世していけるのであれば全く問題ないのですが、例えば業績が傾いてリストラが開始されたり、出世街道から外れてしまって、そのときには転職をするには年齢が行き過ぎているという状況に陥ったりした場合……
かなり厳しい状況に追いやられるかもしれません。
そうならないようにするためにも、キャリアについて日頃から考えておくべきだと思います。


(5)ベンチャーなどの中小企業経理のメリデメ


最後に、ベンチャーなどの中小企業の経理について考えていきましょう。

まずメリットとしては、幅広い経験が積めるという点があると思います。
特にベンチャー企業では、経理のメンバーが少ないので、経理作業のほぼ全てを少人数(下手すると1人)で処理していかないといけません。

ベンチャーの経理を担当していると、1年で大手の3~5年分の経験値を積めてしまうこともよくあることです(激務になることも多い)。
場合によっては、経理がCFOの役割の一部やM&Aの担当などを兼務したり、法務の一部もこなしたりします。

私の知人にベンチャーの経理を5年ほど勤めていた方がいるのですが、彼は経理・財務に留まらず、法務もIRも労務も総務も人事も全部一人でできます。
おそらくどこの会社に行っても重宝されるでしょうし、わからないことの方が少ないと思うので、一生仕事に困らない人生を送れると思います。

ベンチャーにはそういうスーパーマンが時々いるのですが、私の知る限りだと元経理の人が圧倒的に多いです。
経理の役割を果たすためには、会社全体を把握する必要があるため、短期間でキーマンになりやすいのだろうと思います。


一方で、大きめのデメリットもあります。

まず、ベンチャーの場合は、ほぼ無名の中小企業と同等です。
したがって、キャリアとして箔が付きません
そのベンチャー企業が有名になって行って、IPOを果たすまでに至ったら、IPO実務の経験者として市場価値が跳ね上がるのですが、IPOもできず、鳴かず飛ばずで終わった場合、キャリア的にはあまりプラスにはなりません。
様々な職種の経験値が手に入る可能性はあるのですが、それを得たとしても、能力を証明する手段が乏しいので、若干大きめのリスクを背負うことになります。

また、ベンチャー及び中小企業の多くは、あまり売上高も高くないため、利益もその分小さいことが多いです。
それゆえ、経営は不安定で、数年後にどうなっているかはわかりません
それに、スタートアップのほとんどでは、資金そのものが足りていませんので、日々資金繰りに悩まされることになります。
順調に資金調達ができればいいですが、大抵の会社は資金調達に苦労しているので、経理はその資金調達作業の中心的な役割を担うことになると思います。
そのため、なかなかハードなキャリアになると思います。

さらに、中小企業であるがゆえに、給与面での待遇も一般的には良くありません。
最近のベンチャーの一部では、大手企業に引けを取らないほどの待遇で専門職人材を採用しているところもあるのですが、少数派です。
それだけの余裕がある会社の方が少ないと思います。

そのため、ベンチャーなどの中小企業でのキャリアを積む場合は、その会社の経営者の理念に強く共感したとか、短期間で一気に成長できる環境があるとか、IPOをする蓋然性が極めて高いなどの事情が必要になってくるだろうと思います。


4.経理キャリアの検討

上述のとおり、経理のキャリアの類型とそのメリデメはある程度把握できました。
では、将来的にどのようなキャリアを描けば良いでしょうか🤔

私が思うに、大きく分けて以下の2つのパターンがあると思っています。

(1)ずっと経理を続ける
(2)経理以外の職種を目指す

それぞれのキャリアについて、検討していきましょう。


(1)ずっと経理を続ける場合


ずっと経理を続ける場合、最終的にどのレベルの会社で経理をやりたいのかを明確にしておいた方が良いと思います。

例えば、最終的には超大手企業や大手企業の経理として安定した身分を得たいと思うのであれば、できる限り新卒でそういう大手企業に入ることが望ましいです。

中途で入るのであれば、それ相応の実力や資格を身に着けて、キャリアを形成していく必要があります。
20代の半ば~30代半ばまでの間に転職をして、大手企業でのポジションを獲得したいところです。
それを実現するためにも、ヘッドハンティング系の転職サイト(ビズリーチなど)に登録しておくべきだと思います。
チャンスがいつ来るかわからないので、いつでも行けるように準備しておきましょう!

そして、資格もどんどん取得していきましょう。
公認会計士、税理士、日商簿記1級や全経上級、米国公認会計士、米国公認管理会計士、米国税理士、MBAなどを検討しましょう。

また例えば、ベンチャーや中小企業で、なんでもできるオールラウンダー経理になりたいと思うのであれば、早い段階でスタートアップやベンチャーへの転職を検討した方が良いと思います。
勢いのあるスタートアップに入ると、十中八九激務になると思いますが、経験値はすぐに上がりますし、おそらくやりたいと言えば何でもやらせてもらえると思います。
そもそもスタートアップには専門職人材が不足しがちなので、他の職種の業務でも任せてもらえる可能性が高いです。
経理は、経営全体を見られるようにならないといけないので、他の管理部門職種の仕事も経験しておいた方が良いです。

そして、もしスタートアップやベンチャーへの転職をするなら、20代~30代のうちにするべきです。
御存知の通り、スタートアップやベンチャーの平均年齢は20代半ばくらいであることが多く、非常に若い組織です。
その中に40代で入るのはなかなか勇気がいりますし、若者文化に馴染めない可能性が非常に高くなります。
現に、私の知り合いが40代でピチピチのベンチャーに入りましたが、1年保たずに転職していました😣
年齢も主原因の一つなのですが、大手企業で長年働いていた方なので、全く異なる文化に馴染めなかったようです。

そういう意味でも、自分自身に柔軟性がある年齢のうちに、スタートアップ・ベンチャーへ転職してしまった方が良いです。
自由度の高い働き方に馴染むなら、早い方が良いでしょう。
なお、スタートアップやベンチャーに転職するなら、ベンチャー業界の経営管理部門の求人に特化したSYNCA(シンカ)を活用するのが効果的だと思います。
特に経理・財務の職種に強いサイトなので、最適だと思います。



(2)経理以外の職種を目指す場合


続いて、経理以外の職種を目指す場合を考えていきましょう。
経理の素晴らしいところは、将来様々な職種に応用できるスキルが身につくという点にあります!
汎用性の高さでいえば、おそらく全職種の中でもトップクラスでしょう。

まず、財務との親和性が極めて高いので、経理から財務にジョブチェンジする人は比較的多く存在します。
このときに重要な点は、経理と財務で考え方が大きく異なる点です。

釈迦に説法だと思いますが、経理は過去のお金の情報を扱い、財務は未来のお金の情報を扱います。
そのため、発想の転換又は拡張が必要になってきますし、ファイナンス理論も学ぶ必要もあります。
そのため、できれば経理を続けながらファイナンスに関する知識を身に着けておいた方が良いでしょう。
例えば、MBAのファイナンス専攻に進んで学位を取得するなどして、知識面を補強しておきましょう。


次に、経理は経営企画やM&Aコンサルなどにも親和性が高く、経理から経営企画・M&Aコンサルにジョブチェンジする事例も多く存在します。
この場合も、財務のときと同様に経営戦略やファイナンスに関する知識が必須になってくるので、MBAが有効だと思います。
もしくは、実務経験重視でいきなりコンサル企業に飛び込んでしまうというのもありです。
最初は苦労はすると思いますが、手っ取り早く知識と実務経験を得られます。

他にも、労務やIR、内部監査や法務などにもジョブチェンジ可能です。
この場合も、それぞれの職種に関する知識の補強が必要だと思いますので、国家資格等の保有で補完しておきましょう!


あと、私のオススメとしては、会計・財務コンサルとして働くことや、副業をすることを提案したいです。
上述のとおり、経理経験というものは、様々な仕事にジョブチェンジしやすいという優れた汎用性を持っています。
しかし、他職種の業務を実際にやってみないことには適性もわかりませんし、楽しいと感じられるかもわかりません。

そこで、会計・財務コンサルとして様々な会社に入り込んで内部を見たり、副業で他職種の業務又は他社の難易度の高い案件をいくつかチームでこなすことで、経験値を貯めるべきだと思うのです。
そうやって様々な案件に関わることで、自分の将来像が見えてくると思います。
WARCにもそういうメンバーが多くいますし、副業案件も多数扱っています。

一例として以下のような募集を行っています。

【M&Aコンサル】

【会計・財務コンサル】

【主に会計分野の副業マッチングプラットフォーム】

↑については、現在では公認会計士に限らず、経理経験者も登録可能です!


いずれにしても、経理から他職種へのジョブチェンジは比較的容易なので、経理は非常に優れた職種です😍👍



おわりに

ということで、今回は経理のキャリアについて少し掘り下げて考えてみました。

経理は経営管理部門の基礎を成す極めて重要な職種であり、汎用性も高い最強の職種の一つです。
キャリアの選択肢の幅がとても広いので、いろいろと悩むだろうと思いますが、それだけ将来性があるということでもあるので、是非楽しんで選んでください。

私で良ければいつでも相談に乗りますし、必要であれば有益そうな人を紹介したりしますので、気軽にご連絡ください。

では、また次回!


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著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
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