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「最恐のカリスマ」を見る

「最恐のカリスマ」を見る

「回路」と「カリスマ」と役所広司

過日、黒沢清監督の映画「回路」(二〇〇一年)がBS松竹東急で放送されていたので、録画して視聴した。最近は、テレビ番組をそれが放送されている時間帯にそのまま見るということはとても少なくなった。今春で、いつも土曜日の夜に見ていた「ブラタモリ」が終わってしまうらしい。これによって、さらにまたリアルタイムの視聴の回数は減ることになるだろう。基本的に見たくなるような番組が

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いとくず(三)

いとくず(三)

20240315

余談ですが。先日、モーニング娘。24の北川莉央さんのインスタグラムに「実は先週、1人パリ旅行へ行ってきました」という投稿があり、軽く強い衝撃を受けた。黄昏はじめたパリの空をバックにしたエッフェル塔をバックにした北川さんの写真が、実に普通に普通の旅行写真でとてもいい。一人旅行なので通りすがりの現地の人に写真を撮るのを頼んだのだという。なんかもう、やることなすことすべてがかっこいい

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2024年のうた (四月)

2024年のうた (四月)

2024年のうた四月

かたむけないで声をきく明恵の右耳フィンセントの左耳

自然化をされる以前の環境の自然のままの自然をおもう

生きてればきっといいことあるよっていっておくれよ左官長兵衛

あちこちにぶつかりまくりよろけたりへこへこしたりへらへらしてる

近づけば近づくほどに血の気が引いてゆくようで春にとまどう

音楽をきいても耳に入らない食べても味がしないみたいに

ゆらゆらと揺らいでひとり

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2024年のうた 第一期 冬・春

2024年のうた 第一期 冬・春

2024年のうた第一期 冬・春

新年やまたふるさとが遠くなる二〇世紀は記憶のかなた

元日のポストはまるでオルゴールどこであけてもあけおめことよろ

かためを買った歯ブラシがあんまりかたくなかったのこれも時代か

力尽き年を越せずに一一時一一分で止まった時計

ごま煎餅をもらったひととあげたひと因縁のあるあの二人

つぎつぎと地震津波の情報が画面のうえで白くまたたく

百万の顔なき顔の虚ろな笑顔

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いとくず(二)

いとくず(二)

20240202

余談ですが。指名手配犯の桐島聡を名乗る男が病院で病死をしたニュースに接して、やはりなにかいろいろな思いをちぢに抱かされてしまっている。その桐島を名乗る男の世を忍ぶ仮のすがた、内田洋として過ごした五〇年にも及ぶ年月のことを考えると、とても複雑な思いにとらわれる。さらに、その間のうっちーこと内田洋の生活ぶりなどが事件の報道を通じて少しずつ明らかになってゆくにつれて、本当にさまざまな

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読まずに死ねるか(令和五年秋の陣)

読まずに死ねるか(令和五年秋の陣)

まつりに参加した。もうかなり久しぶりのことになるのではないか、秋のまつりに参加するのは。前に行ったのはコロナの前だったと思うから、おそらく四年か五年ぶりぐらいだろうか。今回のまつりの開催期間は、二〇二三年一一月一三日から二一日までの九日間。春のまつりにくらべると、ちょっとだけ期間は短かったような気もする。事前の予定では期間中に二回ほどまつりに参加しようと考えていたのだが、いろいろあって実際に足を運

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いとくず(一)

いとくず(一)

20231218

毎日ずっと休むことなく短歌を詠んで詠んで詠みつづけて六〇〇日が経ちました。六〇〇から三六五をひくと二三五ですので、一年と二三五日である。「やっと」でも「もう」でもなく、ただ目の前に六〇〇という数字があるなあという感じだけしかしないというのが正直なところだ。ただし、ただ何もすることがない代わり映えのない毎日のなかで毎日毎日(たぶん)違う短歌をいくつもいくつも詠むということは、これ

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フリクション「ライヴ・イン・ローマ」

フリクション「ライヴ・イン・ローマ」

聴いた瞬間に受けた衝撃の大きさという点でいうならば、もしかすると人生のうちで十指のうちに入るかもしれないくらいのものがあった。それくらいに最初の一音めを耳にした時点で、いきなりずどんときた(ザ・ジャムのファースト・アルバムはがつんだったが、これはずどんであった)。一〇代のあのころに時間を限定するならば、このライヴ・アルバムは間違いなくとてもとても重大な意味をもつ一枚であった。貸レコード店のG7から

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2023年のうた 第四期 秋・冬

2023年のうた 第四期 秋・冬

2023年のうた第四期 秋・冬

代々木の地下のミラーボールとスモークマシン「ラヴザライフユーリヴ」

シベリウス交響曲の四番が吹き抜けてったあとの静寂

自由民主の名のもとに塗り潰されて忌避された未来をおもう

これやこのさびしさこそはせつなけれそれともしらずながるる涙

雨の降る窓の外から午後四時になる帰りのチャイムあきはきぬ

銅鑼の音が宵と夜更けと明け方の情緒にあわせ響きをかえる

星はお

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ナンバーレス・ランドを聞く

ナンバーレス・ランドを聞く

「実在と無数」(ナンバーレス・ランド考)

なんとなくフレーズやメロディの断片を思い出して、しばらくそれが頭からはなれなくなり、あとでユーチューブで聴いてみようかなと思う曲というのが、毎日の生活の中でぽこっと出現することがある。しかし、ほとんどはそこまで止まりであり、しばらくすると思い出したことすらすっかり忘れてしまっていたりする。だが、たまには思い出したことを忘れずに覚えていたりして、あとで本当

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「雲霧仁左衛門6」について(+X)

「雲霧仁左衛門6」について(+X)

BS時代劇「雲霧仁左衛門6」が放送された。二〇二三年八月二五日から一〇月一三日までの全八話。第六シリーズの舞台は、江戸を遠く離れて古の都、京都である。表面的には徹底的にドライであることを信条とする雲霧仁左衛門(とその一党)の無駄のないてきぱきとした仕事ぶりと全編に飛び交うまったりとした京ことばの絶妙に食い合わせの悪い感じが、何とも新鮮な感じがしておもしろかった。本シリーズの冒頭には、昼の日向の日差

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「短歌について」について

「短歌について」について

先日、ひょんなことから本の整理をしていたら、うずたかく積み重なった本の山の中腹あたりから「西田幾多郎随筆集」が出てきた。この本はしばらく見ていなかったし、その存在すらちょっと忘れかけていたので、何だか申し訳なく思って、手にとって頁をひらいてみた。タイトルは随筆集であるが、実際は随筆だけでなく詩や短歌など(そのほかに日記や書簡など)も収められていたことをふと思い出して、ちらっとどんなものだったのか見

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2023年のうた 第三期 夏・秋

2023年のうた 第三期 夏・秋

2023年のうた第三期 夏・秋

終わらないこのレコードが終わらないヒステリックな侯爵夫人

なんかこう打ったその場で歩きだすホームランとか打ちたいきぶん

じょぼじょぼと高いとこから低いとこよごれはすべて海にじゃぼじゃぼ

びきびきと破線にそってふた月分のカレンダーめくりとる午後

まだ青い葉をめきめきとのばしてる稲が穂をだしふくむ文月

文月のおのずからふる雨のついたち神祗釋教戀無常

むしむ

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2023年のうた 第二期 春・夏

2023年のうた 第二期 春・夏

2023年のうた第二期 春・夏

ぼんやりと物思いする万愚節つみなき嘘はありやなしやと

四月馬鹿りちぎに用意した嘘を噴かすツイート眺めたりして

駅前で信号待ちをしていると頭のうえにまた飛行船

駅前のスクランブルする交差点見上げる先をビルがさえぎる

その先の道が見えてる春ならば散る花ですら目に楽しかろ

ひらひらり書いて消してのその後ろ桜吹雪がとめどなくふる

あの頃のリアルスティックどこい

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