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家具の物語

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工房へ届く修復される家具たちの物語。同じものがひとつもないアンティーク家具の世界は深い!
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#バルセロナ生活

ピアノが欲しい

ピアノが欲しい

家具工房をやってるといろんなオファーや問い合わせが入ります。
家具と関係あるものから
関連あるかな〜、みたいな話、例えば
引越してきた先のマンションに家具がいっぱいあるんだけど買いとってもらえない?とか

そして全然関係ない事柄まで。
駐車場売りに出してるんだけど興味ない?とか。笑

今回は関係あるようなないような話からスタート。
一年くらい前の話なんだけど。
古いピアノを電子ピアノに買い換えるん

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製造されてないものを製造する職業

製造されてないものを製造する職業

今回のお題はこちらのカクテルバー・カート
▫️壊れてるタイヤのゴム替え
▫️メッキ仕上げを綺麗にする
タイヤゴム替えって言われてもね、
修復で大変なのは、何しろ当時のパーツはもう作られていないのですよ。

まだ木材のパーツなら
種類やサイズによってなかなか難関ではあるものの、切ったり彫ったりしてなんとか出来ることがほとんどですが
これが金属やゴム製、プラスチック製だと
もうどうしようもない。

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籐を編み続けてみたら

籐を編み続けてみたら

ひと通り籐の編み工程を学んだので、さっそく仕上げた2脚の椅子を店頭に並べました。
こういう家具も扱ってますよってことで。
ビフォーアフターを表示して分かりやすくね。
まだまだ学び中なので、そこんとこご理解頂いた上で30%オフキャンペーンスタートです。

すると
その日の午後、1人のおばあちゃんが立ち止まって、
猛烈に血圧あがっちゃった!って言う顔でこっちをみていました。
目がキラキラしてました。

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籐でトゥネット・編み始める歓び

籐でトゥネット・編み始める歓び

籐で編まれた椅子の座面、時には背もたれや家具のドアにも使われますが。
こちらを手編みする技術を習得すべく
アカデミーの籐技術コースを申し込みました。

技術を学ぶことになったいきさつはこちら↓

これまで修復の技術はアカデミーの短期コースには行ったことがあるけれど、
ほぼすべて師匠・フリアの工房で実際のオーダーを通して学んで来ました。
大学のような場所で学位を出されるような職業ではないし
実際のニ

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トウのトゥネットに挑戦!

トウのトゥネットに挑戦!

曲木の椅子メーカー・トーネットの椅子は籐の座面がほとんどですが、これ痛むと直すの大変です。

曲木技術の椅子、トーネットやJJ・Kornの詳しいお話はこちら。

手作業で直せる人がどんどん減っているためです。
時間も手間もかかる作業なので経済的に割に合わない仕事になりがち。

最近では既に編み込まれて布のようになって売られているものを太めの籐ではめ込む形のものが主流です。でも本来オリジナルのスタイ

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遂にギターのリノベに挑戦

遂にギターのリノベに挑戦

これは確か去年の年末の話。
最近あまりにも仕事の事を書いてないのでまとめてアップしておきます。

リノベーション途中で座礁したギターを
「何してもいいから!センスを信じてるから!」って友達に託されました。
それって猛烈にプレッシャーなんですけど😂

でも同時にめっちゃ燃えます🔥

工房の向かいのマンションの中庭のお手入れに来る庭師・エマヌエル。
同い年の彼はファンクミュージックを奏でるバンドマ

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停電したシャッター

停電したシャッター

久しぶりに工房日記らしい話です。

クリスマス休暇が始まった初日。
工房へ行くと
仕事熱心な角の肉屋のおっちゃんが外でタバコ吸ってる。
手前のカフェもなんか変。
バイク屋のチャビィが
「電気ないよ」って

ええぇ!?

停電!?

工房の前まで行くと隣のカーテン屋のおじさんがトウセンボして
「通行料金いただきます」
とか、また古典芸能なギャグをかましてきた。
「停電してるの?」って聞くと
「停電、

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モデルニスモ・マダム

モデルニスモ・マダム

新しいお客様が来る時の一番嬉しいきっかけは、すでにお仕事頂いたお客様からのお薦めという口コミ。

今回も工房オープン当時からお付き合いのあるお客様・ラモンからの紹介です。

ラモンとの馴れ初めはこちら↓

新しいお客様はラモンの相方、アルベルトの幼馴染のお客様・クリスティーナ。

幼稚園の先生をしているとっても朗らかな人です。

クリスティーナのおじいさんの家だった大きなお家を親戚で分担してリフォ

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自分に修復プレゼント

自分に修復プレゼント

このタイプのロッキングチェア
昔から好きで
いつか自分用に欲しかった‼️
そしてついにゲット✌🏼

何脚かすでに修復したことあるんですけど
自分だったらこんな布張るな〜とか
木の仕上げはこうしたいな〜とか
思っていたのが遂にできるぞ✌🏼

暗かった色を明るいトーンに
布張りは北欧スタイルなテキスタイルを張ろうと思っていたけれど、
たまたま手元にあった素材がビビっと来たので試してみました。
好き

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ツートン家具、納戸からよみがえる

ツートン家具、納戸からよみがえる

家にあるのは知っていたけどいつしか忘れられかけていた家具。そんな家具ありませんか?

こちらはお客様の納戸にしまってあった、途中まで修復仕掛けたけどいつしか忘れられていた家具です。無垢材で重さもあってしっかりと作られた立派なものですが中途な状態なので使えないまま。
乾き切って落ちかけたダークな仕上げがますます悲しげです。

幸運にも持ち主が我が工房のシンボルであるツインカラーのビッグキャビネットを

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修復の師匠・フリア

修復の師匠・フリア

自分の工房をスタートして3年が経ちました。
今日は原点からの振り返りとして修復の世界への出会いを。
元々は職業訓練学校の大工コースからスタートしたんですが

その辺りの流れはこちら↓

職業訓練学校のコースでは2年目の後半、実習研修がカリキュラムに入っています。学校が斡旋してくれる木工関係の職場で半年ほど研修をします。
が、
学校から紹介される先はたいていが、出来合いの建具を組み立てに行ったり合板

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2m20cm、150歳、工房史上最大サイズ 

2m20cm、150歳、工房史上最大サイズ 

市の遺産になっているお家の家具修復の回顧録です。
このお家の一番の年長者はこちらの記事にも買いた150年越の書斎キャビネットでした。

詳しいお話はこちら。

が、

もうひとつ、多少パーツが足りていないものの同じくらいの年長者がいます。
それが高さ2m20cmのこちら。

すでに何回も手を加えられた様子が見られます。
虫喰い処理はもう数回されているみたいだし(穴を埋めてあるパテの色にいろいろ違い

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ペンキの種類と仕上げのコツもまとめてみました。

ペンキの種類と仕上げのコツもまとめてみました。

もともとは修業時代から家具は修復するものとして学んできたんですが

ペイントをするかどうか修復屋のジレンマについてはこちら↓

近年、ヴィンテージブームのようなものが始まって
(このヴィンテージっていう言葉、マーケティング的に便利なんだよね。笑)
シャビー、プロバンスという南仏の田舎のおうちにあるようなスタイルに仕上げるというのが大流行し始めました。

それに伴い、かの有名なチョークペイント、をは

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修復屋のジレンマ。ペイント?修理?修復?

修復屋のジレンマ。ペイント?修理?修復?

家具修理工房で修業時代、
師匠フリアはいつも家具のペイントについてケチョンケチョンに言ってました。
あんなことをしたら木目が日の目を見れなくなって台無しだわ!と。
当時は古い家具に対してペイントするというのがマイナーな、というか粗々しい解決策という定義が普通でした。
今ほどペンキの種類もなかったし、
古い家具そのものに人々は興味を示してなかったんです。
もちろん一部のアンティーク、高級家具を持って

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