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フリーライターはビジネス書を読まない

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#編プロ

フリーライターはビジネス書を読まない(1)

フリーライターはビジネス書を読まない(1)

インターネットが普及する前、パソコンでテキストをやり取りできる通信サービスはパソコン通信だった。
「ホスト」と呼ばれるサービス運営業者のホストコンピューターに、電話回線でアクセスする。

アクセスしてしまえば、中身は、誰もが書き込める掲示板のほか、同じ趣味をもつ者どうしが集まるフォーラム、仲間うちだけでテキストをやり取りしたり、チャットもできた。

今のSNSの原型になったサービスは当時からだいた

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フリーライターはビジネス書を読まない(24)

フリーライターはビジネス書を読まない(24)

被災地の取材に行ってくれ阪神淡路大震災の発生から2カ月ほど過ぎた3月初め、ハガキのDMに返事をくれた制作会社から、被災地を取材してほしいというオファーが来た。
取材に行くはずだったライターの都合が合わなくなったため、急遽、私に声がかかったのだった。

取材する内容を打ち合わせるため、先方の事務所を訪ねた。
記事を出す媒体は、東京にある大手出版社の月刊誌だった。
災害の記事でよくあるような「大変なこ

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フリーライターはビジネス書を読まない(23)

フリーライターはビジネス書を読まない(23)

明日食べる米がないバブル経済が弾けても、東京の編プロからはビジネス書の原稿依頼をもらっていた。ただ、依頼される本のテーマが明らかに変わった。
証券取引や金融の解説をする本がほぼゼロになり、暮らしの中で役立つ法律知識とか新社会人のためのマナーブックのような、生活にすぐ役立つ実用的なテーマへとシフトしていた。

そこで困ったことが起こる。
私をプロのライターにしてくれた編プロは、もともと経済系のビジネ

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フリーライターはビジネス書を読まない(17)

フリーライターはビジネス書を読まない(17)

休日のATMコーナーを動かしているのは――

警備会社の正社員を辞めるとき、支社長から頼まれた仕事(7話参照)も、週に1回やっていた。

銀行の土曜日営業がなくなって土日が休みになったが、ATMコーナーだけは休日でも稼働させていた。
私が携わるのは銀行の「カードセンター」という部署に詰めて、名古屋以西の各支店ATMに設置されているオートホーンの応対だった。

ある日の、業務の様子である。

土曜日

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フリーライターはビジネス書を読まない(16)

フリーライターはビジネス書を読まない(16)

突然の打ち切り話は前回から2カ月後に飛ぶ。
初めて書いたインタビュー原稿は、当然というべきか、修正を指示された。
「本人の話しことばがそのまま出ているから、もうちょっと客観的に書いてください」というていどで、構成と展開はこれでOKということだった。
その後、インタビュー音声も2回受け取って、1冊分の原稿が出来上がった。

文章に書いたらたった4行が、この2カ月間の出来事のすべてだった。

ある日、

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フリーライターはビジネス書を読まない(5)

フリーライターはビジネス書を読まない(5)

ビジネス書のつくりかた

ここでちょっと捕捉。

安いノート型ワープロとモデムを購入してパソコン通信を始めたあと、ライターのグループに参加させてもらいながら、プロのライターになる道を模索していた。

そんな折、東京にある編プロの社長から声をかけてもらい、ビジネス書の5項目を書かせてもらうことになった。

じつはパソコン通信を始めてから編プロの社長に声をかけてもらうまで、ざっと2年近くの歳月が流れて

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フリーライターはビジネス書を読まない(7)

フリーライターはビジネス書を読まない(7)

サラリーマンを辞める

敢えて社名は伏せる。
日本資本最大手の警備会社といえば「あぁ、あそこか」と察しが付く人は多いはず。

1990年の初冬、勤務先のホテル警備隊で夜勤を終えた私は、隊長が出勤してくるのを待って、
「ちょっと、ご相談が」と声をかけた。
普段と違う様子に察するものがあったのか、隊長は場所を変えようといった。

そこは地下1階にあるホテル従業員専用のカフェで、我々のような協力企業とし

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フリーライターはビジネス書を読まない(8)

フリーライターはビジネス書を読まない(8)

次の仕事

1991年1月10日付で、5年2カ月勤めた会社を円満退社した。もっとも正社員の身分を返上しただけで、引き続き雇員として週に1~2日は会社の仕事をやる。
そのあたりのエピソードも話題がてんこ盛りで面白いのだが、それはまた追々書いていくことにする。

東京の編プロから「次の仕事をお願いしたい」とお声がかかった。
リモート会議なんて遠い未来のことと思われていた時代、遠方にいる相手との打ち合わ

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フリーライターはビジネス書を読まない(10)

フリーライターはビジネス書を読まない(10)

自分の原稿のまま出版された

原稿を書き上げたのは締め切りの5日前。
自分で決めたスケジュールより2日ほど早くできたせいか、気分が少し楽だった。

これを推敲して、フロッピーディスクに保存して、プリントアウトして、編プロへ郵送する作業が残っているけれど、書き起こしていく作業が済んだだけでも、解放感は大きかった。

私の推敲方法は、当時から今もあまり変わらない。書き上げたらすぐに見直すことはしないで

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フリーライターはビジネス書を読まない(11)

フリーライターはビジネス書を読まない(11)

支社長との約束

思いがけず、修正がほとんど入らないまま、自分の原稿が本になって世に出た一方で、警備会社を退職するときに支社長と交わした約束も実行していた。

当時すでにコンビニはあったけれど今ほど多くはなく、街角のどこにでもあるという状態ではなかった。銀行ATMをコンビニの店頭に設置する発想すらない時代で、土曜日曜に預金を引き出そうと思ったら、休日稼働させている銀行の店舗へ行くしかなかった。

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フリーライターはビジネス書を読まない(12)

フリーライターはビジネス書を読まない(12)

はじめてのインタビュー
何をどう準備したらいいのやら

原稿を書いてお金をもらうようになり、職業を尋ねられたとき「ライターです」といえるようになった。まだ食えるようになってないけど。
そして今度は、インタビューをやることになった。

「証券アナリストが初心者向けの株式投資をやさしく解説する内容です」
東京にある編プロの社長から聞いたのは、若手の証券アナリストがいて、儲けさせてもらった取り巻きの人た

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フリーライターはビジネス書を読まない(13)

フリーライターはビジネス書を読まない(13)

場違いでダサい録音機材

ネットで知り合って、リアルに会うこともなく、それでいて文字だけのやり取りでそこそこ親しくなった人との初対面は、不思議な感覚だ。
初めて会うのに、お互いの近況をよく知っている。この感覚は、パソコン通信からインターネットに変わった今も変わらない。

「銀の鈴」で合流して、一応、型通りの挨拶をして名刺を交換した。
「じゃ、行きましょうか」と促され、地下鉄をどう乗り継いだのかさっ

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