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フリーライターはビジネス書を読まない

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2020年6月の記事一覧

フリーライターはビジネス書を読まない(14)

フリーライターはビジネス書を読まない(14)

インタビューが始まった

ダサいことこの上ないラジカセの、録音ボタンを押した。
ここにいる全員の認識を統一するために、編集者が企画の趣旨をあらためて説明する。

そしていよいよ、インタビューだ。
編プロの社長が、項目案に沿って「○○について、お話をお願いします」というと、証券アナリストが自分の経験と知識を話すという流れで始まった。

話の成り行きで、横道にそれることがある。それでも社長は、敢えて元

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フリーライターはビジネス書を読まない(1)

フリーライターはビジネス書を読まない(1)

インターネットが普及する前、パソコンでテキストをやり取りできる通信サービスはパソコン通信だった。
「ホスト」と呼ばれるサービス運営業者のホストコンピューターに、電話回線でアクセスする。

アクセスしてしまえば、中身は、誰もが書き込める掲示板のほか、同じ趣味をもつ者どうしが集まるフォーラム、仲間うちだけでテキストをやり取りしたり、チャットもできた。

今のSNSの原型になったサービスは当時からだいた

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フリーライターはビジネス書を読まない(2)

フリーライターはビジネス書を読まない(2)

私がパソコン通信をはじめたのは、1988年だったと記憶している。今はデスクトップのパソコンが、本体だけなら数万円で手に入るようになっているが、当時は数十万円もする高価な買い物だった。

安月給のサラリーマンだった私には手が出ないシロモノなので、ワープロを使うことにした。
当時はまだ画像をアップしたりダウンロードしたりできず、文字だけの世界だったからワープロでも機能的には充分だった。

モデムに接続

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フリーライターはビジネス書を読まない(3)

フリーライターはビジネス書を読まない(3)

おー、3回つづいた(笑)
息切れしないよう、今後は週2回ていどマイペースに更新していきます。

―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ――

パソコン通信の時代にも、オフ会があった。

私が参加しているライターのグループでもやっていたが、メンバーは東京の人たち。私は大阪で、しかもまだプロのライターではなかったから参加できなかった。

参加できなかったというのは私の気持ちで、仲間外れにされ

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フリーライターはビジネス書を読まない(4)

フリーライターはビジネス書を読まない(4)

図書館のビジネス書コーナーには、株式に関する入門書から専門書に至るまで、じつにさまざまな本が並んでいた。
こういうのも、じつは新たな発見だった。
原稿を書くというミッションを与えられなかったら、おそらく図書館とは無縁のまま生きていたに違いない。

仕事の合間を縫って、図書館通いが1週間続いた。さすが大阪市立中央図書館には蔵書が豊富で、類書に事欠くことはなかった。

問題は、私が書く原稿だ。
1項目

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フリーライターはビジネス書を読まない(5)

フリーライターはビジネス書を読まない(5)

ビジネス書のつくりかた

ここでちょっと捕捉。

安いノート型ワープロとモデムを購入してパソコン通信を始めたあと、ライターのグループに参加させてもらいながら、プロのライターになる道を模索していた。

そんな折、東京にある編プロの社長から声をかけてもらい、ビジネス書の5項目を書かせてもらうことになった。

じつはパソコン通信を始めてから編プロの社長に声をかけてもらうまで、ざっと2年近くの歳月が流れて

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フリーライターはビジネス書を読まない(6)

フリーライターはビジネス書を読まない(6)

誹謗中傷事件に思う、パソコン通信時代の「炎上」

もう少し、パソコン通信の話。
SNSでの個人攻撃、誹謗中傷が社会問題になっている。

パソコン通信の時代にも個人を誹謗したり、書き込みが炎上することはあった。
当時、投稿をアップする場を掲示板と呼んでいたから、掲示板の書き込みが炎上することを「板が荒れる」といい、わざと荒らすための投稿を繰り返すユーザーを「荒らし」といった。

荒れる原因はさまざま

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フリーライターはビジネス書を読まない(7)

フリーライターはビジネス書を読まない(7)

サラリーマンを辞める

敢えて社名は伏せる。
日本資本最大手の警備会社といえば「あぁ、あそこか」と察しが付く人は多いはず。

1990年の初冬、勤務先のホテル警備隊で夜勤を終えた私は、隊長が出勤してくるのを待って、
「ちょっと、ご相談が」と声をかけた。
普段と違う様子に察するものがあったのか、隊長は場所を変えようといった。

そこは地下1階にあるホテル従業員専用のカフェで、我々のような協力企業とし

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フリーライターはビジネス書を読まない(8)

フリーライターはビジネス書を読まない(8)

次の仕事

1991年1月10日付で、5年2カ月勤めた会社を円満退社した。もっとも正社員の身分を返上しただけで、引き続き雇員として週に1~2日は会社の仕事をやる。
そのあたりのエピソードも話題がてんこ盛りで面白いのだが、それはまた追々書いていくことにする。

東京の編プロから「次の仕事をお願いしたい」とお声がかかった。
リモート会議なんて遠い未来のことと思われていた時代、遠方にいる相手との打ち合わ

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フリーライターはビジネス書を読まない(9)

フリーライターはビジネス書を読まない(9)

単行本の執筆は難行苦行

締め切りまでちょうど1カ月。編プロから、まだ何の連絡もない。項目案が通ったかどうか、それだけでも知りたいのだが……。

仕方がない。こっちから編プロの社長にメールを出してみた。
「お送りした項目案で書き始めていいですか?」

なんと、すぐに返事がきた。
「版元との調整に手間取っています。あの項目で書き始めてください。手直しがあったら、そのときに知らせますから」

書き始め

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フリーライターはビジネス書を読まない(10)

フリーライターはビジネス書を読まない(10)

自分の原稿のまま出版された

原稿を書き上げたのは締め切りの5日前。
自分で決めたスケジュールより2日ほど早くできたせいか、気分が少し楽だった。

これを推敲して、フロッピーディスクに保存して、プリントアウトして、編プロへ郵送する作業が残っているけれど、書き起こしていく作業が済んだだけでも、解放感は大きかった。

私の推敲方法は、当時から今もあまり変わらない。書き上げたらすぐに見直すことはしないで

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フリーライターはビジネス書を読まない(11)

フリーライターはビジネス書を読まない(11)

支社長との約束

思いがけず、修正がほとんど入らないまま、自分の原稿が本になって世に出た一方で、警備会社を退職するときに支社長と交わした約束も実行していた。

当時すでにコンビニはあったけれど今ほど多くはなく、街角のどこにでもあるという状態ではなかった。銀行ATMをコンビニの店頭に設置する発想すらない時代で、土曜日曜に預金を引き出そうと思ったら、休日稼働させている銀行の店舗へ行くしかなかった。

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フリーライターはビジネス書を読まない(12)

フリーライターはビジネス書を読まない(12)

はじめてのインタビュー
何をどう準備したらいいのやら

原稿を書いてお金をもらうようになり、職業を尋ねられたとき「ライターです」といえるようになった。まだ食えるようになってないけど。
そして今度は、インタビューをやることになった。

「証券アナリストが初心者向けの株式投資をやさしく解説する内容です」
東京にある編プロの社長から聞いたのは、若手の証券アナリストがいて、儲けさせてもらった取り巻きの人た

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フリーライターはビジネス書を読まない(13)

フリーライターはビジネス書を読まない(13)

場違いでダサい録音機材

ネットで知り合って、リアルに会うこともなく、それでいて文字だけのやり取りでそこそこ親しくなった人との初対面は、不思議な感覚だ。
初めて会うのに、お互いの近況をよく知っている。この感覚は、パソコン通信からインターネットに変わった今も変わらない。

「銀の鈴」で合流して、一応、型通りの挨拶をして名刺を交換した。
「じゃ、行きましょうか」と促され、地下鉄をどう乗り継いだのかさっ

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