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鍼灸こばなし

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一般的には知られていない日本鍼灸界の実情や、誰も教えてくれないであろうお役立ち鍼灸ネタを随時UPしています。
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2021年7月の記事一覧

門脇尚平先生と手相と木枕

門脇尚平先生と手相と木枕

手相といえば、20代初めの頃、イロイロあって路頭に迷っていた時期に、手相の大家であられた門脇尚平先生に、下北沢のご自宅で鑑定していただいたことがあった。

先生は「手相の世界では、本は書けても実際に観れる人はほとんどいないでしょ。私は書けるし観るのも巧い」と言った。確かに中医の世界でも似たような状況みたいだが、日本では書けぬし治せぬ鍼灸師が多すぎるように思えてならぬ。

門脇先生に手相を観てもら

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花甲(師匠の還暦を祝う)

花甲(師匠の還暦を祝う)

2016年某日、師匠の還暦パーティーがあった。私は予約しておいたホールのケーキと、還暦祝いに剪纸を持参することにした。

ケーキは最も見た目が美しく、実際に食べても美味しそうなケーキを選んだ。近所では見当たらなかったので、新宿のアンテノールで予約注文した。ケーキに載せる板チョコには「祝愿师父万寿无疆!(師匠が長生きでありますように!)」と、チョコペンで書いてもらった。「师傅」と書いてもらっても良

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「得気(とっき)」の重要性

「得気(とっき)」の重要性

得气(deqi、得気)という言葉は中医の世界では常識だけれども、日本では未だにほとんど知られていないらしい。私が学生だった当時、鍼灸学校で扱っていた教科書には得气について詳しく記されておらず、教員も知らず、同級生も知らず、図書館に置いてある自称日本鍼灸界の重鎮だとかいう鍼灸師が記した著名な本にも記されていなかったため、恥ずかしながら私も得气についてほとんど知らなかった。残念ながら日本鍼灸のレベルは

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真っ当な鍼灸師になるための心構え

真っ当な鍼灸師になるための心構え

以前、「鍼で気胸を起こすアホがいるが、ワシは鍼で気胸を治すんじゃ!ゴッドハンドじゃ!」とか、「神の手をもっている!」とか、中国語を解せぬのに「新中国の中医学に基づいた最高の鍼灸治療が受けられるのはウチだけじゃ!他はアホじゃ!」などと嘯(うそぶ)く鍼灸師がいた。

そもそも気胸は軽症なら安静にしていれば自然治癒するはずであるし、重症なら医師の元で適切な処置を施さなければ、死に至る可能性がある。まず気

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中国針灸がユネスコ入りした話

中国針灸がユネスコ入りした話

2010年、針灸は無形文化遺産として、ユネスコにリスト入りした。と言っても、保護対象になったのは中国針灸だけの話であって、日本鍼灸はほぼ無関係だ。これに対し韓国は猛反発しているそうだが、日本ではこの話題自体に触れる鍼灸師が皆無に等しい。

そんな状況を鑑みると、中国針灸に対する情報収集能力に関しては、日本よりも韓国の方が優れていると言えるかもしれない。さすがは年間50億本と言われる針の世界製造市

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家庭で出来る灸治療

家庭で出来る灸治療

以下の内容は、2015年に院長が中国の最新文献を参考に、素人向けの灸療法の内容をまとめたものです。ご自宅での養生にご活用下さい。
*灸は誰にでもやって良いものではありません。特に妊婦や出血傾向がある患者、糖尿病など易感染傾向にある患者、乳幼児や高齢者には施灸しないでください。下記に記した注意事項は必ず守って下さい。火の取り扱いには十分ご注意下さい。また、灸は煙が大量に出ることがありますので、換気の

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小児針について

小児針について

八王子中央診療所所長、小児科医の山田真氏が書いた『はじめてであう 小児科の本(福音館書店)』という本を読んだ。小児科関係の医学書はいくつか読んでいるが、これは中々の良書だ。最近、第三版が出たので、早速最新版をアマゾンで注文した。予防接種に関しての内容が加筆されたようだ。

題名からすると小児科に限った内容に思えるが、医療全般について記されているから、成人を診ているような医療者にとっても有益な内容で

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不眠と針灸

不眠と針灸

昔から酷く疲れると、とたんに眠れなくなることがある。20歳を過ぎてから約10年間、完全夜型の不摂生な生活を続けていたことや、遺伝的に筋肉が凝りやすいことなどが少なからず影響しているのだろう。

確かに北京堂で師匠に施術してもらったり、自分で自分に鍼灸を施すようになってからは何もしていなかった頃に比べて心身の状態も良く、QOLは断然に上がっている。しかし今でも疲労が重なると、途端に眠りの質が落ちる

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最新の刺鍼法

最新の刺鍼法

中医経典の1つである『针灸大成(針灸大成)』には、“病滞则久留针(病が長引くのであれば、針を長時間留める)”、と記されている。

つまり、すでに古代中国では、一定時間の留針(置鍼)によって、より良い効果を得られることが知られていた。

それゆえ、中国では、刺鍼の刺激量に関する科学的な研究が古くから行われ、太い針を用いた方が明確な効果が出やすいことが常識となり、中医は好んで太い針を用いるようになった

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