マガジンのカバー画像

SF - Sumo Fiction

140
狂気に満ちた相撲SFの世界(手動収集)
運営しているクリエイター

2018年10月の記事一覧

パルプ・ハザード!!

パルプ・ハザード!!

 俺が投稿ボタンをクリックした瞬間、背後で轟音! 驚いて振り返った俺はさらに驚いた!
「ゲホゲホ…… 畜生、なんだここは?」
 部屋に詰め込んだ趣味の本やフィギュアが大地震の直後めいて散乱している。埃が舞う中、ヨロヨロと起き上がって不審げに辺りを見回す女。
 誰だ? なんて思わなかった。俺は彼女を知っていた。その姿を肉眼で見るのは初めてだが、俺の頭の中には彼女の全ての情報が入っていた。だって彼女は

もっとみる
メキシカン・ラプソディ

メキシカン・ラプソディ

10月31日の夜。僕は先刻投稿した『プログレッシヴ相撲』の記事共有ツイートを送信すると、大きく伸びをした。
『パルプ小説冒頭400字』。楽しい企画だったが、応募は今ので最後だ。今日はもう休もう……。

KRAAASH!

その時突如、アパートの扉が破砕!一体何が?僕は戸口の向こうを見遣る。

そこにいたのは力士だった。

僕はそいつの奇妙な出で立ちと、投稿作品一覧が表示されているPC画面を交互に見

もっとみる
春相撲マゲドン~水入り9番勝負~

春相撲マゲドン~水入り9番勝負~

そもそも相撲とは誰のものか?
力士の?観客の?協会の?
どれも違う。相撲は神事である。
神のものだ。

差し込んだ左手が雷光をまとい、皮膚が熱を持つ。
ゼウスの加護が強すぎるか。オリンポス相撲代表、ガニュメ錦は自ら発した雷光に顔を歪めるが、四つに組む相手、アースガルズ相撲代表、グングニ丸は意に介さない。こちらも相当な加護をオーディンから得ているとみえる。
両柱とも本気だ。この春相撲マゲドン、勝つも

もっとみる

カミリキシ

「百科丸!」行事精霊が勝者の名を宣言する。
「さあ帰って。あんたたちのカミリキシは今日も全滅よ!」
 ラリーの姉のライブがチンピラの一団に叫ぶ。
「往生際の悪い姉弟だ、トリクミで断り続けるのもいつまで持つかねえ」
 チンピラたちがアパートから立ち去るのを確認したラリーが集中を解くと同時に土俵ボードの上にあった折り紙の力士はパタリと倒れ、細かな灰となる。
 ライブは携帯箒と塵取りで土俵ボードの上とそ

もっとみる

相撲

俺は土俵に手をつくと、二度、三度と背を伸ばした。

対するは横綱・朝凪。会場は一杯。俺の名を呼ぶ声が多い。

両者1敗で迎えた千秋楽である。俺は相撲人生で初めてチラつく優勝の二文字に舞い上がったが、国技館に入り、支度し、花道を通り、朝凪の前に来たことで一気に現実に引き戻された。

横綱・朝凪の体は脂肪の下の筋肉がはっきりと分かるほど引き締められ、激しい稽古を今場所も積んできたことをはっきりと語る。

もっとみる

サブマリン横綱航海記

「怖ッ!地獄の生き物かよ!」

海底から伸び上がってきた巨大な鎌を受け止めながら、私は叫んだ。今の攻撃に対応できたのは私の反射神経の成せる技だろう。

複合海洋研究施設を襲った深海の古代生物は、どうやら予想を超えたモンスターのようだ。

海が好きで引き受けたこの仕事、海の藻屑となるならそれも本望だけど、コイツに食われるのはノーサンキューです。

「うわ、間近で見るとますます怖いわ」

メガゼブラマ

もっとみる

相撲~踊る横綱~

悪辣なる娑婆手為親方の罠により、我らが横綱・阿羅は大事な千秋楽の土俵へ向かう途中に悪漢たちに襲われる!娑婆手為親方は自らの部屋の大関・正無手無を優勝させ横綱にし、阿羅を追放して角界を私物化せんとしているのだ!

「どかんと、どうなっても知らんぞ!」

阿羅は優しい心とは裏腹に不正や悪事に対しては人一倍敏感で潔癖ですらある。その怒りが、五体に漲っている!阿羅は悪漢共にぶちかました!

(阿羅関…何故

もっとみる
『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」

「ファック野郎!」

スコップを振り下ろし、襲い来る力鬼士の指をぶった切る!
「ギァーーッ!」指は土に還る。力鬼士は後退し、チッチッと音を発した。仲間を喚んでいる! ボゴン! ボゴン! 床や壁から力鬼士が這い出す。囲まれた!「くそったれ……! まさか、実在するなんてな!」

デリックはスコップを振り回して威嚇し、事の発端を思い出す。



「父を、助けて下さい!」デリックの店に飛び込んで来た少女

もっとみる
ブラック・ファラオ VS リトル・ブラック・サンボ

ブラック・ファラオ VS リトル・ブラック・サンボ

横倒しになった軽トラが水平に飛ぶ!

ナイスサンドイッチ!

暴徒が壁と軽トラに挟まれ圧搾死!

先程迄の渋谷ピープルの浮かれ具合が水を打った様に静まり返る。

視線の先には不夜城の灯りの下でも尚黒き闇…黒い無貌のスフィンクスの化粧廻しの黒人力士!

相撲通の絶叫が響く!

「“黒きファラオ”…!九龍坊(くろんぼ)だ!」

■■■
弥助は信長気に入りの力士である。

土俵を這う様な低姿勢からのかち

もっとみる

ロード・オブ・ザ・リング-土俵の王-

 大相撲アサクサ場所、この日の最終取組は夢乃島対十束。両国ナショナルアリーナが最高潮に達する。

 その名の通り、ゴミで埋め立てられた夢の島出身の力士が夢乃島だ。
 洗脳で強化された心、インストールで習得した技、そして義肢や人工筋肉の体を持つ力士が増えた昨今、サイボーグ力士に文句を言う好角家はいない。ましてやゴミから組み立てられた夢乃島は、人々の夢の結晶だった。

 夢乃島が後方に跳ねる。バーニア

もっとみる

相撲シャーク

狂ってるように青い空、青い海。飛沫上げる波の間には真っ赤な帯が一筋、流れている。最初の犠牲者である幕内力士、大陸棚の血だ。

泣きそうな顔で弟弟子の大昆布が聞いてきた。

「兄さん、次は俺だと思う。俺のほうが太ってるから…」

俺はそうは思わない。奴は明確にターゲットを決めている。最初は平幕、前頭、小結、関脇。

「次は、俺だ。」

次は大関。俺だ。そして奴の番付は西の横綱。格下に変化はない。

もっとみる

相撲・オブ・ザ・デッド

世界は崩壊した。

正確に言えば、まだ存続はしているが以前の世界は崩壊したと言えるほどに変化した。悪鬼羅刹が巷に溢れ、魔力法力が幅を利かせる。法はある。それを決めるのは魔力に長じた魔王か、法力を使いこなす法皇かだ。

「2つで十分ですよ!勘弁して下さいよ!」

俺は邪悪な深海生物の天ぷらを4つ要求したうどんを食べる。味はいいが見てくれは宇宙生物のそれだ。きっと俺に魔力か法力が沢山あれば見てくれの良

もっとみる
ザ・スモウハンター

ザ・スモウハンター

 異形のスモウを相撲で倒すスモウハンター。今回の敵は――。

 午前二時――石畳の端に突き出した排気管から絶えることなく噴き出す蒸気が、電灯の光にぼんやりと浮かび上がる。スチームリョウゴクシティは眠らない。五基の巨大ボイラーが生み出す規格外の蒸気量がシティ中を駆けめぐり、この荒ぶる神々を絶えざる神事で慰めている。

 オレンジのサーチライトに照らされる、大樹のごとき鋼鉄ダクト集合体が第一ボイラー。

もっとみる
グレイテスト・ワン

グレイテスト・ワン

地上最強を掲げた釈真空手の主催するルール無用の異種格闘技大会。
その一回戦。

釈真空手の押木 譲が対戦する最初の相手は――力士だった。
現役横綱であり、現幕内力士最強の呼び声も高いその名を鳳凰山。
だが、押木は相撲を侮っていた。
どうせ土俵から押し出せば勝ちなんてルールでやってる興行師が格闘家を名乗るのはやめてもらいたいもんだよ、とは試合前の押木のインタビュー発言である。

試合開始の合図と同時

もっとみる