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ザ・スモウハンター

 異形のスモウを相撲で倒すスモウハンター。今回の敵は――。

 午前二時――石畳の端に突き出した排気管から絶えることなく噴き出す蒸気が、電灯の光にぼんやりと浮かび上がる。スチームリョウゴクシティは眠らない。五基の巨大ボイラーが生み出す規格外の蒸気量がシティ中を駆けめぐり、この荒ぶる神々を絶えざる神事で慰めている。

 オレンジのサーチライトに照らされる、大樹のごとき鋼鉄ダクト集合体が第一ボイラー。そのふもと、キラー地区で蒸気にまかれて歩く人々は誰もおぼろな影である。
 その影をかき分けて巨大なスモウ体が行く。人々は静かに道を開ける。体内に超小型ボイラーを埋め込んだスモウは歩く蒸気機関というべき脅威だ。

 人混みに向けて噛みチャンコを吐き捨てる〈波止場気質〉の口元はゆがんでいた。〈星背負〉は彼の鉄砲によるカワイガリを生き延びた、唯一の弟子だったのに……昨夜、路上に歯車とチャンコとぶちまけた。犯人は誰か

【続く】

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