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広場恐怖症と私の日々-空を見上げて

私は高橋梨香、証券会社のアナリスト。数年前から電車に乗ることが怖くなってしまった。今まで何気なく乗っていたあの箱は、いつの間にか吸い込まれそうな暗黒の渦へと変わってしまったのだ。

一日の始まりは、電車への戦慄から始まる。慎重に着替え、手続き的に朝食を飲み込む。その全てがただ一つの儀式、電車へ乗るという行為へと導いていく。電車の照明は刺さるように明るく、座席は硬く冷たい。同僚たちの顔は、毎日同じように笑っている。私も口元を引きつらせ、笑う。

朝の通勤ラッシュ、車両がギュウギュウ詰めになる時、ほんの少しでもスペースがあるところへ身を寄せ、他人の視線から逃れるようにしていた。電車の揺れや窓の外の景色は、無意識のうちに視界から遮断されていた。

その日、いつものようにラッシュアワーの電車に乗り込んだ時、思わず口から出た言葉は「もう、耐えられない」だった。心臓が高鳴る。電車が発車する前に降りなければ、と思ったが、足はすでに動かなかった。思わず地面を見つめる。車内はざわついていたが、私は一切聞こえなかった。

そして、全てが真っ白になる。

目が覚めたとき、私は病院のベッドの上にいた。その日は点滴のみ打ってもらい、家に戻ることができた。しかし、その後の日々は変わってしまった。私の人生は、突如として、進行方向を見失った。

それから、私は電車に乗ることができなくなった。心臓が高鳴り、息が詰まるような感覚に襲われる。それが私の中で繰り返されるたび、私は電車への恐怖が強まっていくのを感じた。

初めて精神科に行くことになったのは、それから数日後のことだった。心の専門家の前で、私は自分の体と心の状態を話した。

「広場恐怖症になると、公共の場所や大勢の人がいる場所でパニックになることが多くなります。それにより電車やバス、飛行機などの公共の交通機関に乗るのが難しくなることもあります」と医師は言った。

それが私が「広場恐怖症」だと診断された瞬間だった。

ただ頷いた。頷くしかなかった。

私の職業、アナリストは、市場の動向を的確に読む能力が求められる。私はそのプレッシャーと戦い続けてきた。そして、そのプレッシャーが私の心を追い詰め、電車に乗ることが怖くなってしまった。私は仕事を続けるために、電車に乗ることを避ける日々を選んだ。

私は自転車に乗るようになった。通勤時間が長くなり、仕事に費やす時間は少なくなった。それでも、それは私にとっての最善策だった。

毎朝、自転車を走らせる。その時間が私にとっての唯一の安らぎだった。街を走り抜け、人々が働き始める時間を眺める。その時間は、私にとって小さな自由だった。

ところが、その自由も次第に失われていった。仕事の質が落ちるにつれ、上司や同僚からの視線が厳しくなった。私の存在が会社で問題視され始めた。

それでも、私は耐え続けた。自転車に乗る時間を大切にし、仕事に全力を尽くした。それでも、状態はよくならなかった。

そんなある日、公園で一人の老女を見かけた。彼女はベンチに座り、じっと空を見上げていた。彼女の顔は穏やかで、とても平和そうだった。私は彼女に何かを尋ねたくなった。

「何をしているんですか?」

彼女は微笑み、こう答えた。

「ただ、空を見ているだけよ」

彼女と話をするうちに、少しずつ心が軽くなっていった。彼女は何もしない時間を楽しんでいた。彼女が私に教えてくれたことを実践し始めた。

毎朝、出勤前に公園で少しだけ時間を過ごすようになった。最初はただ空を見上げてみるだけだった。しかし、次第に風の音や鳥のさえずり、公園を行き交う人々の笑顔に心を開くことができるようになった。

これまでの私は、自分の時間を全て仕事に捧げてきた。私の中で大切なものは全て、成功への執着心に取って代わられていた。
それが、何もしない時間を過ごすことで、初めて自分自身と向き合うことができた。私の中にある不安や恐怖に、初めて向き合うことができた。

仕事の成果は、なお一定ではなかった。同僚や上司からの視線は厳しいままだった。それでも、私は自分を見つめ直す時間を持つことができた。それが私にとって、大きな支えとなった。

「広場恐怖症」という病によって電車に乗ることができなくなり、日常は大きく変わった。それでも、その変化が私にとっての大きな救いとなった。

ある日、公園で老女と再び出会った。彼女は今日も平和そうに空を見上げていた。私は彼女に感謝の言葉を伝えた。

「ありがとうございます。あなたのおかげで、少しずつでも前に進むことができるようになりました」

彼女は微笑んだ。

「自分自身と向き合うことができたんだね。それは素晴らしいことよ」

それから、生活は少しずつ改善していった。空を見上げる時間を増やし、自分自身と向き合う時間を大切にした。そして、自分自身を見つめ直すことで、私は自分が何を求めているのか、何を恐れているのかを理解することができた。

広場恐怖症になったことで、自分の人生を見つめ直すことができた。それは私にとって、大きな成長のきっかけとなった。

この物語から学ぶべきことは、何かに囚われた時、その束縛から解放される方法は自分自身の中にあるということ

私たちは時として、外部からのプレッシャーや期待に押し潰されそうになります。しかし、自分自身と向き合うことで、自分が何を望んでいるのか、何を恐れているのかを見つけ出すことができるのです

恐怖症は、私たちが直面する困難の一つです。それは私たちの人生を大きく変え、私たちを混乱させることもあります。しかし、それは同時に、自分自身を見つめ直す機会を提供してくれることもあります。

私、高橋梨香は自分の恐怖と向き合い、それを乗り越えるために自分自身を見つめ直すことができた。それは私にとって、大きな成長のきっかけとなりました。

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