現代版人魚姫 (1分小説)
人魚姫は、魔女に魔法をかけてもらい、下半身を二本の足に変え、王子様に近づいたが、彼は別の娘と結婚してしまった。
泡となって消えるしかない。海に身を投げようとした時、彼女は、まだ地上の世界のことを何も知らないことに気づき、考えを変えた。
「人間の社会で生き抜いて、見返してやる」
こうして、昼も夜もなく働き、自力でカフェ「スターパックス」を開いた。
人魚のロゴマークと美味しいコーヒーが評判になり、たちまち店は大繁盛。世界各国に事業を展開。
地位も名誉も得た人魚姫。キャリアウーマンの自分にないのは、あたたかい家庭だけ。
「今までの私の苦労をよく理解してくれて、本当に子供が欲しいと思っている男性と一緒になりたいわ。経済力も外見も不問よ」
さっそく、婚活サイトに登録。
リモートで1000人と対面、彼女の気持ちを一番分かってくれた男性を選んだ。
「ぜひ、遊びにいらしてくださいね」
こうして、彼が初めて店へやってきた。
「なに、あれ」
「マジか」
客たちは騒然とし、人魚姫は椅子から転げ落ちそうになった。
パッカ、パッカ、パッカ。
ひづめの音を響かせて、ケンタウロスが近づいてきた。
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