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私はいつもすこしかなしい

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かなしいのはきっと 誰かのことをとても好きだから
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迷子の私と混浴サウナの話

迷子の私と混浴サウナの話

私がここにやってきたのは2019年の春の終わりです。

5月のベルリンにはそこらじゅうに変な綿毛がふわふわ舞い漂っていました。

ポプラの種子らしいのですが、側溝に降り積もったそれはまるで雪みたいでした。

右も左もわからなかった私は自分が赤ちゃんになって、新しい世界を目にしているのかもしれないという気持ちになって、長いことその季節外れの雪景色に見とれていましたよ。

この前、あなたに特技を訊かれ

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すし柄のハンカチーフ

すし柄のハンカチーフ

歯医者に行こうと思って、時間ぴったりに家を出ました。

忘れ物をしがちなので、あれ持った、これ持った、電車の乗り換え確認した、よーしオッケーと玄関を出て、

青々した木々が綺麗だな〜、と駅に向かっていたところでマスクを忘れたことに気づいたのです。

やばい、取りに帰るか?

迷いましたが、5階まで上がる労力、遅刻が許されるかわからない危険性を考えてそのままいくことに。

とはいえ、どうしたものか。

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<コロナ> 無力感、孤独、怒りとただ一緒に過ごす

<コロナ> 無力感、孤独、怒りとただ一緒に過ごす

低空飛行が続いています。

地面でお腹をすりむく日々。

ベルリンのまちでは、一目で感じられる変化は消えつつあります。

ここに住んでいる人たちは、コロナのための規制や混乱下にあって、どこまでも自由で正直で、できることを探して、生き生きと、暮らしているように私の目には見えています。

先週末はナイトクラブの再開を求めて、河川でボートを使ったデモが企画されました。

デモの申請は100人規模だったの

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容姿を勝手に評価されたら、変顔でお礼をしよう

容姿を勝手に評価されたら、変顔でお礼をしよう

他人から容姿について言及された経験って、「ない!」って人はいないんじゃないかと思うけど、コンプレックスをあげつらうような、お話にならないハラスメント発言はもとより、

それが言った人には悪意なんてなくて、きっと褒めているつもりだろう言葉も、私は、そうした他者からの勝手な容貌への評価が、健やかな自己肯定感の育成に悪い影響を及ぼすと思っている。

私自身、他者からの評価にがんじがらめになって生きてきた

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ベルリン移住1日目

ベルリン移住1日目

ベルリンにやってきた。
ずっと、来たかった街、そして住みたかった街。

VISAが取れて、長期でいられることが確定するまで、3カ月滞在する予定のレジデンシーに、

23キロ、航空預け荷物マックスのスーツケース4つと、手荷物10キロ弱の荷物を2.5個、

まさかの4階、つまりドイツで言うところの日本の5階(ドイツでは日本の1階をエントランス、0階とカウント)まで、夫と私と入居の案内をしてくれた優しい

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ただカメラを構えているというだけの理由でその場所に権利があるという思い込みをする
シャッターの音が、カメラマンの存在自体が、その場所の空気を救いがたく変えてしまっているのにもかかわらず

記録とはなにか
時にその瞬間よりも大切になり得るもの?

自分が好きな自分を探す 4つの方法

自分が好きな自分を探す 4つの方法

今回は自分が好きな自分を探すための、ちょっとしたヒントを、

実践編として書きたいと思います。

概念編、 大人になることについて書いた記事はこちら。

自分がどんな自分が好きかバッチリ知っているよ、という人も、

ちょっと考えたことがなかった、という人も、

絶賛探し中よ、という人も、ちらっと読んでみていただけると嬉しいです。

自分が好きな自分を探すための4つの方法

前の記事に書いたように、

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人は他人との関わり合いのなかで、自意識を持つ。まさにその自意識こそが、他人との関係を我慢できないものにする。プラットフォーム ミシェル・ウエルベック

free from...

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この苦しみはきっと

自分が縛られていたことに気が付き始めたことが原因で起こっている。

自分を型にはめていたのが自分自身だったことを認めることはとても難しくて、つらいのだ。

私は甘えていた、

依存していた、

頼っていた、

諦めていた。

それを認め、一つずつ正しい位置に戻す作業を始めよう。

自分が好きな自分を探すこと

自分が好きな自分を探すこと

大人になるってどういうことなのか、知っていますか?

私は、この問いについてけっこう長いこと考えていて、これがどうして、なかなかの難問だなぁと思っています。

礼儀やマナーをきちんと守れること?
20歳を迎えたら?
自分で稼ぎ始めたら?
責任ある行動がとれること?

大人の定義っていく通りもあって、現に年齢は若くても自分を持っていてとても大人っぽい子もいれば、孫がいるような歳でも手がつけられないよ

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人間を年齢でわけないで

人間を年齢でわけないで

私は誰かからみれば年上で、誰かから見れば年下です。

もがいている年上で年下です。

このところ、インディペンデントメディア、Webマガジン、動画メディア、いろんなツールを駆使して枠にとらわれない20代のひとたちが中心になって運営するメディアがとても素敵で勉強させていただいている。

私は彼らからすると年上なんだけれど、
今ももがいている最中で、まだ何者にもなれていない。

けれど諦めてもいない。

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ある夜

その夜、私はこの世界の設定を忘れてしまいそうになっていた。

私が生きている世界の重力や時間や正義や痛みやあらゆる設定をだ。

現実味が遠いところにいる。

コーヒーを飲みすぎたせいかと思いながら、鏡をみてみる。

こちらをみているのは女だろうか?

それとも目のある犬だろうか?

足の裏がとても冷たいようだけど、足の指が5本あることは不思議なままだった。

この世界が成り立っている姿は、もしかす

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私とマリオ・ジャコメッリ 〈生〉と〈死〉のあわいを見つめて 辺見庸  傷を待つ虚無のこと

私とマリオ・ジャコメッリ 〈生〉と〈死〉のあわいを見つめて 辺見庸  傷を待つ虚無のこと

私の推薦図書ときかれて、一番に思い浮かぶのはこの本だ。

辺見さんのブログで以前読んだ限りでは、おろかなことに絶版になってしまったらしいので、amazonでも中古しか買うことができない。

(再版を強く望みます)

マリオ・ジャコメッリはイタリアの写真家で、もともと詩人でもあって、印刷屋で働きつつ生涯アマチュアの立場を貫いてきたので、アンリ・カルティエ=ブレッソンやセバスチャン・サルガドのような知

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編集者として働くこと

編集者として働くこと

編集者には、人間が十人十色である以上に過激な個性がある。

私は今働いているカルチャー誌で働く前、ジャーナリズム誌でほとんど教育されずに編集者としての経歴をスタートさせた。
かれこれ10年近く前のことだ。

見よう見まねとさえ言えない手探り状態でいろんな人に失礼なことをしたと思う。

ある作家さんには、編集長からの修正依頼を自分で噛み砕くこともしないでそのまま伝えて、

「こちらは書くことで食って

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