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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2022年4月の記事一覧

ケータイ

ケータイ

久しぶりに会った友達が「おまえでもケータイ持ってるのか?」と驚いて聞くほど僕は文明のニオイがしない人間であるらしい。

定時制に勤めていた時、生徒が「連絡が取れなくて面倒」という理由で「オレのプリペイドのやつで使ってないのがあるから、やるよ」ということになりケータイを持つことになったわけである。

便利である。ケータイはまずつながる。つながらなくても着信が残るから後で必ずつながる。連絡手段としては

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床屋

床屋

自分が30歳を過ぎ、40歳を越えた時にも、それは確かに一つの衝撃でありながら、どこかに「こんなもんか」という思いが胸の中には同居していたのだが、息子が中学生になった時、自分がその親であるという事実には何故か大いなる衝撃を感じたりした。

中学生の親と言えば、それはもう筋金入りのオジサンであり、その僕の中にあるイメージと自分の像とが、僕の頭の中で全く一致しなかった。「十分、オジサン化している」とカミ

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第7話:生と死について考えてみたこと

第7話:生と死について考えてみたこと

■我が家の猫

猫が陽の当たる居間で昼寝をしている。わが家の猫はサビ猫という種類で決して美しくはない。家の中で見るとそうでもないが、外で見るとコンクリート色の薄汚い貧相な猫に見える。
そう言うとカミさんは「かわいそうに」と猫をかばうのだが、そのカミさんの愛情によって結構いいキャットフードを食べているせいか、毛並みはいい。ふかふかつやつやしている。
それを撫でていると、「猫は毛物(ケモノ)なんだなあ

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第34話:平凡

第34話:平凡

家にはオジイチャンがいて
家にはオバアチャンがいて
ある夏の一日が暮れようとしていた
カラスが「かぁ」と鳴き
空がまっ黒くなるくらい
雀が竹やぶの上に群れていた

落ちかけて来る夕闇の中で
オバアチャンは豆をたたいていた
黙って竹やぶを見ているオジイチャンの麦藁帽子を
静かに風がなでていく

僕は縁側に腰を掛け
遊び疲れた手足を伸ばして
全く安心しきって
思いきり 
その一日の終わりの風景を
両手

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第18話:金庫

第18話:金庫

皆さんの家には金庫があるだろうか?
自慢する訳ではないがウチには金庫がある。勿論そんな立派なものではない。よく旅館に泊まると置いてある、あの手の小型の耐火性の金庫である。

田舎のことだから、以前に僕の家の引っ越しを手伝いに来てくれた生徒たちがこれを発見して、いたく驚いていた。彼ら彼女らは、驚きつつも、お互いに顔を見合わせて「どうせカラよね」などと言い合い、自分達の先入観の正しさを確認し合っている

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第14話:走る

第14話:走る

「走る」などというタイトルはおよそ僕には不釣り合いで、運動という言葉すら最近は遠い存在になりつつあることを感じたりする。今の僕の姿を知っている人には信じられないかもしれないが、僕は走ることが割合に好きで、特に高校、大学時代には相当に走った。

高校時代には、部活動の練習自体は無論のこと、冬の早朝には狩野川の堤防を走ってみたり、休日の部活動は家から走って学校に行ってみたり、引退してからも勉強がうまく

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第9話:煙草

第9話:煙草

僕が煙草を吸い始めたのは大学4年の春、21歳の時である。そう言うと「20歳になったら煙草はやめるもんだ」などとバカ呼ばわりされることが多く、中には「何故、どうして。失恋?」とかその理由を追及されたりもして、ひどく迷惑なこともあったわけである。

失恋を全くしたことがないと言えばそれは嘘になるのかもしれないが、僕は男三人兄弟の中に育ち、高校もほとんど男子高のようなところだったので、女性とは割合に無縁

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第12話:忍者の友達は何人?

第12話:忍者の友達は何人?

もう40年前の話であるので、そのつもりで聞いていただきたいのだが、アメリカとカナダに行ったとき、付き添ってくれたカナダ在住の若い女性がカナダで日本のテレビ番組が放映されていて結構に人気があると言っていた。
みなしごハッチだとかメルモちゃんだとかいう僕などが子供のころのアニメとか、へぇーという感じもするが水戸黄門などはかなりの人気を集めているということであった。

彼女が言うには、日本の番組を観られ

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今日は今日!

今日は今日!

■ネット上のフリーイラストを使って、ちょっと遊びを試みてみました。受験とか試合とかで、打ちひしがれる生徒に向けてのメッセージです。

「今日を切る!」と言いますが、今日に区切りをつけ、明日に向かうことは大事なことだと思います。がんばりましょう!

空を飛ぶ土竜

空を飛ぶ土竜

ふはふはと空飛ぶ土竜の夢や春

「春眠暁を覚えず」と言いますが、寄る年波で、いくら遅く寝ても4時とか5時に目が覚めてしまい、「暁を覚えず」という状態がむしろ恋しいくらいに思われる今日この頃です。

その代わり、昼間は夢心地。例えば、土竜が空をふわふわ飛んでいる夢を見ているような現実感のなさ・・。

実は、「土竜」は小学校2年生以来の僕のあだ名で、そんな綽名がついた理由もわからないまま「もぐちゃん」

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ウィル・スミスではないが

ウィル・スミスではないが

今、住んでいる所はまだ家の周りを蛍が飛ぶような、いわゆる田舎である。ここに越してきた頃、近くの床屋に行ったのだが、話好きのオジサンで、あれやこれや話していくうちに「仕事はなに?」と聞かれたので、あまり気が進まなかったが「高校に勤めてる」と言うと、「それじゃ先生かい」と反応する。

ちょっと嫌な予感はしたが、「そうです」と言うと、「それじゃ」と言ってオジサンは終わりかけている僕の髪の毛のセットを崩し

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