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【#1】 連載小説 『 美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第1章 「毛玉セーターの佐藤さん」第1話)
【あらすじ】
美容室「ヨアケ」には、ある「ひみつ」が隠されている。
それは、もし知られてしまえば全国から客がひっきりなしに押し寄せるような「ひみつ」だった。
謎の多いオーナー、シルバーグレーの猫…
平凡に見える美容室に、何が隠されているのか。
ある日、初老の男性佐藤さんが美容室「ヨアケ」を訪れた。麻衣を、娘と似ているからと指名し、通うようになる。
しかしある出来事をきっかけに、佐藤さんは姿を見せ
【#8】 連載小説 『 美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第2章 「サスペンス小学生」第4話)
前回までの話はこちらです。
「ねえ…その箱ってもしかしてさ…水色の、花柄っぽい?」
村上は言った。
「えっ?!なんで知ってんの?!」
田中君が驚いて立ち上がった。
「僕…違うかもなんだけど…。違ったらごめんね。それ、松田君が持ってるの、見たかも…」
「えっ?えっ?!ど、どこで?!」
「ずいぶん前に、学校終わってから学童に残って校庭で遊んでたときにさ、松田君を見たんだよ」
「そ、それ
【#7】 連載小説 『 美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第2章 「サスペンス小学生」第3話)
前回までの話はこちらです。
『すみませーん、こんにちはー』
事務室には、職員さんが何人かいた。
『あら、田中君。なあに?どうしたの?』
女性の職員さんが出てきてくれた。
『松田君の忘れ物を届けたいんですけど、おうちを教えてくれますか?』
僕は僕の筆箱の、名前を書いてない方を見せながら言った。
『あらぁ、わざわざ偉いわねえ。明日もきっと来ると思うから、渡してあげるわよ』
職員さんは親
【#6】 連載小説 『 美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第2章 「サスペンス小学生」第2話)
前回までの話はこちらです。
「あ、よろしくお願いします…」
ソウタが、ぺこりと頭を下げた。
「申し訳ありません、ご指名頂いておりましたオーナーの末継が、本日不在でして…」
「あ、聞いてます。大丈夫です…すみません、遅れて…」
「恐れ入ります、こちらは全然大丈夫です。では、お二階にご案内いたします。足元お気をつけください」
ソウタを椅子に案内すると、新城は書いてもらったカウンセリングシー
【#5】 連載小説 『 美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第2章 「サスペンス小学生」第1話)
【前回までの話(第1章)はこちらです】
美容室 『ヨアケ』には、ある「ひみつ」が隠されている。
それはもし知られてしまえば、全国から客がひっきりなしに押し寄せるような「ひみつ」だった。
だけど今のところ「ひみつ」は秘密のまま、美容室の奥底に隠されていて、
「ヨアケ」は、ごく普通の商店街の片隅にあり、平凡な様子で今日も通りを見下ろしていた。
第二章 サスペンス小学生
「田中君ってさぁ、校庭
【#4】 連載小説 『 美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第1章 「毛玉セーターの佐藤さん」第4話)
あらすじと前回までの話はこちらです。
理恵との約束の日。
麻衣はひとり、午後三時頃から自主練に来ていた。もともと店の鍵は持たされていたので、店長には、
「火曜日に休日出勤して自主練します。友達をカットモデルで呼ぶかもしれません」
とだけ報告した。あれこれ佐藤さんのことを詮索されたくなかったからだった。
青空が広がり空気はひんやりしていて、外に出ると気持ちがスッと引き締まるような日だった。
【#3】 連載小説 『 美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第1章 「毛玉セーターの佐藤さん」第3話)
あらすじと、前回までの話はこちらです。
《ねえ、どうしたの?麻衣?》
「あ、絵美ごめん、もう着くから切るね」
《麻衣?》
小さな公園なので十メートルくらい先にいたのだが、佐藤さんは麻衣に気付かなかった。
佐藤さんは一人ではなく、ヤンキー風の男女と一緒だった。二人とも真っ白でぶかぶかなジャージを来ていて、髪は金髪だった。
二人は佐藤さんと向かい合って立っていて、異様な雰囲気が漂っていた。
【#2】 連載小説 『美容室「ヨアケ」、開店します。』 (第1章 毛玉セーターの佐藤さん 第2話)
第1話とあらすじはこちらです。
「こちらのお席へどうぞ」
佐藤さんは鏡の前に座ると、きまり悪そうに視線を下に落とした。
フロア中のスタッフや客が、佐藤さんに注目しているのが分かった。特に隣の席に座っていた初老の主婦は、雑誌から顔をあげ、無遠慮に上から下までジロジロと眺めていた。
「ええと、担当させていただきます、田辺です。よ、よろしくお願いします。今日はどのくらい短くされますか?」
先輩の
シリーズ【ふせんをはりたい、ことばたち。】 #8 「だれも勝てるとは思わないほうがいい。」 マンガ『やさしく、つよく、おもしろく。』より (ながしまひろみさん著) 糸井重里さんのことばより
私は常に、せわしなく何かを頭の中で考えているほうで、
(常に哲学しているもので…とか言いたいところですが、
心配したり後悔したり、不安を感じたり…といったことの方が多いです。あーあ。)
時々、
「しまった、また脳内疲れてるわー。ぼーっとしなきゃ!」
とか思ったりしています。
でも、あまり上手くできた試しがないのですが…。
そして、今回ご紹介するのは、そんな私が強く憧れを抱いたことばです。
な
シリーズ【ふせんをはりたい、ことばたち。】 #7「待ち合わせた場所で当てもなく 虹を眺めていれば」シングライクトーキング『It's City Life』の歌詞より
1988年デビューの、シングライクトーキング。
昨年、35周年を迎えました。
佐藤竹善さん、藤田千章さん、西村智彦さんの、スリーピースバンドです。
ジャンルは最近では「シティ・ポップ」といわれることもありますが、ロックやソウル、ファンクなど、幅広い音楽性と実力を持つ、素晴らしいバンドです。
毎日の仕事で多くの悩みを抱え、へとへとになっていた時期。通勤時間も長く、電車の中でも仕事、家に帰っても
シリーズ 【ふせんをはりたい、ことばたち。】 #6 「お母さんが幸せじゃないと、子供は幸せにはなれません」児童精神科医・佐々木正美先生のセミナーより
(シリーズのマガジンはこちらです)
もうずいぶん昔のことですが、児童精神科医である佐々木正美先生のセミナー(講演会)に通っていたことがあります。
「佐々木セミナー」はとても人気で、コンサートなども行われるような大きなホールで毎回開かれていました。
薄暗いホールには、仕事帰りの保育関係者の方々がノートを片手に集まっていて、私もその中の一人でした。
当時とてもお忙しかった佐々木先生は、多くの場合
シリーズ【ふせんをはりたい、ことばたち。】 #4 「先生に〜して“頂く”とは、言わないほうが良いと思います。子供は親と教師で、一緒に育てていくものですから。」 娘の小学校の先生のことばより
シリーズのアーカイブはこちらです。
娘が小学生の頃。
色々なことがあり、いったいどうしたら良いの?と、
暗闇の中を、手探りで歩いているような時期がありました。
そんなとき、小学校の非常勤の先生とお話しをする機会がありました。
その先生はもう引退され、若い先生方へのアドバイザーのような形で来られている方でした。
とても深みのある声が印象的な、少し風変りな初老の男性で、何度かたまたま顔を合わせ
シリーズ【ふせんをはりたい、ことばたち。】 #3 「でも、それを待つときの楽しさだけはまちがいなく自分のものですもの。」(モンゴメリ「赤毛のアン」より)
(過去の記事はこちらです)
「あのね、マリラ、何かを楽しみにして待つということが、そのうれしいことの半分にあたるのよ」
世界中で読み継がれている、モンゴメリの「赤毛のアン」。カナダの美しいプリンスエドワード島を舞台にした物語です。
孤児院から中年の兄妹(マシュウとマリラ)のもとに、手違いで引き取られることになった、12歳の少女アン。
感受性豊かなアンは、周囲の様々な物事にその感性を大きく開い
シリーズ【ふせんをはりたい、ことばたち。】#2 『とにもかくにも、強烈に望むことである。』 —佐藤さとるさん(児童文学作家)のことばより—
【ふせんをはりたい、ことばたち。】
シリーズ第2回目です。
第1回目はこちらになります。
そして今回ご紹介するのは、こちらの物語の作者のことばです。
『だれも知らない小さな国』
1959年に誕生し今も愛され続けている、コロボックルと呼ばれる小人の物語で、日本で初めての本格的ファンタジーの傑作です。
作者は、佐藤さとるさん。
2017年に88歳で亡くなるまで、数多くの素晴らしい作品を作られ
シリーズ【ふせんをはりたい、ことばたち。】 ♯1 『過去や未来に期待するのではなくて、目の前の現在を工夫して楽しむほうがいい。』 -濱口秀司さんのことばより-
人生にはふいに「心に留めておきたい言葉」が現れることがあります。きっと私だけじゃないはず。
でも、あんなに感銘をうけたはずなのに、けつっこう忘れちゃったりもする…。やっぱり人は、忘れる生き物ですね。
有名無名は関係なく、自分にとって絶妙なタイミングで、色々な角度からさっと差し出される言葉たち。
忘れたくないし、ときどきは引っぱり出したい!と思ったので、シリーズにしてみることにしました。
第