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われ苦しむ、ゆえにわれ在り——ベケット『ゴドーを待ちながら』を読む
サミュエル・ベケット(Samuel Beckett, 1906 - 1989)は、アイルランド出身の劇作家、小説家、詩人。不条理演劇を代表する作家の一人であり、小説においても20世紀の重要作家の一人とされる。1945年以降おもにフランス語で執筆した。ウジェーヌ・イヨネスコと同様に、20世紀フランスを代表する劇作家としても知られている。1969年にノーベル文学賞を受賞。
1952年、現代演劇に多大
この意識は私に固有のものか?——廣松渉の「世界は共同主観的に存在する」論について
廣松 渉(ひろまつ わたる、1933 - 1994)は、日本の哲学者。東京大学名誉教授。廣松の思想はマルクス主義の立場に立脚し近代の構図から離れ新たな思想を組み立てようとするところに特徴がある。廣松の主要概念は、①マルクス主義の疎外論から物象化論への展開、②世界の共同主観的存在構造、③近代の超克論などである。本書『世界の共同主観的存在構造』は、1972年に刊行された本格的な哲学論文である。
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アイデンティティが人間の出発点ではない——M・ガブリエルの新実存主義と他者論
マルクス・ガブリエル(Markus Gabriel, 1980 - )はドイツの哲学者。史上最年少の29歳で、200年以上の伝統を誇るボン大学の正教授に就任。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新しい実在論」を提唱して世界的に注目される。著書『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ)は世界中でベストセラーとなった。さらに「新実存主義」「新しい啓蒙」と次々に新たな概念を語る。NHK Eテレ『欲望の時
もっとみるブルシット・ジョブを支える「経営管理主義イデオロギー」——グレーバーの提唱したBSJ理論
「ブルシット・ジョブ——クソどうでもいい仕事の理論(Bullshit Jobs:A Theory)」は、アメリカの人類学者デヴィッド・グレーバーによる2018年の著書で、無意味な仕事の存在と、その社会的有害性を分析している。彼は、社会的仕事の半分以上は無意味であり、仕事を自尊心と関連付ける労働倫理と一体となったときに心理的に破壊的になると主張している。「ブルシット(Bullshit)」は、原義は「
もっとみる自由の本質とは「状態」ではなく「感度」である——アーレントによる自由の定義
本書『「自由」の危機 ――息苦しさの正体』は、2020年9月の政府による日本学術会議会員の任命拒否問題に端を発して組まれた特集である。筆者には、姜尚中、佐藤学、上野千鶴子、小熊英二、高橋哲哉、苫野一徳、内田樹などが名前を連ねる。「学問の自由」、ひいては私たちの生活における「自由」を守るために、さまざまな文筆家やジャーナリストが筆をとっている。
引用したのは哲学者・教育学者の苫野一徳氏の文章である