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2022年 ベストアルバム トップ50

2022年のよかったアルバムを50枚、ランキング化。5年間50枚を選び続けててこれいつまで続けられるのか、って感じなのだけども、いいアルバムが多いんだから仕方ない。とはいえ、トップ50っていうのは一区切りかもしれないなぁと。もうちょっと絞って愛聴する方向に自分を持っていくのもアリかな、と思ってます。現状はね!ひとまず、今年の分は全力で推しておきます!


50位 えんぷてい『QUIET FRIENDS

名古屋出身バンドの1stアルバム。まろやかな残響と格別なメロウネス、ミツメなどにも通ずる心地よいインディーロック。夢の中にふと訪れた生活の風景のような、歪みあるリアリティをじっくりと綴ってくれる。


49位 森七菜『アルバム

屈託のない《いつでもスマイルしようね》で世に大きく出た印象だが彼女の本質はデビュー曲「カエルノウタ」にある物語を統べるべくしてある表現力。技巧では計れぬ呼吸と間合い。演技にも通ずる淀みなき振動だ。



48位 Nelko『How Do You Feel?

地に足のついた楽天性で休日の昼下がりや平日の帰り道を彩るメロウ・ヒップホップ。


47位 関取花『また会いましたね

メジャー2ndアルバム。まず歌声の凄みにハッとする。緊張感と荘厳さをも兼ね備えたその歌唱は楽曲に凛々しさを与え、親みやすいイメージとともに新たな気概をもった表現者としての彼女に再び出会い直せるはず。


46位 アルカラ 『キミボク

結成20周年記念アルバム。稲村大佑(Vo/Gt)の弾き語りを基にした曲もあり、今まで以上に歌とメロディの強固さが光る。トリッキーさも持ち味の一つだが本作ではひと匙程度。豪傑のようなサウンドに圧倒される。


45位 milet『visions

2ndアルバム。いわゆる歌に徹するシンガーでもあり、作詞作曲に人格が強く出るソングライターでもある、その狭間だからこそ自在なアプローチでオントレンドにもオーソドックスにもいける。視界良好な快作。


44位 ドレスコーズ『戀愛大全

1年ぶりの8thアルバム。ここ数作は強固なコンセプト作が続いたが、本作は爽やかなポップスへと傾倒。ニュー・ミュージック的な装いで毛皮のマリーズ『ティン・パン・アレイ』級のラブリーを呼び覚ましている。


43位 藤井風『LOVE ALL SERVE ALL

2ndアルバム。コロナ禍の中で驚くべきスピードで浸透してきたこの2年、それはこのアルバムにも通っている慈愛の精神が背景にあるからだろう。歌とリズムがトゲトゲした心を包み込む、柔和なニュースター。


42位 清竜人『FEMALE

8thアルバム。縦横無尽な活動を一周終えたのか、今回は真っ直ぐにラブソングを届けるシンガーに回帰。リッチなアレンジを的確に配しつつ、ケレンみと役者っぷりも堪能できる。冬にぴったりな温もりがある。


41位 tofubeats『REFLECTION

5thアルバム。自分でぽちぽちとDTMを始めてからよく分かったのだが、本当に音楽作りというのは自分と向き合う時間だ。自分の中にあるイメージを形にしていく、自分そのものをかたどっていく創造。反射したものが更に反射し、時に他者を介在しながら自分へ還る、、その循環がここに。


 40位 黒子首『ペンシルロケット

メジャー1stアルバム。アコギにリズム隊という様式美をさらりと超越し、よりJ-POP然としたアレンジやフィーチャーゲストなども飲み込んだ15曲。どう仕立てててもズレることのない堀胃あげは(Vo/Gt)の信念や生活感が時に激しく時にポップに放たれてる。深くも広くも届くはずの音楽。


39位 中村佳穂『NIA

3年半ぶりの4thアルバム。そんなわけないのだけど、12曲がまるでひと続きの歌のように聴こえてくる。始まりも終わりもなく、命のうつろいの中にあった歌をそっと摘み取って飾り付けたような。歌と呼吸がとても近いところにある彼女だからこそできた、ナチュラルにパワフルな1作。


38位 MIZ『Sundance Ranch


MONO NO AWAREとしても活動する玉置周啓と加藤成順のアコースティックユニットの2nd。北海道でのフィールドレコーディングによってその場を満たす空気や風土をも閉じ込めているかのよう。糸を織るように爪弾かれるアコギの音色の隙間に、人々の営みの輪郭が浮かび上がってくる。


37位 宇多田ヒカル『BADモード

8thアルバム。まるでシングルコレクションな曲目に油断しているとスイっと入り込まれる、高い没入感を誇る1作。バシバシと打たれるビート、けだるくも艶やかな歌声、そしてポップソングとしての驚きをくれる言葉たち。気が滅入りそうな時こそ、夢中になって聴き入れる音楽の助けを借りたいのだ。

 

36位 私立恵比寿中学『私立恵比寿中学

7thアルバムにしてセルフタイトルに到達。生まれ変わり続けるコンセプトと変わらない美学を貫くための超ソングオリエンテッドなアイドルソング集。


35位 Limre『ライマー

KBSNKによるソロバンドの1st。軽やかに流れるバンドサウンドを基調としているが、不意にぐにゃりと景色が歪んだり、歌声も肉体性を離れた自由さがある。緻密に組み上げられた音像の中に確かに滲む青く脆いジュブナイルの余韻。ギターロックの情感は”1人“で生み出す時代になった。


34位 三浦透子『点描

俳優としても活動するシンガーの2ndEP。クリアな声質、囁くような歌唱を活かしきる7曲。淑やかでモダンな楽曲から温かなバラード、ダンスビートなど多彩だが決して寄せ集めではなく、上質な短編映画集のような纏まりがある。演じるように歌う、その姿勢を今最も鋭く磨く表現者だ。


33位 おとぎ話『US

実に12枚目のアルバム。洗練されたポップス路線の延長上、ダンサンブルなリズムワークと隙間を活かしたグルーヴによって新たな地平に立った。誰かを想うこと、切ない愛しさを人懐っこいメランコリーとともに具象化した歌たちは、のどかにも、じっと沁みながらも聴ける日常性がある。


32位 柴田聡子『ぼちぼち銀河

6thアルバム。少々つかみどころのない、ともすれば素っ頓狂にも思えるような節回しで放たれるのはやはりつかみどころのない言葉たち。しかしその連なりが、彼女の朴訥としつつ訴えかけてくる歌に乗ればそれぞれの宇宙が現る。日々の窓辺に"きらり"と"ぞわり"をくれる稀有な"詩"。


31位 サカナクション『アダプト

コロナ禍に適応するというコンセプトを立て、オンラインライブなどを制作過程に織り込みながら完成した1作。ライブと音源が密に関わり合う活動の間で起きパンデミックという異変をも作品に落とし込み、かつてなく親密さを感じる1作に。同時代を生きるバンドとしての言葉と音のログ。


30位 レキシ『レキシチ

7thアルバム。日本を代表するビッグファンクバンド、リッチでユーモラスな音作りはポップにもマニアックにも突っ走っていく。相変わらずのたっぷりの歴史愛と新解釈が詰まった楽曲の中、ラストを飾る「フェリーチェ・ベアト」にハッとする。江戸時代に撮られた人物写真を眺め、遠い貴方に想いを馳せる。歴史を歌うことでここまでの感情を描けるのか、と。


29位 warbear『Patch

Galileo Galilei、BBHFとして活動する尾崎雄貴のソロプロジェクトによる2nd。ところで彼の魅力は実はボーカリストとしての迫力なのではないかと最近特に思う。ゆえにグッドメロディを自然な手触りで形にしたこのアルバムではその"歌い上げ"を堪能できる。随所に散りばめられたサックスの音色がのどかなノスタルジーを喚起する上質な歌モノを極めたアルバム。


28位 go!go!vanillas『FLOWERS

6thアルバム。フジロックでお披露目したアイリッシュ風味の楽団編成の充実感をそのままアルバムに昇華。フィドル、ピアノ、トランペットの音色は今までもそこに鳴っていたのではないか?というほどにバンドサウンドに馴染んでおり、独自の道へと立ち進み始めた、シンプルなロックンロール美学のその先、純粋さを決して損なわぬまま手にした新たな花束。


27位 HIJOSEN『蛹は震える


2019年結成バンドのEP。微妙に意味が浮かびづらいバンド名、不可解なアートワーク、それと直結する激しくも美しいノイズサウンドが心を突き上げる6曲。静動を往来しながら遠くに意識を飛ばされる陶酔感。穏やかさと激しさが入り乱れ掻き乱される情緒。一方、歌詞の言葉選びは素朴で読み込みたくなるような詩情に満ちる。歪だが眺めたくなる絶景のような。


26位 水曜日のカンパネラ『ネオン

ボーカル(主演)が詩羽に変わり新装開店しての初EP。あぁ水カンの帰還!という懐かしい嬉しさに溢れるキュートで楽しいポップチューンとハスキーで太いニューボーカルによる新しい刺激がどちらもある。バキバキのリズムワークと、煌びやかなウワモノ、そしてより歌に寄ったメロディの強度。カルチャーシーンの真ん中でこの特大アイコンと再会できる喜び!


25位 ヒトリエ『PHARMACY

シノダがボーカルを務めてからは2枚目のアルバム。3人のソングライターがいるという強みをより一層全解放させたような豪勢さがある。音圧で叩きのめすような楽曲もあれば、電子音がきらめく楽曲もあり、新たなヒトリエ像を曲ごとに刷新していく鮮やかさで彩られている。前作はある種の覚悟が滲まざるを得なかったが、今作はwowakaをも驚かせるような自由さが充満。


24位 Kabanagu『ほぼゆめ


1stアルバム。どこに飛ばされるか分からない破壊的なハイパーポップ、というよりはゼロ年代のロックナンバーやボカロ以降のポップスのフレーバーを薫らせながら、油断したところに全く別の世界を差しこんでくるような編集のマジックを見せつける。どこか乾ききっている、だけども居心地がとても良い。"ほぼ夢"と名付けられたことの必然性が聴きこむほどに見えてくる。


23位 SAKANAMON『HAKKOH

結成15周年&デビュー10周年イヤーの7thアルバム。大きな意味での”みんなのうた“が増えてきたように思う。ある種のルサンチマンが解けた先、捻くれても真っ直ぐにも届く1作に仕上がった。オーセンティックなギターロックも「1988 feat.たかはしほのか」のような異質な楽曲もバンドの旨味。発光と発酵を掛けたであろう題は、今まさに食べ頃になった成熟を言い当てている。


22位 あいみょん『瞳に落ちるよレコード

4thアルバム。国民に定着しきったシンガーソングライター、研ぎ澄ませたメロディと柔軟な編曲の調和は令和J-POPの最高水準。これまでよりピアノを基調とした曲もあり、フレッシュかつエバーグリーンな響きを持つ。そしてラスト前、「インタビュー」でこぼれる毒々しい批評はインスタントに音楽家を消費するシーンに向けられる。やはり彼女は気高い芸術家だ。


21位 lyrical school『L.S.

hip hop アイドルクルーが、前体制のラストアルバム。オントレンドな楽曲とそれを乗りこなす個性的なラップスキルに圧倒される前半、そして終わっていく寂しさも纏いつつ華やかなフィナーレへと駆け抜ける後半が見事な構成。良い作家を揃え玄人ウケ音楽をアイドルが歌う、は最近よくあるけど彼女たちの培ったマンパワーがあってこその特別の輝きがリリスクにはある。


20位 マカロニえんぴつ『ハッピーエンドへの期待は

結成10周年のメジャー1stアルバム。タイアップシングルを連打せざるを得ないブレイク街道をひた走りながらも、絶対に想像している展開を少しズラして着地させる一癖あるアレンジの曲ばかり。強弱と緩急によって完璧にアルバムを構築できるのも信頼できる点。明らかに異質なハードロックサウナ賛歌「TONTTU」など変な曲をぶち込むことも決して忘れはしない。先人へのリスペクトとニューエイジな感性が折り重なった面白い位相のバンドだ。


19位 羊文学『our hope

メジャー2ndアルバム。美しく残響をゆらめかせる音色を機軸にしつつフォーキーな楽曲やシンセサイザーの導入など挑戦的なアレンジも自然に着こなしている。また昨年の『your love』から『our hope』へと繋がっていく現在のモードは”愛と希望”を描くことに注力しているように思える。誰もが疲れきった時代において激しいサウンドでありながらどこか慈しみ深く、ケアをもたらす羊文学の音楽は祈っている。せめて光とほのかな暖かさを、と。


18位 ナードマグネット『アイム・スティル・ヒア

3rdアルバム。コロナ禍、メンバー脱退というバンド活動の苦境、そうでもなくても苛立つこと、理不尽なことも多い日々だ。その末に生まれたのは、地の底まで気分が落ちても怒りに溢れる日があったとしても自分は自分にしかなりえないという事実を確かめるような1作だった。今ここにいて、ここから変えていくことを鳴らし、須田元生(Vo/Gt)の"一人称"が強く響き渡る。11曲28分という痛快すぎるランタイムでありながら、ずっしりとした重量感。


17位 スカート『SONGS

メジャー3rdアルバム。沢山の作品のエンドロールやタイトルバックを彩ってきたここ数年の楽曲をぎゅっとまとめた1枚。これまで歩いてきた道をそっと振り返り、そしてまた歩き始める、、そんなテーマの楽曲が多いように思う。思い通りにならなかったコロナ禍、少しずつ日々を取り戻した2022年。どの瞬間にも歌はあり、そして残っていく。誰にも邪魔できない記憶の聖域にそっと入り込み、年の瀬のひとときを噛み締めさせてくれるような。


16位 Cody・Lee(李)『心拍数とラヴレター、それと優しさ

メジャー1stアルバム。快楽中枢を突くグルーヴィなバンドサウンドにドキドキするし、沢山のカルチャーを引用した歌詞はまるで照れを知らない恋文のよう。全編に渡って包み込むようなアコギの音色が日々をそっと彩っていく。こんな時代なんだから愛だの恋だの言ってる場合かなんて声も聞こえてきそうでビクビクするけど、いつだって僕らの暮らしに必要なのはこういう大切な誰かとか今日のご飯とか季節の移ろいなんじゃないかって思うのだ。



15位 4s4ki『Killer in Neverland

メジャー2ndアルバム。極彩色のカラーリング、次元をまたぎそうなアートデザイン、そして縦横無尽に飛び回るハイパーでアルティメットなポップソング、その羽ばたきっぷりは更に自由に。唯一、最後の楽曲のみがシンプルな弾き語りで驚くのだがライブを見て納得。喉を枯らしてほとんど歌えなかった名古屋公演。あの夜に観た弱さも曝け出せる強さがちゃんとアルバムにも通っているように思った。鋼と魔法の音を纏った等身大のカリスマだ。


14位 リーガルリリー『Cとし生けるもの

メジャー2ndアルバム。骨太で鋭利な3ピースサウンドは冷たさの奥にある温かみ、優しさの傍に忍ばせた怒りなど、相反する精神世界が鏡面のように並び立っている不思議さがある。歌っている事象も夢想や御伽噺から少しずつ現実に立脚し始めているが、たかはしほのか(Vo/Gt)は彼女のフィルターを通した言葉を紡ぎ詩としての強い芯を感じる。何かを言わなきゃ何も言ってないと言われる世界において静かに抵抗して怒りをも光らせる気高さよ。


13位 ELLEGARDEN『The End of Yesterday

16年ぶりの6thアルバム。丁寧に研ぎ澄まされたサウンドと各楽器が隆々と躍動するプロダクション、恋焦がれたエルレの新作としてこの上なく逞しい。前作のヒリつくような危うさも部分的には引き継がれているが、全体を通してどこか物憂げなセンチメンタルさが息づいており、その少し落ち着いた質感も何だかちょうどいい。中坊が30目前になるまでの歳月、人もバンドも変わっていくがその眼差しだけは変わらない。今、鳴るべき、人生の爆音。



12位 For Tracy Hyde『Hotel Insomnia

5thアルバム。元からシューゲイザーを主体とする音楽性ではあるが、本作は今までよりもさらに硬質でひんやりしたノイズを追求したようなヘヴィなアルバム。しかし空を裂くようなアコギの音色が滑らかに響いてもいて、重たさと清らかさのバランスが抜群。そしてeurekaの歌声は一段と涼しくそして躍動感が何倍にも膨れ上がっている。今持ちうる武器を鋭く磨き上げることでバンドの表現を広げる。強靭で美しい要塞のような、うっとりする轟音。


11位 04 Limited Sazabys『Harvest

04thアルバム。丸04年という長いスパンが設けられた新作だが、突飛なことをせずメンバー04人の地肩を鍛え上げて作られたしなやかでタイトなパンクナンバーが出揃う。コロナ禍の中、最もライブで本来の光景を取り戻せてこなかったタイプのバンドだろうが、その鬱憤をアップリフティングな楽曲にこれでもかと注入。いつか戻ってくる騒々しい現場を夢見ているかのような、賑やかでエネルギッシュな1枚。モッシュが戻る日こそが真の収穫の時。



10位 サニーデイ・サービス『DOKI DOKI

14thアルバム。大工原幹雄をドラマーに迎えて以降、一気にバンドとしての狂暴性が増したように思うサニーデイ。90年代の名曲群を彷彿とさせる懐かしい温かみを、どこまでも瑞々しく曲に残していく。ノスタルジーと近未来の合わせ絵のような歌詞はSFめいた質感でワクワクする気分をくれる。どんなにトリッキーなアプローチをしようとも曽我部恵一の描く歌に刻まれた恋のときめきが胸にじんわりと広がり、決して青春は終わらないのだと思う。人と人、じゃなくて誰かと何かでも良くて、心を明かし合うその恥ずかしくも誇らしいかけがえのない瞬間はどんな時代をも超える普遍の美しさよ。



9位 ハンブレッダーズ『ヤバすぎるスピード

メジャー3rdアルバム。さすがに感覚的すぎるだろうと笑ってしまうタイトルなのだが、事実頭3曲ぐらいのぶっ飛ばし方は桁外れ。いまや絶滅危惧種となったツインギターの4人組ギターロックバンド、その矜持を感じるつんのめった勢いがある。ルサンチマンは控え目になり、思春期の葛藤でモヤモヤするリスナーを鼓舞することも得意になった彼ら。しかし、本質は一つの30歳を前にした人生のままならなさを叫ぶような楽曲にあるように思う。人間の可能性を信じたい一方、立ちはだかる壁に呆然ともする。枯れきった心でささやかな幸せを願う「東京」から「光」に雪崩れ込むラスト、涙がこぼれる。




8位 ズーカラデル 『JUMP ROPE FREAKS

北海道発3ピースバンドのメジャー2ndアルバム。胸踊るグッドメロディ、うきうきするシンプルなサウンドという可能性だけでまだ行けるポテンシャルを持っているそうだったが、ホーンや鍵盤によってその音世界をより豊かなものにしている。厄介な気持ちやどうにもならないことをあれこれ考えこんでしまう夜を柔らかくほどいていくような温かみと、どうしたって離れられない故郷の街並みや恥ずかしい記憶と結びついていくノスタルジーがたまらなく胸を打つ。トレンド性や機能性が重要視されるシーンだからこそ、僕なんかは口ずさんで気分が良くなるこんな音楽を愛していきたかったりする。



7位 UlulU『UlulU

2015年結成バンドの1stフルアルバム。ガレージロックとも形容できそうなほど荒々しくこざっぱりした楽曲たちで幕を開けるが、重厚な4曲目「イルミナント」から「愛の讃歌」のカバーを経て長尺のロックバラッド「Terminal」に連なる中腹の流れで一気に引き込まれた。ギターソロは必要だ!と叫んでいそうなエネルギッシュなバンドサウンド。後半は開放的な表情も覗かせ晴れやかなフィーリングもある。思い出と生活がくるくる巡る歌詞も親しみやすい一方、歌声はどこか冷えた質感を携えている。熱すぎず、でも冷めすぎない、平成生まれテン年代前半ロック育ちのバランス感覚。快進撃に期待。



6位 ゆうらん船『MY REVOLUTION

2016年結成の5人組バンドによる2ndアルバム。サイケな匂いのフォークロックと思っていると不意に空気を裂くようなアレンジが飛び出し、いつしか小躍りを誘うビートも躍動し始める。そんな幻惑的な聴き心地に酔いしれるインナーワールドの探訪録だ。散文の中にほのかな感傷が立ち上がる歌詞も絶品でそれを過度に切なく聴かせない内村イタル(Vo/Gt)の緩やかな歌唱もマッチしている。褪せた風合いにモダンな感性、ニューレトロなんて言葉じゃ収まりきらないアバンギャルドさが耳を惹く1作。くるりやフィッシュマンズが現れた時に高まった熱を令和で再燃させてくれるのは彼らかもしれない。




5位 RAY『Green

令和元年始動の4人組女性アイドルグループによる2ndアルバム。シューゲイザー×電子音楽×アイドルポップという成分表示に惹かれて聴いたのだが、そんな明瞭なラベリング以上の美しい詩情とロマンチシズムが滴る大巨編。トラックが変わる度にハッと息を呑む絶景が目前に広がるので打ちのめされながら聴き終わった。薄暗く、そして切ないメロディという統一感はあるがダンスビートからロックバラードまで幅広いトラックを展開し、変拍子などは用いない直情的なバンドサウンドも胸を打つ。そして何より4人の歌声。憂い、神秘、祈り、悲しみが息づきこの世界の語り手としてあまりにも雄弁。



4位 633『SIX HUNDRED THIRTY THREE

正体不明、謎の覆面バンドによる1stアルバム。ポップパンクとエモを掲げ、キュンとなるほどにどストレートに快楽中枢をくすぐるアクティブな楽曲揃い。野外フェスの昼帯でワイワイはしゃぎたくなるようなパーティ感と良い意味での雑多さがある。まぁ聴いていただけばこのバンドがどういう成り立ちなのかはすぐに分かるのだが、これはつまりライブカルチャー復権への手荒い祈りなのだと解釈している。ギターとベースとドラムがあって、それをめいっぱいドカンと鳴らすこと。バンドが持ってるプリミティブな生き甲斐を祝福すべく辿り着いた21st CENTURY ROCK BANDの新たなアウトプット。



3位 ROTH BART BARON『HOWL

7thアルバム。この1年で多くのタイアップを引き受けたロット。そこで獲得したポピュラリティや広がりを分け隔てなくアルバムに結実させた結果、ここ数年の作品では最も肉感的で祝祭的なスケール感が宿っている。神秘的で荘厳でなサウンドデザインも迫力ある音の中に溶け込み、人間の根源的な昂りを誘う1枚に。吠える、という能動的なアクションをメインモチーフに何かを求め訴え続ける表現の泥臭さと輝きを体現しており、「ONI」や「MIRAI」といったギターワークが新鮮な楽曲もその象徴のように響く。楽団としての高貴さと、バンドとしてのアグレッシブさ、今のロットは何でもできる。




2位 春ねむり『春火燎原

2016年に活動開始したポエトリーラッパー/トラックメイカーによる2ndフルアルバム。とてつもない気迫をもって届けられる激情の62分。教室の片隅から目前に横たわる社会までをシームレスに繋ぎながら、違和感に満ちた世界の胸ぐらを掴む言葉を放射し続けていく。イノセントなボーカルと憤怒するシャウトが入り乱れる歌唱も聴き手を魂ごと湧き立たせてくる。デスクトップで生まれた音楽がこれほどまで肉体と思考を伴って届けられる衝撃も強く、たった1人でも楽器を持たずとも思考と肉体をもってすればロックンロールしてしまえるのだと実感する。とにかくライブを観てみたくなる1作。


1位 ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス

10thアルバム。どう足掻いたとてやはり我々は分かり合えない。じゃあ冷笑して終わりにしますか。ではなく。音楽を通してであれば僅かにでも繋がり認め合うことはできないだろうか。そんな意思に呼応するように多数のゲストミュージシャンを招いたり、シンセベースやトークボックス、メロトロンの導入で多彩な音像を追求したり、全編に渡って風通しの良い作品に仕上がった。皮肉とユーモアが交互に訪れ、絶望と希望も綯い交ぜな歌詞はどこか拠り所を探しているように聴こえるが最後の「Be Alright」が肯定する"LIVE"こそが答えなのだろう。またいつか笑って出会うためのロックミュージック。


《2022年ベストアルバムトップ50 リスト》

1位 ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス』
2位 春ねむり『春火燎原』
3位 ROTH BART BARON『HOWL』
4位 633『SIX HUNDRED THIRTY THREE』
5位 RAY『Green』
6位 ゆうらん船『MY REVOLUTION』
7位 UlulU『UlulU』
8位 ズーカラデル 『JUMP ROPE FREAKS』
9位 ハンブレッダーズ『ヤバすぎるスピード』
10位 サニーデイ・サービス『DOKI DOKI』

11位 04 Limited Sazabys『Harvest』
12位 For Tracy Hyde『Hotel Insomnia』
13位 ELLEGARDEN『The End of Yesterday』
14位 リーガルリリー『Cとし生けるもの』
15位 4s4ki『Killer in Neverland』
16位 Cody・Lee(李)『心拍数とラヴレター、それと優しさ』
17位 スカート『SONGS』
18位 ナードマグネット『アイム・スティル・ヒア』
19位 羊文学『our hope』
20位 マカロニえんぴつ『ハッピーエンドへの期待は』

21位 lyrical school『L.S.』
22位 あいみょん『瞳に落ちるよレコード』
23位 SAKANAMON『HAKKOH』
24位 Kabanagu『ほぼゆめ』
25位 ヒトリエ『PHARMACY』
26位 水曜日のカンパネラ『ネオン』
27位 HIJOSEN『蛹は震える』
28位 go!go!vanillas『FLOWERS』
29位 warbear『Patch』
30位 レキシ『レキシチ』

31位 サカナクション『アダプト』
32位 柴田聡子『ぼちぼち銀河』
33位 おとぎ話『US』
34位 三浦透子『点描』
35位 Limes『ライマー』
36位 私立恵比寿中学『私立恵比寿中学』
37位 宇多田ヒカル『BADモード』
38位 MIZ『Sundance Ranch』
39位 中村佳穂『NIA』
40位 黒子首『ペンシルロケット』

41位 tofubeats『REFLECTION』
42位 清竜人『FEMALE』
43位 藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』
44位 ドレスコーズ『戀愛大全』
45位 milet『visions』
46位 アルカラ 『キミボク』
47位 関取花『また会いましたね』
48位 Nelko『How Do You Feel?』
49位 森七菜『アルバム』
50位 えんぷてい『QUIET FRIENDS』


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