聖矢

‘98 新卒入社1年半でうつ病。優しさを考える。好きなのはラジオと読書。散歩も。

聖矢

‘98 新卒入社1年半でうつ病。優しさを考える。好きなのはラジオと読書。散歩も。

マガジン

  • 優しさ2.0

    うつ病をきっかけに、僕たちは優しさとどう向き合い、優しさをどう扱えばいいのか。 考えてみる事にしました。

記事一覧

うつ病がきっかけで100冊の本を読んだ話。

2023年11月15日。うつ病と診断された。 それから読書に拍車がかかり先月100冊を超えた。 これをきっかけに、読んだ本の一覧を残すとともに自分にとって「読書と…

聖矢
3日前
14

王様のブランチからの脱出

王様のブランチに映る最新スイーツ。レモンクリームの酸味がテレビ越しでも伝わってくる。味覚や嗅覚を刺激するビビッドで鮮やかなクリームの色から目を逸らすと、窓の外に…

聖矢
1か月前
7

「状況が悪い」と「状況は改善されている」は両立する。

タイトル通り、「状況が悪い」と「現状は改善されている」は両立する。 例えば、僕は去年の11月からうつ病を患っている。やる気、食欲の低下、人と関わることへのトラウマ…

聖矢
1か月前
14

言葉に頼らず、それでも寄り添い合えるか

今日も小説を読む、映画を見る、漫画を読む。 そうやって多くの言葉に出会い、その言葉たちがスクランブル交差点を渡る人間達のように、どこにも誰にも当たらずスムーズに…

聖矢
2か月前
37

人口密度と生きづらさ。

引き続きうつ病療養生活を続けている。 働いていた名古屋を離れ、地元に引っ越した。 都市部とは程遠く、高収入を喧伝する色とりどりのトラックも走っていなければ、東西…

聖矢
2か月前
44

車窓に見つけた紫陽花と朧げな井の頭線

あと2分で西永福駅に着く京王井の頭線。この電車に揺られていると山手線や小田急線じゃ描き出せない複雑なコンテクストが電車の揺れに身を任せて脳味噌からポタリポタリ、…

聖矢
2か月前
43

いい会社に入るための、いい大学に入るための、いい高校に入るための勉強

そのために勉強を頑張ってきた。いい会社に入るためには有名な大学に入る必要があると。 そんな大学に入るためには進学校と呼ばれるような、受験に力を入れている高校に行…

聖矢
2か月前
109

雨が上がり,蜘蛛の巣の中に僕がいた。

灰色の雲が通り過ぎた頃、雨を纏った蜘蛛の巣は何か小洒落た装飾品を身につけたようで、蜘蛛の糸と糸が交差するところには水滴が光を反射していた。虫と雨が創った小さな粒…

聖矢
2か月前
35

うつ病と診断されて6ヶ月の現状

たとえば、今すれ違ったカップルが家に帰ってから、一緒にご飯を食べて、キスをして、夜の営みをして、そうやって生活をつづける中で、自然と脳内に溢れてくるはずの神経物…

聖矢
3か月前
107

その多様性、ダウト。

皆に一通りトランプが配られたようなので、自分の手札を確認する。 (さんかくのじゅうなな!?)心の中で静かに叫ぶが誰にも言えない。▲17という見慣れない、存在しないは…

聖矢
3か月前
73

増える被害者、増えない加害者。

「○○君の事件に伴い、本校でも全生徒、全教員を対象にアンケートを実施しましたが我々の学校にいじめの存在は認められませんでした。」 遺書に学校が辛いと書いてあった…

聖矢
3か月前
44

段々とわからなくなる他人のこと

他人の痛みにいつからか鈍感になってゆく。 自分も知っていたらしい痛みなのに、まるで人生で触れたことのない痛みのように感じられて、相手は何やら傷を見せびらかしては…

聖矢
4か月前
94

「心の傷」と「想像」

自分だけが感じている心の痛みは誰にもわからない。 「誰か私の心の傷に気づいて」と他者を求めるのに、 「その気持ちわかるよ」とか言われると、 「わかった口聞くなよ」…

聖矢
4か月前
57

街並み照らすヤツらだが、情熱はある。

大学の頃、仲のいい5人組で考えた遊びが、サークルの代表にバレて、それサークルのみんなでやろうよ!となった途端、その遊びがつまらなくなった。 好きなバンドがiTunes…

聖矢
4か月前
48

「まえならえ教育」VS「人と比べず自分らしい生き方」

「でもさ、それは人と比べることじゃなくない?自分がそれでいいと思えればそれでいいんだよ」 いやわかってるわ! 何度も言われたわ! お前が世界で初めて気づいた人間の…

聖矢
4か月前
33

心の20%と体の80%

妹が就活を迎えている。 就活を経験した身として、できる限り力になりたいとは思っているが自分の経験したこと、感じたことが全てではないし、時代も変わっていると思うの…

聖矢
4か月前
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うつ病がきっかけで100冊の本を読んだ話。

うつ病がきっかけで100冊の本を読んだ話。

2023年11月15日。うつ病と診断された。
それから読書に拍車がかかり先月100冊を超えた。
これをきっかけに、読んだ本の一覧を残すとともに自分にとって「読書とは」についても一度書き残したい。

どうしてうつ病をきっかけに読書の時間が増えたのか

辛かったという記憶は脳にこびりついているのにそれがどうやってどんな状態に陥ったかは詳らかに表せなくなってきている。
うつ病と診断されて9ヶ月がたった。

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王様のブランチからの脱出

王様のブランチからの脱出

王様のブランチに映る最新スイーツ。レモンクリームの酸味がテレビ越しでも伝わってくる。味覚や嗅覚を刺激するビビッドで鮮やかなクリームの色から目を逸らすと、窓の外には水田に群れる苗が先週よりもまた一つ背を伸ばして夏の風に揺られている。

この街に最新スイーツは届かない。東京を発端に都市がカヌレで賑わう頃、道の駅から2キロ離れた路面に小さなマリトッツォの専門店ができて、「ああ去年だっけ、一昨年だっけ、こ

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「状況が悪い」と「状況は改善されている」は両立する。

「状況が悪い」と「状況は改善されている」は両立する。

タイトル通り、「状況が悪い」と「現状は改善されている」は両立する。

例えば、僕は去年の11月からうつ病を患っている。やる気、食欲の低下、人と関わることへのトラウマ、人が多くいる場所や満員電車に乗ると動悸や冷や汗の症状が出たり、不眠症にもいまだ悩まされている。僕の状態は悪い。

しかし、朝起きると同時に込み上げる吐き気は無くなった。都会から地元の農村地帯に戻ってきて、隣の家の人や街をすれ違う人とと

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言葉に頼らず、それでも寄り添い合えるか

言葉に頼らず、それでも寄り添い合えるか

今日も小説を読む、映画を見る、漫画を読む。
そうやって多くの言葉に出会い、その言葉たちがスクランブル交差点を渡る人間達のように、どこにも誰にも当たらずスムーズにすれ違っていけばどれだけ言葉を浴びてもただニコニコと頷いていられるのだが、僕の場合心にデコボコやざらつきが多いからか、それともたまたま僕の浴びる言葉が歪な形をしているのか、どちらであれ、僕の頭の中で言葉達がスムーズに通り過ぎて行くことはほと

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人口密度と生きづらさ。

人口密度と生きづらさ。

引き続きうつ病療養生活を続けている。

働いていた名古屋を離れ、地元に引っ越した。
都市部とは程遠く、高収入を喧伝する色とりどりのトラックも走っていなければ、東西南北どこを見ても山か川で、緑色と水色に画一化されたような町だ。都会に住む子供達は巨大広告に彩色された街を見て僕よりも若く、多くの色を知ったのかもしれない。

いくつかの不便さと引き換えに家族ごと確立した土地を得たこの町では、同じ土地に上下

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車窓に見つけた紫陽花と朧げな井の頭線

車窓に見つけた紫陽花と朧げな井の頭線

あと2分で西永福駅に着く京王井の頭線。この電車に揺られていると山手線や小田急線じゃ描き出せない複雑なコンテクストが電車の揺れに身を任せて脳味噌からポタリポタリ、タプンタプン、と溢れてくる。僕の大好きな映画の主人公たちはなぜみんな京王線沿いに住むのだろう。車窓に見つけた紫陽花に映画のストーリーが勝手に重なり、その鮮やかな紫色や水色に意味を付け加えていく。電車は西永福駅に着いた。

久しぶりの京王線だ

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いい会社に入るための、いい大学に入るための、いい高校に入るための勉強

いい会社に入るための、いい大学に入るための、いい高校に入るための勉強

そのために勉強を頑張ってきた。いい会社に入るためには有名な大学に入る必要があると。
そんな大学に入るためには進学校と呼ばれるような、受験に力を入れている高校に行くのがいいらしい。

それが人生のために素晴らしい選択だと信じてやまなかった。
そのためにはもちろん中学生の頃からたくさん勉強もしなければならないだろう。

僕は高校に入るときに初めて受験というものを経験したけれど、周りを見れば中学受験や、

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雨が上がり,蜘蛛の巣の中に僕がいた。

雨が上がり,蜘蛛の巣の中に僕がいた。

灰色の雲が通り過ぎた頃、雨を纏った蜘蛛の巣は何か小洒落た装飾品を身につけたようで、蜘蛛の糸と糸が交差するところには水滴が光を反射していた。虫と雨が創った小さな粒なのに、空も木も、ビルも道路も、僕も他人もその中に映っていて、僕にはそれが、その水滴が僕のように見えた。

(上の画像がイメージです。)

自分の存在を疑うときは、もっとイメージ的で、宇宙的で、「水晶に映ったあなたの前世はケセランパセラン…

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うつ病と診断されて6ヶ月の現状

うつ病と診断されて6ヶ月の現状

たとえば、今すれ違ったカップルが家に帰ってから、一緒にご飯を食べて、キスをして、夜の営みをして、そうやって生活をつづける中で、自然と脳内に溢れてくるはずの神経物質を、僕はカタカナが3つか4つ、もしくは6つか7つ、幾つであれ、たまたま落ちていたのを拾って組み合わせたような名前の錠剤を毎晩飲むことで補っている。

薬は魔法みたいで、眠くなったり、足元がふらついたり、気分が良くなったり悪くなったり、いつ

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その多様性、ダウト。

その多様性、ダウト。

皆に一通りトランプが配られたようなので、自分の手札を確認する。

(さんかくのじゅうなな!?)心の中で静かに叫ぶが誰にも言えない。▲17という見慣れない、存在しないはずのトランプが手元に15枚もある。

それを裏返しにして、3と言ってみたり10と言ってみたり、そうやって、いつか誰かに「ダウト!」と言われまいか、ドキドキしながら生きている。

「いやぁ、最近はいつパワハラって言われるか分からないから

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増える被害者、増えない加害者。

増える被害者、増えない加害者。

「○○君の事件に伴い、本校でも全生徒、全教員を対象にアンケートを実施しましたが我々の学校にいじめの存在は認められませんでした。」

遺書に学校が辛いと書いてあったのに。
被害者が存在するのに加害者は存在しない。
これじゃまるでマジックだ。

パワハラ、セクハラ、モラハラ、カスハラ、増える虐待、毒親、アダルトチルドレン、親ガチャ、入れない保育園、上司ガチャ、部下ガチャ。

SNSに被害届を提出。

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段々とわからなくなる他人のこと

段々とわからなくなる他人のこと

他人の痛みにいつからか鈍感になってゆく。

自分も知っていたらしい痛みなのに、まるで人生で触れたことのない痛みのように感じられて、相手は何やら傷を見せびらかしては痛みを訴えているが、何を言っているのかさっぱりわからずまるで宇宙人との会話。

それでもなんちゃらハラスメントだとか毒親とか言われたら困るから、とりあえず「それは大変だね」と伝え、それ以降その件については触れないようにした。

僕はよくK

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「心の傷」と「想像」

「心の傷」と「想像」

自分だけが感じている心の痛みは誰にもわからない。
「誰か私の心の傷に気づいて」と他者を求めるのに、
「その気持ちわかるよ」とか言われると、
「わかった口聞くなよ」と他者を遠ざけてしまう。

痛みを抱えていることを知って欲しいのに、
決して私の何かを理解された気にはなってほしくない。
これはわがままなのか。

メンタルヘルスから生まれたのに、その略語のルがラに変わった途端に厄介でめんどくさいやつに変

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街並み照らすヤツらだが、情熱はある。

街並み照らすヤツらだが、情熱はある。

大学の頃、仲のいい5人組で考えた遊びが、サークルの代表にバレて、それサークルのみんなでやろうよ!となった途端、その遊びがつまらなくなった。

好きなバンドがiTunesのランキングを駆け上がり、夏になるとオフショルとショートパンツでフェスにいくような知り合いのストーリーに「最近のイチ推し」と歌詞のスクショが載ったときから、聴かなくなってしまった。

そんな自分が情けない。本当に嫌になる。
売れてる

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「まえならえ教育」VS「人と比べず自分らしい生き方」

「まえならえ教育」VS「人と比べず自分らしい生き方」

「でもさ、それは人と比べることじゃなくない?自分がそれでいいと思えればそれでいいんだよ」

いやわかってるわ!
何度も言われたわ!
お前が世界で初めて気づいた人間の真理みたいに言うな!
あとお前、自分の言葉で誰かに影響を与えようとしてる時、口から太字が出てるぞ!
上の文見てみろ!
な?
言葉が太線になってるぞ!
てかなんなら自分の声にエコーかけて周りの照明落としてスポットライト当てながら喋ってるだ

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心の20%と体の80%

心の20%と体の80%

妹が就活を迎えている。
就活を経験した身として、できる限り力になりたいとは思っているが自分の経験したこと、感じたことが全てではないし、時代も変わっていると思うのでとても歯痒い。

就活中に「これは自分の人生の中で相手にとって都合がいい部分を切り取って相手にとって都合がいい人間を演じるゲームなのだ」と感じた。

「なんで?」「どうしてそう考えたの?」「いつそう思ったの?」

徹底的にWhyを問うてく

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