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無駄なことなんてない ハチドリのひとしずく

以前、ドイツのゴミ捨てシステムについてnoteに書いた。

生ゴミの処理方法については今もどうにかできないか考え続けている。ひとまず生ゴミはできる限り乾燥させたり、可能な限りゴミの出ない生活を心掛けてはいるが、自分のこの行為に果たして意味があるのかと思わずにはいられない。

私が住んでいるマンションのゴミ捨て場を見るだけでも、明らかに濡れたままのシャンプーの容器や食品トレーがそのまま可燃ごみに突っ込まれていたりする。丸めた広告が半分以上を占めるゴミ袋や、バスタオルらしきものと紙箱が40リットルの袋に詰められていたこともある。

私一人が何か行動を起こしたところで、それがより良い未来のためになっているのだろうか。そんな喪失感を抱えていたときに読んで、涙が出そうになった。

ハチドリのひとしずく いま、私にできること 辻信一

「ハチドリのひとしずく」は、アンデス地方に住む先住民族の間に伝わる物語だ。物語の内容自体はこちらのHPでも読むことができるので、このnoteを開いてくれたあなたにも、是非読んでもらいたい。そして、できればこのnote自体を、最後まで読んでいただきたい。伝えたいことがどうしても最後になってしまうので…

物語自体は非常に短い。森で火事が起こり、動物たちが一目さんに逃げる中、一羽のハチドリだけが逃げずに消火活動を行なっている。「たった一雫の」水を何度も行ったり来たりしながら運ぶハチドリを見て、「そんなことをしても意味はない」と動物たちは嘲笑する。物語の最後は、そんな動物たちに返したハチドリのセリフで終わる。

「私は、私にできることをしているだけ」

このセリフを読んで、私のしていることはまさに、ハチドリが運ぶ一雫の水なのだと思った。

私とあなたが取る行動の一つが、世の中を変える

遠い昔、ペットボトルのキャップやフィルムを剥がして分別のゴミ箱に捨てたとき、当時付き合っていた彼は私にこう言った。「真面目だね、そんなことしたって意味ないのに」。

水質汚染について、森林伐採について、温暖化について、義務教育の中でこうした問題について一通り学んだ人は多いと思う。ニュースやコラムで見かける度、このままではいけない、と思う人もいるだろう。私は小学生の頃に知ったこの「地球が抱えている未来の問題」について、ずっとずっと意識し続けてきた。ゴミの分別、無闇に排水溝に汚れたものや油を流さない、消費電力に気をつけるなど、大人になって自分で生活するようになってからも色々してきたつもりだった。

しかし、彼のような人もいるのだなぁと、悲しい気持ちになった。私がこうした行動をとるのは真面目だからとか、意識が高いからだとか、そんなことではないのだ。

私は、私にできることをしているだけ。

ハチドリのセリフ、そのままなのだ。「そんなことをしても意味ない」と言う言葉は、彼一人から言われただけではない。友達にも言われたことがあるし、会社でも言われたことがある。彼らは、何もしないで諦めているだけのように思う。自分が取った行動が、目に見える結果として現れていないから。

この本は、冒頭にハチドリの物語が、その後に世界中で活動している「ハチドリ」たちの紹介と、私たちが運ぶことのできる「ひとしずく」が、どれくらい意味のあることなのかが数値で紹介されている。日々、些細なことでも気をつけて続けている行動が、以外にも大きな力となっていることに感激した。

目に見える結果、体感できる結果が得られないからといって諦めてしまう、社会全体を包む無力感。この本の中では、この無力感さえ取り払うことさえできれば、目標は思った以上に早く解決できるのではないかと説いている。

私は毎日電気を使うし、パソコンもスマホは手放せないし、買い物は好きだし、牛肉も好きだし、今日だって冷房を使っているし、自然保護活動のために植林を行う活動をしているわけではない。ただの一般人だ。それなりに色々な欲があり、夜更かしして本や映画を見ることだって、やりたいことをやりたい放題する時だってある。本当に全てに対して責任を持って、地球に優しい生活を徹底することは難しいと思う。

しかし、できることはできる限りする。ゴミは分別する、コーヒーやお茶の出涸らしを乾燥させる、生ゴミが極力出ないようにする、カレーを作った鍋は重曹とウエスで綺麗に拭いてから洗う、冷房は28度にして暖房は20度に設定るなど、普段の生活の中でできる「ひとしずく」の活動は沢山あるのだ。

「ひとしずく」を、あなたにも

私にできることは、もう一つある。この「ひとしずく」の大切さを、誰かに伝えることだ。このnoteをここまで読んでくれている人は少ないかも知れない。最後まで読まずに切り上げてしまった人もいるかも知れないが、「ひとしずく」が特別なことではなく、誰にでもできることなのだということ、そして思った以上に大きな力となっていることを少しでも感じてもらえたら嬉しい。

そして今から、できることを「ひとしずく」、ポトリと地球に落としてあげて欲しい。誰かに伝えてほしい。この本を読んで欲しい。


一羽のハチドリが別なハチドリを仲間にし、さらにそのハチドリが別なハチドリを仲間にしていく。ハチドリが増え、ひとしずくが雨のように森に降り注ぐーーそんな未来を、私たちは作ることができる。



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