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映画『ダンサー イン Paris』をみる。

「弁セレ」以来となるシネ・リーブル梅田であります。

『スパニッシュ・アパートメント』や『パリのどこかで、あなたと』などで知られるセドリック・クラピッシュ監督の最新作。パリ・オペラ座のバレエダンサーとして活躍するマリオン・バルボーが今回エリーズを演じている。またコンテンポラリーダンスに馴染み深い方ならご存知の、ホフェッシュ・シェクターが本人役として劇中に登場してくるところもポイントです。

ドゥミ・プリエ。ポアント。ルルベ。何やら聞き慣れない単語が並びます。息遣いや、床を叩くトゥシューズの音色。バレエ作品「ラ・バヤデール」を舞台内外から台詞無しで描くオープニング15分間は、現場経験のない主宰にとっても非常に刺激が大きかった。ダンスをテーマとした映画とあって終始テンポ感に優れ、有機的身体的な質感が崩れない。あっという間の2時間。

エトワールになる夢を追いかけていたエリーズはある日の公演前恋人の浮気現場を目撃してしまう。心のバランスを失った彼女はステージの上で転倒、医師からの診断結果は「足首の剥離骨折」でした。捻挫癖を押して舞台一筋に生きてきた、ただこれ以上無理をすれば一生踊れなくなるかもしれない。治療を続けつつ新たに料理係のアシスタントを始めることに。

ホフェッシュ率いるダンスカンパニーの一員とは以前パリ市内でブレイキンバトルを見た際に、言葉を交わしていた。技術や表現形態に共通形式を持たないのが「コンテンポラリーダンス」の大きな特徴の一つ、圧倒的に自由度が高いんですね。靴を履いて踊っても、靴下でも、素足でも構わない。時折ヒップホップダンスのようにも、カポエラのようにも見える瞬間があった。

色んな人間がいて、色んなルーツが許容される。バレエ経験者も当然いた。調理シーンとダンスの練習風景が交錯するシークエンス、粋な演出でした。例えば素材の味を活かした身体に優しいメニューのことを「陰陽調和料理」なんて言ったりする。自然と身体が喜ぶ味、温めたり冷ましたりしてくれる魔法のような存在。ダンスを踊るということも本来、そうあるべきかも。

原題である『En Corps』英訳すると「体の中で(in the body)」でしょうか。不調和に自覚的であるからこそ、自然と、心も身体も調和に向かっていく。調和という「波紋」が、あくまで互いの個性を認め合った上で、冷え込んだ家族や友人関係まで広がっていく。そんな感触が非常に心地良い1本でした。ホフェッシュの代表作で締め括られるラストは、とにかく圧巻です。鳥肌。


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