桜井竜生
漢方の診断はイメージで行うことが西洋医学と比べて多い。例えば、「女性で更年期障害でストレスが溜まっている」とうイメージがあると加味逍遥散が効くというような具合だ…
先月、足指の骨を折った。顕微鏡の台座が足に落ちてきたのだ。骨折したまま、重い荷物を動かしたので少し骨がずれてしまい翌日は足の甲まで腫れてしまった。さすがに怖く…
心と身体は一体だとよく言われる。漢方の世界では「心身一如」などと言われる。一般にはストレスを受けると身体に悪いなどの意味で捉えられていることが多い。でも漢方診療…
漢方を勉強する為によく通った本屋がある。変わった本屋でマンションの一室で営業している為、外からは分からない。一見の客は絶対に来ない。私も人から紹介されて知った。…
友人の病院の待合室で私が待っていた時の話だ。横のソファーで何やら初老の女性がカバンの中をゴソゴソ触っている。何か見られたくない様子でカバンの中で作業をしているの…
昔と比べて寿命が長くなった。一般的には医学が発達したことが大きな理由だと思われている。私もそう思っていた。 著名な医学雑誌 New England journal of Medicine…
私が専門の漢方医学の古典の一つに黄帝内経(こうていだいけい)がある。大きく言えば環境に合わせて生きるのが健康に良いというような内容だ。春は芽生えの季節。陽気に満…
先日、北鎌倉 臨済宗円覚寺管長 横田南嶺老師と対談した。孤独死がなぜ嫌なのかの話をしたのだ。その時に「知る」ということについて考えさせられた。 子供の頃から受験…
古代中国の名医と言えば扁鵲(へんじゃく)である。扁鵲のことは司馬遷の書いた中国の歴史書「史記」の中で扁鵲倉公伝にて記されている。名医の代名詞だ。立派な医師が現れ…
67歳 男性 上場企業 代表取締役 妻の知り合いが私に以前かかったことがあることから来院。主訴は「元気が欲しい」 1年前から疲れ易かった為、大学病院を受診し全身…
漢方医をやっていて気付くことがある。 病名が分からない人が意外に多いということだ。「病名が分からないが診てくれるか」という問い合わせもあったぐらいだ。勿論、診る…
最新のビッグデータを使うと、人の大きな傾向が分かること、そしてそのデータが古代の書「黄帝内経」(こうていだいけい)に、既に書かれていたことを前号で書いた。何とな…
最近、大手電機メーカーの研究員と、研究の内容を議論する機会があった。そこで、「Big data」(ビッグデータ)を使った興味深い話を幾つか聞いた。この会社は血圧計や睡眠…
葛根湯(カッコントウ)を飲んだことがあるだろうか? 葛根湯は漢方の代表格で、漢方を飲んだことがない人でも、名前くらいは知っている。 市中の開業医の8割以上で漢…
漢方薬の世界では、心を大切にする。 例えば風邪をひいても、ただ体調が悪いと感じるだけの人もいれば、「自分は身体が弱い」と落ち込む人がいる。この二つのタイプでは…
「子どもの気持ちが分からない」と親から相談されることがよくある。今回はそんな症例だ。 14歳・中学生。男子―。生徒会に所属する優等生だ。クラブはサッカー部所属だ…
2023年1月23日 18:39
漢方の診断はイメージで行うことが西洋医学と比べて多い。例えば、「女性で更年期障害でストレスが溜まっている」とうイメージがあると加味逍遥散が効くというような具合だ。そこには、「上の血圧が160以上もあるから薬を出しましょう」などという検査数値を判断材料にする過程はない。漢方にあるのはイメージだ。だから漢方を人に伝えるのも難しい。これは大きな問題を含んでいる。イメージなので人に伝えることが難しいのだ
2023年1月16日 17:05
先月、足指の骨を折った。顕微鏡の台座が足に落ちてきたのだ。骨折したまま、重い荷物を動かしたので少し骨がずれてしまい翌日は足の甲まで腫れてしまった。さすがに怖くなってレントゲンを撮ったら見事に割れていた。その後、アルミ板を足に敷き、そこに足指と足全体をテープで固定していた。骨折には治り易い部位と難治性の部位がある。鎖骨骨折などは治り難い。場所によっては血流や固定のし難さ等の理由で治り難い場所があ
2022年12月22日 16:18
心と身体は一体だとよく言われる。漢方の世界では「心身一如」などと言われる。一般にはストレスを受けると身体に悪いなどの意味で捉えられていることが多い。でも漢方診療をしているとそんな症例を沢山経験する。 二四歳女性 事務職 5年ほど前から膠原病で病院に通院している。症状が改善されない為、漢方外来に来院した。話を聞いてみると「痛みで仕事もできない状況だ」という。早く復帰したいという。1年の通院後、膠
2022年11月11日 15:27
漢方を勉強する為によく通った本屋がある。変わった本屋でマンションの一室で営業している為、外からは分からない。一見の客は絶対に来ない。私も人から紹介されて知った。 先輩に連れられて漢方を勉強する為にこの本屋に多くの研修医が訪れていた。漢方専門の本屋は珍しく、当時、初学者の私はよく通ったものだ。漢方の本は高い。発行部数が少ない為に一冊最低五千円はする。また内容が難解で、自分の力量に合った本かは、暫
2022年11月7日 15:24
友人の病院の待合室で私が待っていた時の話だ。横のソファーで何やら初老の女性がカバンの中をゴソゴソ触っている。何か見られたくない様子でカバンの中で作業をしているのだ。何もすることが無かった私は横の女性に興味を持って観察していた。暫くするとその女性はカバンの中では上手く行かなかったとみえてカバンの外で作業をし始めたのだ。彼女はIC 音声レコーダを操作していたのだ。カバンの外で録音機の説明書を見なが
2022年10月27日 15:51
昔と比べて寿命が長くなった。一般的には医学が発達したことが大きな理由だと思われている。私もそう思っていた。 著名な医学雑誌 New England journal of Medicine の編集長Ingelifinger はいろいろな症例の治療経過を追跡すると「近代医療を適応しても80%の患者は別によくも悪くもならず、あるいは自然に落ち着くところに落ち着くことを発表した。医師の働きはそれが有害
2022年9月30日 16:25
私が専門の漢方医学の古典の一つに黄帝内経(こうていだいけい)がある。大きく言えば環境に合わせて生きるのが健康に良いというような内容だ。春は芽生えの季節。陽気に満ちあふれ、いろいろなものが、外に出ていくような季節だ。だから四月から新学期が始まるようにしているのだろう。秋からは新しい分野に手を伸ばそうという感じではなく、少しづつ動きを少なくして冬眠、家の中で過ごす時間が長くなるイメージだ。このように
2022年9月22日 10:09
先日、北鎌倉 臨済宗円覚寺管長 横田南嶺老師と対談した。孤独死がなぜ嫌なのかの話をしたのだ。その時に「知る」ということについて考えさせられた。子供の頃から受験勉強をしたり、医師国家試験を受けたり、専門医の資格を取ったり、論文を書いたりと私は今まで知識を集めることを熱心に行ってきた。それはどこか、後ろめたいというか、下世話というか、競争心を煽られるというか、優劣の話に近いと思っていた。医者の中でも
2022年9月16日 17:07
古代中国の名医と言えば扁鵲(へんじゃく)である。扁鵲のことは司馬遷の書いた中国の歴史書「史記」の中で扁鵲倉公伝にて記されている。名医の代名詞だ。立派な医師が現れると扁鵲の再来などと表現される。扁鵲は春秋戦国時代の人で紀元前三~八世紀に活躍したとされる。ただ、活躍期間が長すぎて複数の医師団の総称だとする説もある。いずれにしても漢方や鍼灸の祖師である。その中に医者が治療しても患者の病気が治らないパター
2022年9月9日 09:18
67歳 男性 上場企業 代表取締役 妻の知り合いが私に以前かかったことがあることから来院。主訴は「元気が欲しい」1年前から疲れ易かった為、大学病院を受診し全身の精密検査をしたが多少糖尿病を示唆する結果がでたものの食事療法で対応できる程度の軽いものだった。それ以外は異常が無かった。精神科にも回されたが、睡眠薬を処方されただけで、翌日頭がぼーっとするからという理由で今は処方された薬を飲んないらしい。
2022年9月8日 15:24
漢方医をやっていて気付くことがある。病名が分からない人が意外に多いということだ。「病名が分からないが診てくれるか」という問い合わせもあったぐらいだ。勿論、診ると答えた。現代医学では、色々な病気の原因や病態をパターン化し、それぞれの対応として治療が存在する。その為、そのパターンに無い場合、医者は困ってしまう。現代医学では病名が分からなければ、治療は進められない。皆さんも病院に行くとまず検査され
2022年8月29日 15:30
最新のビッグデータを使うと、人の大きな傾向が分かること、そしてそのデータが古代の書「黄帝内経」(こうていだいけい)に、既に書かれていたことを前号で書いた。何となく古来、感覚で言われていたことが、最近の研究で数字化されていたのだ。 「自然のリズムに従えば健康だ」と「黄帝内経」は言う。自然のリズムとば、季節や年齢など時間の経過で変化していく要素に自分を合わせていけば、健康に生きることが出来るというも
2022年8月25日 16:39
最近、大手電機メーカーの研究員と、研究の内容を議論する機会があった。そこで、「Big data」(ビッグデータ)を使った興味深い話を幾つか聞いた。この会社は血圧計や睡眠計のメーカーだ。医療機器も開発している。 最近の家庭用血圧測定機はかなり進化しており、測った血圧をインターネット経由でサーバーに送られ、そこで記録されるのだ。もちろん、ユーザーは自分の血圧しか見ることができないが、サーバーには
2022年8月22日 19:44
葛根湯(カッコントウ)を飲んだことがあるだろうか? 葛根湯は漢方の代表格で、漢方を飲んだことがない人でも、名前くらいは知っている。 市中の開業医の8割以上で漢方薬を処方している現在、どこかで漢方を飲んだことがある人がほとんどであろう。 でも、葛根湯が良く効いて風邪が治ったという人は、あまり聞いたことがない。 以前、医学部の漢方の授業を行った際、学生全員に「漢方薬を自分で飲んで良く効いた経験が
2022年8月18日 15:02
漢方薬の世界では、心を大切にする。 例えば風邪をひいても、ただ体調が悪いと感じるだけの人もいれば、「自分は身体が弱い」と落ち込む人がいる。この二つのタイプではそれぞれ違う漢方薬を選ぶことになる。体調の狂いは同じでも、そこから脱出させるために免疫をつけさせるには、人によって漢方を使う方法が違うということだ。 これはなにも病気の場合だけではない。今日、雑誌の取材があった。「漢方で痩(や)せる」とい
2022年8月15日 15:13
「子どもの気持ちが分からない」と親から相談されることがよくある。今回はそんな症例だ。 14歳・中学生。男子―。生徒会に所属する優等生だ。クラブはサッカー部所属だ。主訴は脱毛だ。 初診は、「子どもが学校の行事で来られない」とのことで母親が来院した。半年前から脱毛が酷(ひど)く、五百円玉大の脱毛班が複数頭部にあるとのことだった。 スマートフォンで撮った写真を何枚か見せてもらった。確かに直径3㌢前