病名がわからなくても 想像以上のストレス 漢方診療日記㊶

漢方医をやっていて気付くことがある。
病名が分からない人が意外に多いということだ。「病名が分からないが診てくれるか」という問い合わせもあったぐらいだ。勿論、診ると答えた。
現代医学では、色々な病気の原因や病態をパターン化し、それぞれの対応として治療が存在する。その為、そのパターンに無い場合、医者は困ってしまう。現代医学では病名が分からなければ、治療は進められない。
皆さんも病院に行くとまず検査されることが多いと思う。お腹が痛いといって病院に行けばまず、血液検査、レントゲン、場合によっては便潜血検査や大腸カメラに進むことがある。そして、検査結果を見て潰瘍性大腸炎の検査結果と合っていれば、その診断がつく。そして治療が始まる。病名と合うパターンの検査結果が無ければ、再検査、そして分からなければ、再検査、経過観察か症状を止める対処療法となることが多い。
こんな例がある。57歳男性、職業 医師。数年前から躯体(くたい)を中心にチョコレート色の直径1cm前後の斑点が出だした。冬の乾燥時に悪化する痒みがあり、放置しておくと、顔面に出だした為、家人の勧めて皮膚科専門医を受診した。しかし、原因が分からず、特別な治療法は無いと言われ、保湿クリームで対応していた。しかし発疹が全身に広がった為、
私の外来に来たのだ。同業者なのでやり難かった。ちなみに、漢方外来には同業者つまり医者の患者が他科よりも多い印象だ。治療している本人は現代医学の限界を知っているのかもしれない。
 東洋医学では、病名が分からなくても治療ができる。今回の場合でも四診(東洋医学の診察の方法 望診、聞診、問診、切診)の後、証(四診で判別される身体の状態のパターン)をたてて煎じ薬で治療した。2か月の治療後、少しずつ褐色班の数は減っていった。まだ、皮膚症状の全部は無くならない為、現在治療中だ。この先生は自分が飲んでみて漢方が効いた為、漢方を勉強し始めたようだ。
漢方は病名が分からなくても治療ができた例である。患者さんにとって病名が分からない、それによって治療方法が決まらないことは想像以上にストレスがかかる。こんな時には漢方薬を処方しなくても現代医学の検査結果を待ちながら簡単な食事療法を教えるだけで精神的に楽になるし身体にも良い影響が出るのだ。

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