骨折して分かったこと 1ヶ所が全体に影響 漢方診療日記㊿

 先月、足指の骨を折った。顕微鏡の台座が足に落ちてきたのだ。骨折したまま、重い荷物を動かしたので少し骨がずれてしまい翌日は足の甲まで腫れてしまった。さすがに怖くなってレントゲンを撮ったら見事に割れていた。その後、アルミ板を足に敷き、そこに足指と足全体をテープで固定していた。
骨折には治り易い部位と難治性の部位がある。鎖骨骨折などは治り難い。場所によっては血流や固定のし難さ等の理由で治り難い場所があるのだ。治り難いと、何カ月も痛みが続く、さらに時間が経つと、偽関節と言って本来関節が無いところでも、骨折部分が関節のように曲がるようになることもある。
幸い今回は骨の接合が容易な部位だった。とは言え十日間は歩くのにも困った。特に足を身体より上げていれば、痛みも無いが、椅子などに座り足を下げれば徐々に激痛が走るようになる。血液、リンパ液が足を下げることで溜まり、局部を圧迫し神経を刺激する。
身体はバランスだ。小さくても、一箇所に問題があっても全体に影響する。以前、銀座の有名なフランス料理のシェフが、「足の指を骨折したら味が分からなくなった」と言っているのを聞いたことがあった。そんなこともあるものかと不思議に思っていた。しかし、私の場合も同じだった。私の場合は脈がよく分からなくなったのだ。脈診は微妙な感覚を手の指先で拾う。その感覚がだめになったのだ。足の指と手の指は繋がっていると改めて感じた。当たり前だが、医学部では教えてくれない知識だ。
東洋医学では人の身体は部品の数々の集まりではなく、一つの流体と考える。一箇所に圧力をかけると水の広がる波紋のように別所に影響が伝わる。まさに今回の足の指から手の指への様にだ。
西洋医学では、骨折は骨の問題だけに過ぎない。そこだけしか診ないしそこだけしか治療しない。しかし東洋医学では全体の問題として診る。骨折の痛みで鬱になることもあれば、味も分からないこともあることを前提に治療をすることになる。骨折で動けなくなり筋肉量が落ちたり、循環器が弱くなることもある。
ちなみに、レントゲンを撮ってくれた整形外科医からは何も言われなかったが診てくれた整骨院の鍼灸師からは、「骨折は良くなるが、その後腰が痛くなることが多い」と言われたが、その通りになった。片足が悪い時は跛行(はこう)することになり腰に負担がかかり腰痛になるという。
 手足など身体の全ての部分を大切に意識することが身体全体を大切にしていることにつながるのだ。

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