人は地球のひも付き 大自然に従い生きる 漢方診療日記㊵

最新のビッグデータを使うと、人の大きな傾向が分かること、そしてそのデータが古代の書「黄帝内経」(こうていだいけい)に、既に書かれていたことを前号で書いた。何となく古来、感覚で言われていたことが、最近の研究で数字化されていたのだ。
 「自然のリズムに従えば健康だ」と「黄帝内経」は言う。自然のリズムとば、季節や年齢など時間の経過で変化していく要素に自分を合わせていけば、健康に生きることが出来るというものだ。
 「四季により生活を変えて行け」と書いてある。夏は早起き、冬は少しゆっくり寝ていても良い。夏は夏に取れる物を食べ、冬には冬に取れるものを食べる。歳を取れば、若い頃と違う生活をする。そうすることが健康の秘訣(けつ)だということだ。
 なぜ、2千年前の人がこのビッグデータの分析と同じことが分かったかと考えてみた。恐らく伝承か、あるいは、自然の中で、化学物質などを口に入れない、またストレスがない気功の師匠みたいな人が世間にたくさんいて、その人たちが自分の身体の状態を感じてそれを文章化したのだろう。現代人は、その辺の感覚は鈍くて分からないかもしれない。
 今回私が感じたのは、人とは個性だのオーダーメイドなどと言われているが、地球という星にひも付きで生きるしかないということだ。先進のオーダーメイド医療でも、個人が直感的にまずいと感じたら、やめた方が良い場合もあるかもしれない。
 秋になり、地区の樹の葉っぱが一斉に色付き、また、一斉に枝から離れていく、個性的な葉なんてない。寺の過去帳を見れば、冬になれば一気に死者が増える。室温が管理された現代でさえ、肺炎で冬にたくさん亡くなっていく。冬に人が弱るのは、江戸時代と変わらない。
 不自然な負荷、つまりストレスを受けるのはもちろん良くないが、自然に逆行した治療や、精神的にポジティブと思われている若返り治療は、長い目で見ればうまく行かないということだ。自然に加齢することにうまく従うのが、楽に生きるコツなのだろう。
 人にとって高価なオーダーメイドのアンチエイジング治療を受けるよりも、大自然に従って自然に老いることが幸せなのだ。どうしたって人は樹の葉っぱだから。自分一人だけ、枝に残ることはできないのだ。

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