不調を癒すのは自分 医療の効果 漢方診療日記㊻

昔と比べて寿命が長くなった。一般的には医学が発達したことが大きな理由だと思われている。私もそう思っていた。
 著名な医学雑誌 New England journal of Medicine の編集長Ingelifinger はいろいろな症例の治療経過を追跡すると「近代医療を適応しても80%の患者は別によくも悪くもならず、あるいは自然に落ち着くところに落ち着くことを発表した。医師の働きはそれが有害でない限りこれらの原則的な経過に影響することはないという。10%をやや上回る症例においては、確かに医療的な介入が劇的な成功をみせている。ただし残り7,8%は医師の診断や治療が適当で無かった為に不幸な結果を招いている」  
つまり交通外傷など救命救急を必要としているような症例では助かる人が少しでてきたが、もともと、将来、良くなる病気の人は医者の介入如何に関わらず治るということ。勿論その過程での痛みが現代医学の恩恵で少なくなったり、治療経過が短くなることはあるだろうが。
 面白いのは、江戸時代の医師 永富獨嘯庵 が書いた「吐方考」の一節である。

「凡そ病者百人、治せずして癒ゆる者六十人、その余四十人、十人の者は治すといえど必ず死す。十人のものは治を得て必ず活く。十人のものは死せずまた癒えず。其の命、治、不治の間に在りて権衝し、医人に属するもの十人のみ」

 つまり、江戸時代、患者が一〇〇人いれば、別に治療しなくても六〇人は勝手に治り、一〇人は治そうとしても死んでしまう。一〇人は医療が効いて良くなる。一〇人は治療しても同じ状態。良い医者にかかるか悪にかかるかで予後が変わって来るのは一〇人のみだということだ。
医者によって予後が左右されるのは、最近のデーターと同じ10パーセント前後ということだ。
しかし、実際は平均寿命は伸びている。それは定期的な食事、暖かい部屋、清潔な生活環境などの為、病気にかかるリスクは少なくなってきたことが、結構大きく影響しているかもしれない。
病気になったら病院任せるのではなく、身体の調子が少し悪くなった時点で、食べ物や環境を変えて反応をみることが体調に大きな影響を与えていると思う。

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