moment51 side:unfold


今日も仕事終了。

楽屋にはオレと翔ちゃんと

なぜかにのもいた。


オレと翔ちゃんは顔を見合わせたあと
同時ににのを見た。

「私も関係者なので。情報揃えようよ」

「どういうこと?」

「オレは大野さんのシャッター事件を知ってる。大野さんから聞いたから。それに、彼女は昨日オレに電話してきてる。泣きながら。櫻井さんにひどいこと言ったって。」

「マジ…?」

「大マジ。」


「とりあえず兄さんのそのシャッター事件は、何が起こったの?」

「あのときオレミシマに一回キレてるんだよね。悪口言っててさ。で、彼女が偶然入ってきて、で、ミシマのことっていうか、悪口のやつ聞いてみたんだけど、知らんぷりするからさあ。ちゃんと自分の気持ち言いなよって言ったらシャッター降ろされちゃった。怖いって。」

「同じだ。ほとんど同じ。」

「で?翔さんは何を言っちゃったのかな?」

「…その悲しい顔を見るたびに、オレたちは傷ついてる。自分だけ傷ついて、なのになんともない顔して過ごすな、みたいな…もっと拒まないで、受け取ってよって。」


オレは言葉が出なかった。



代わりににのが口を開く。
「それで?」

「そしたら、触らないでって言われた」


触らないで?

「触ったの?」

「勝手に手が伸びた。彼女の手に向かって。でも触ってはない。」

「たぶんそれは、物理的に触るなってことじゃないと思うよ。私に入ってこないでって意味だと思う。」

「でもじゃあどうすればいいの?悲しい顔見続けるの?そんなの嫌だよ。もっと、オレたちを受け入れてくれれば、なんでもするのに。どうして勝手に傷つくの?他人に傷つけられてるんだよ?なんで我慢するんだよ…」


「誰にでも苦手があるように、彼女はそれが苦手だった。ただそれだけなんじゃないかな。翔ちゃんが、高いところが怖いって思うのと同じように、彼女は人が怖いんだ。

そうなるくらいの環境で生きてきたってことだよ。オレすごいと思う。よくそれで生きてきたなって。」

翔ちゃんは苦い顔をしていた。


「…にのにはなんて言ってた?」

「櫻井さんにひどいこと言ったって。どうしようって言うから、一通り聞いて、で、翔ちゃんの言ってることもわかるって言ってた。とりあえず謝るって。翔ちゃんはそんなことで嫌いになったりはしないよっても言っといた。」

「そりゃ…そりゃそうだよ。だからこそ、だったんだけどな」

「大丈夫。伝わってるよ。逆に翔ちゃんがそんなんじゃ彼女どんどん引いてくよ。次会った時も元気に話せるようにさ。」

「うん…とりあえず家帰って寝る。全然眠れなかったから。教えてくれてありがとう。」


翔ちゃんは先に帰った。


「割と刺さっただろうね、あの言い方だと。」

にのは翔ちゃんが帰って閉まったドアを見ながら言った。

「うん…オレ正直引いちゃった。翔ちゃんの思いもわかるけど。あの言い方だとキレただろうね。てかキレたから触らないでって言ったんだもんね。

にのいてよかった。ふたりっきりだったら喰ってかかったかも。」


「それはあまりよろしくないね。」

「…にのは冷静だよ。いつもさ。」

「ミシマの件ならほんと殴りにかかるけど。翔ちゃんはさ、空回りなんだよね。だから、責めても仕方ない。ならオレは翔ちゃんを放っといてあいつの近くにいたい。」

「…そうだね。」



「連絡、してみよっかな」

「連絡先知ってんの?」

「松潤がね、連絡してあげてって。」


電話してみた。

「はい、もしもし」

「あ、はるちゃん?オレ」

「え?…どちら様ですか?」

「大野智です」

「え?あ、大野さん?!え?どうしたんですか?何かありました?」

「いやないけど。なんとなく。」

「はあ…オレオレ詐欺かと思いましたよ」

「登録しといて。オレの。」

「あ、はい。わかりました。」

「あ、にのに代わろうか」

「あ、はい」


「二宮です」

「お疲れ様です。この前はお世話になりました。櫻井さん大丈夫でした?私謝りに行ったんですけど…」

「あー。大丈夫。気にすんな。」


ちょっと目を離したすきににのは電話を切っていた。

「え?まだ話したいことあった?」

「いや…。いいけど。」

「じゃあオレらも帰りますか」

「うん、じゃあね。お疲れ〜」


にのと別れて、オレはまたケータイを出した。

また彼女にかける。

勝手に切りやがって。


「はい」

「大野です」

「え?ちゃんと登録しましたよ?」

「その敬語やめて」

「なんでですか。超憧れの尊敬する大野智さんですよ?」

「オレには敬語なし。みんながいるときは敬語。でもオレだけの時はタメ口。」

「もう誰もいないの?」

「いないよ」

「せっかく敬語が使えるかわいい後輩やってたのにな〜」

「なにそれ笑」

「大野さん元気だった?」

「元気だよ。はるちゃんは?」

「普通」

「そっか。」

「あの時…泣いたりしてごめんなさい。」

「いいんだよ泣いたって。」

「…大野さんにね、そのままでいいのって言われた時、すごく嬉しかった。すごく。」

「うん。」

「…まだ、待っててくれる?」

「言ったでしょ。ずっと待ってるから。」

「頑張る。ちゃんと…ちゃんとできるようにする。」

「はるちゃん」

「ん?」

「頑張らなくていいから。焦らなくても。大丈夫だから。」

「…はい」

「なんかあったら連絡してね」

「うん。大野さんもね」

「うん。じゃあね。おやすみ」


割と長電話してしまった。


当然ながら翔ちゃんの話は出てこない。たぶんこのまま言ってこないだろうな。


別にね、翔ちゃんの言いたいことはわかるんだ。その通りなんだと思うのね。

でも、彼女の胸の内を思うと
とてもじゃないけど辛かった。


自分のように痛くて
こんなに痛いのに
それをずっと耐えてきたなんて

考えられなかった。



あんまり人の気持ちに
同調することはないけど
なんだか、彼女の心が
溶けて自分にも沁みている気がした。


あの睨まれた時の
その彼女の顔は
今でもはっきりと覚えている。

これ以上こいつを傷つけるなという
彼女の中の無意識の番人が
出てきた気がした。


それを翔ちゃんも見たということだ。


よかれと思って言ったりやったりしたことが

結果相手を傷つける。



よくある話だ。

本当は人は誰も助けられないんだけど
それに抗ってオレたちは彼女に向かう。

それが正しいのかもわからないのに。


葛藤がないわけじゃない。
触れずにそっとしておけばいいのかもしれない。

でも、闇の底に沈んでいくのを
ただ見ているだけでいいのか?


本当は、彼女はどこかで助けを求めているんじゃないかなって。



正直助けられるのかはわからない。
だけど、オレが待ってることを
彼女は期待しているようだった。
だったら、いくらでも待つ。


いくらでも。



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