2020年4月の記事一覧
亜成虫の森で 25 #m
「お疲れ様」
翔くんが残業していたオレのところにふらりと来た時があった。フロアには誰もいなくて、ふたりきりだった。
「お疲れ様です。社長」
「残業なんてしなくたっていいんだよ」
「終わらせちゃいたいからさ。あ、はるは?どうですかね?」
「ふふ。潤の言う通りの子だよ。」
「うん。いいよね。」
「似てるよね。春菜ちゃんに。」
「…。」
「だから、推薦してきたのかと思った。」
亜成虫の森で 24 #n
約束の場所についた。
時間になっても彼女は現れない。
おかしいなあ。いつも早めに来るのに。
ケータイの振動を感じて画面を見ると、彼女からだと思った連絡は松本さんからの電話だった。
え?今日会社休みだよな。
「はい、どうしました?」
「にの!はるが緊急搬送された!」
「はい?」
キンキュウハンソウ?
「とりあえず東京総合病院に向かって!こっちからは相葉くんが向かってる。オレもあと
亜成虫の森で 23 #n
「おい」
「あ、…」
「お前どこ行ってたんだよ。なんでメッセージ返さないんだよ。」
「ああ、ごめん。地元に帰ってた」
「…昨日は?オレ、…ホテルに翔さんと入っていくのみたんだけど」
「ふふ。そんなこと聞いてどうすんの?…仕事してただけ。」
「あんな格好で?」
「パーティについてきてって、言われたの。」
「パーティ?」
「そう。お偉いさんが集まるパーティ。」
「…なんでお前が
亜成虫の森で 22 #o
虚な顔で彼女が店に入ってきた。
「あら、いらっしゃい」
彼女の顔が少し青ざめていて、ふらついているように見える。
「どうした?なんか具合悪い?」
「…ちょっとふらついただけです。大丈夫。なんか最近、だるくて…貧血かなあ」
「とりあえずほら、座って。休んで。」
「ありがとうございます」
もはや定番だ。
いつも通りお茶を出して、最近はお茶菓子つきだ。
「久しぶりだね。どう?最近
亜成虫の森で 21 #s
12時前に彼女を家に送り届けて
帰路に着く。
後部座席から
窓を流れる景色を見ていた。
本当に東京は眠らない街だ。
街中に煌々と明かりがついている。
いけないことを、したのかもしれない。
ずっとそう思ってる。
そう思ってしまう。
だけど、あんな悲しい顔されたら
普通放っておけないだろ。
12時過ぎなきゃセーフとか
自分は思っているんだろうか。
特定の相手がいないから
いいよね?
亜成虫の森で 20 #h
有休消化明け、一発目に社長に呼び出された。
なんだろう。結局怒られるのかな?笑
誰にも会わずにエレベーターで直行した。
いつものたいそうな扉を開けると元気な社長が待っていた。
「おはよ〜!どう?休暇楽しめた?リフレッシュできた??」
「ええ、まあ…地元に帰ってました」
「そっかそっか。」
「…何か御用でしょうか?」
社長はずっとにこにここちらを見ている。
なんだろ。嫌な予感がする。
亜成虫の森で 19 #n
例の結成されたチームで会議室に集まり、ミーティングがあった。やはり彼女の姿はない。
朝もいない。デスクを見てもいない。今の会議にもいない。たぶん昨日もいない。
翔さんと松本さんは早々に部屋を出て、たぶん社長室で詰めをやってる。
オレと相葉くんは取り残されたが、相葉くんは自前のパソコンで作業をしていた。
「なあ。なんではるか休んでんの?全然連絡もないし。なんか知ってる?」
「はるさんは有休
亜成虫の森で 18 #h
小雨が降る中わざわざ傘を買って
ふたりでぎゅうぎゅうになりながら帰った。
ときどき雨の匂いに混じって
にのの匂いがして
安心した。
ゴールデンウィークも横浜に一緒に行って
楽しかった。
でも思い出すのは
あの雨の日の匂い。
数日後。
「今日からとなりの部署に来た宮田ももです!よろしくお願いしまあす♡」
となりの部署にかわいい子が入った。
うちの先輩方はやっぱりジロジロ見ていた。
でも
亜成虫の森で 17 #n
翔さんに送ってもらい、いったん家に帰ってから、彼女と夜出かけた。
久々に一緒にごはんを食べる。
翔さんといるときは嫌な気分だったけど、彼女とふたりになると、彼女もいつも通りな気がして、オレもいつも通りになれた。どうやらオレは浦島太郎ではなかったらしい。
「オレいない間何してた?」
「えー?特に何も」
「…あのイタリアンの人に会ったりした?」
「なんで?」
「…なんで…、なんと
亜成虫の森で 16 #n
「にの、こっち」
空港の混雑した中で、彼女が手を振って呼んでいた。
「おお!はる…、」
近づいていくと彼女も小走りでこちらに向かってきて、なんとそのまま抱きついてきた。
え?一体何が起こってる?
「ちょっと、え?はるか、どうした?てかみんな見てるんですけど」
「…」
「どうしたの?」
「…遅いんだわ、帰ってくんの」
「おう…」
「バカ」
「え〜…出張から帰ってきてバカはないだ