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マクロ経済スライドを超簡単に解説〜年金額が決まる原理とは〜

過去記事では老後資金についてお話ししました。

最近はその他のニュースで持ちきりのため、
「老後のおかね」についてのお話が減っている
ように感じますが、引き続きしっかりと考え
ないといけない永遠のテーマですね。

過去記事でもお伝えした老後にもらえる年金

正確に言えば「老齢年金」ですね。

この年金がいくらもらえるかを考えるにあたり、
本日は根本として年金額がどのような原理で決定
されているかをお伝えしたいと思います。


そもそも、この年金額は毎年変動しているのを
ご存知でしょうか?

このように日本年金機構のウェブサイトでは
毎年の年金額が公開されています。

例えば、老齢基礎年金であれば

令和2年度(月額):65,141円
令和3年度(月額):65,075円

というように令和3年度は66円(年間792円)
マイナスに変動しています。

どういう原理で変動しているのでしょうか。

これは「物価スライド」という仕組みによって
毎年変動しています。

過去記事でもご紹介したように、物の価値は
経済情勢などにより上下しますよね。


そのため、例えば世の中が「インフレ」に転じた
場合、皆さんが日々買う物やサービスの価格は
高騰します。

このようなインフレになった場合も、全く変動
しない年金額であればどうでしょう。

物価は高騰しているのにもかかわらず、年金額は
変わらないため物が買えないという事象が起こり
かねません。

そのため、物価スライドはインフレデフレによる
物価変動に合わせて、年金額を増加減少という
調整をすることで、人々の購買力を維持する
仕組みとなっています。

よって、物価は2倍なったら年金も2倍にします
というものです。

この物価スライドは1973年から仕組みとして
導入されており、毎年4月に年金額が改定され
るようになっています。

また、物価スライドとは別に「賃金スライド」
についても考えなければならないため、
物価や賃金の変動を加味して年金額が調整
されている原理ということです。


しかし、皆さんもご存知のとおり「少子高齢化」
が進んでいます。

過去記事でもご紹介したとおり、2025年問題
も到来します。

2025年には20歳から64歳の現役1.8人で
65歳以上の高齢者1人を支えるペースです。

このことから、すべてにおいて物価変動に
合わせて同様の年金額に調整していると、
後の世代である今の現役の若者たちの年金財源
は枯渇する可能性が高いと考えられました。


そこで、この問題を打開するために、
2005年4月から導入された仕組みが

『マクロ経済スライド』

と呼ばれる仕組みです。

そもそも、経済におけるマクロとミクロとは、

マクロ:政府や企業、個人などをひとまとめに
    考えた国レベルでの経済分析

ミクロ:企業や個人単位での経済分析

と考えます。

今回のマクロ経済スライドとは、国レベルの
経済分析であり、日本年金機構は下記のように
説明しています。

マクロ経済スライドとは、平成16年の年金制度改正で導入されたもので、賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。将来の現役世代の負担が過重なものとならないよう、最終的な負担(保険料)の水準を定め、その中で保険料等の収入と年金給付等の支出の均衡が保たれるよう、時間をかけて緩やかに年金の給付水準を調整することになりました。
引用:日本年金機構 マクロ経済スライド


要するに、物価スライドで物価変動に合わせた
年金額の調整を行なっていましたが、
昔と今では高齢者を支える現役世代の人数が
少子高齢化によって減少しており、
いま年金をもらっている人と、将来もらう人の
保険料負担に不均衡が生じてしまうため、
物価スライドの調整に対して、さらにこの不均衡
も加味した調整をかけるのがマクロ経済スライド
というわけです。

例えば、インフレの際に物価スライドによって、
1,000円年金を増額しますとなった場合でも、
マクロ経済スライドを発動し、不均衡分を加味
して500円の年金増額に留めます。
500円は後の世代のためにプールしますので、
いま受け取ってる皆さんは少し我慢してください
というイメージです。

本来は青矢印の始点である1,000円まで増額
すべきですが、マクロ経済スライドの調整で
赤矢印先端の500円までの増額にしますという
ことですね。

出典:日本年金機構 マクロ経済スライド


しかし、このマクロ経済スライドも毎年発動
されるわけではありません。

デフレの際には、そもそもの物価スライドで
年金額が減少します。
そこにマクロ経済スライドでさらなる減額の
追い討ちをかけることはしません。

そのため、近年の日本はデフレ基調の経済
であるため、マクロ経済スライドが導入された
2005年からカウントすると、

2015年度、2019年度、2020年度

のわずか3回しか発動はされていません。

しかし、その間も不均衡は生じているため、
年金額は減額しないけども、今後増額する
ときに持ち越して調整しますよという

「キャリーオーバー」

という制度も導入されています。


これらの仕組みによって、日本の年金財政の
安定化を国は図っていますが、それでもなお
年金財政は厳しいと言われています。

それは、先ほども申し上げた通り日本がデフレ
基調であるからです。
このマクロ経済スライドはインフレ時に初めて
効果を生むような仕組みです。

そのため、デフレ時には適用せず、キャリー
オーバーをし続ける、まさに出口の見えない
トンネルのようです。

よって、国は「つみたてNISA」や「iDeCo」など
の制度を準備し、活用させ、自助努力による私的
年金をちゃんと各々それぞれ築きなさいと謳って
いるわけです。


いかがでしたでしょうか。

マクロ経済スライドを知ることで、どのように
我々の年金額が決定されているかの原理が
理解できたと思います。

そこで、気づいていただきたいのは
やはり「自助努力」が必要ということです。

まだまだ現役世代の方であれば、しっかりと
老後生活に向けた資産形成を計画的に行なって
いくべきです。

過去記事でも「つみたてNISA」や「iDeCo」
については紹介していますので、ぜひ下記記事
やマガジンを参考にしてみてください。

それでは。

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