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2016年に読んだ本の感想
一私小説書きの日乗 遥道の章 西村賢太 2016/12/11 http://retsudansensei.hatenablog.com/entry/2016/12/11/001723 一私小説書きの日乗 西村賢太 2016/11/02 http://…
第9話 転居の男、渡辺透 【渡辺透クロニクル】
渡辺透は転居した。都営住宅にである。倍率8の都営住宅にである。2DKでエレベーター付きの都営住宅にである。
10回目の応募で当選したのは僥倖中の僥倖といえるだろう。それも家族向けではなく単身者向けに、たった3年足らずで当選できたということが、渡辺の理解の許容範囲を超えていた。
都営住宅について述べておこう。
応募数は年に4回。
家族向けや若年夫婦向けの募集は応募し続けるとポイントが加算
第6話 湿疹の男、渡辺透 【渡辺透クロニクル】
渡辺透は湿疹に悩まされていた。
5月3日の夕方から突然全身に蕁麻疹が現れたのである。
渡辺は大学病院の救急へ向かった。渡辺が大学病院の救急に行くのは精神科か呼吸器内科の2択であるが、今回は皮膚科である。
渡辺はゴールデンウィークの初日に行った回転寿司で生鯖を食べた。
そしてその日の夜、蕁麻疹が現れた。最初臀部のみに現れた蕁麻疹は次第に広がってゆき、下は足の甲から上は首、つまり全身に広が
第4話 自慰の男、渡辺透 【渡辺透クロニクル】
渡辺透は自慰をしていた。35歳を過ぎても日に一度の自慰を欠かせないでいた。その際に使用するのは無料のアダルト動画と右手、あとはトイレットペーパーである。
その日も渡辺はお気に入りのAV女優で自慰活動に取り組んでいたが、活動のラストスパートで女優の顔がアップになった瞬間、初恋の女性を思い出したのである。
その初恋の女性を最後に見たのが中学3年の卒業式であるから、もう20年も前のことになる。10
第3話 濡衣の男、渡辺透 【渡辺透クロニクル】
渡辺透は濡れ衣を着させられた。と述べると何やら冤罪被害にでも合ったのかと驚かれるやもしれぬが、そうではない。さて、これはどういうことか。
7歳年上の恋人に無残にも捨てられてしまった22歳の渡辺は、地元で一人暮らしをし、自由気ままな独身生活を謳歌している風を装っていた。実際は悲しみに打ちひしがれひたすら酒を飲み、朝方に寝付くまで元恋人への呪詛を脳内で爆発させていた。
交代制や夜勤の仕事を繰り
第2話 駆引の男、渡辺透 【渡辺透クロニクル】
渡辺透は駆け引きをしていた。作業所で小林真理とである。小林真理が通所を始めて2ヶ月の間朝と夕の挨拶のみに留めていた渡辺が、小林と時間にして30分も会話をしたのである。
留めていたと述べるとそれが駆け引きだと勘違いされてしまうので訂正しておきたい。2ヶ月間まともな会話ができなかったのは、単に渡辺に小林に話しかける勇気がなかったというだけの話である。
しかし2ヶ月間何もせずただ見ていただけという
2017年に読んだ本の感想
若い読者のための短編小説案内 村上春樹 2017/12/17
第三の新人の本を読んでみようという気にさせられた。 実際に吉行淳之介の文庫本を買ったので、これから読む。 http://retsudansensei.hatenablog.com/entry/2017/12/17/204627
ショート・サーキット 佐伯一麦 2017/12/01
若くして子を持った男が家族のために身を粉にして働いてい
2016年に読んだ本の感想
一私小説書きの日乗 遥道の章 西村賢太 2016/12/11
http://retsudansensei.hatenablog.com/entry/2016/12/11/001723
一私小説書きの日乗 西村賢太 2016/11/02
http://retsudansensei.hatenablog.com/entry/2016/11/02/200543
遮光 中村文則 2016/10/21