第4話 自慰の男、渡辺透 【渡辺透クロニクル】
渡辺透は自慰をしていた。35歳を過ぎても日に一度の自慰を欠かせないでいた。その際に使用するのは無料のアダルト動画と右手、あとはトイレットペーパーである。
その日も渡辺はお気に入りのAV女優で自慰活動に取り組んでいたが、活動のラストスパートで女優の顔がアップになった瞬間、初恋の女性を思い出したのである。
その初恋の女性を最後に見たのが中学3年の卒業式であるから、もう20年も前のことになる。10代後半の頃にした引っ越しで卒業アルバムを紛失してしまったので、初恋の女性の顔を見たのもそれが最後ということになるので、15年顔を見ていない。
最早顔も声も性格も記憶には残っていない。ただ、色白のショートカットということだけ覚えていた。
瞬間、渡辺は「そういうことか」と口に出していた。
リクライニングを上げてマウスでAVフォルダを開く。女優別にフォルダ分けされているのでそれを片っ端から開き、片っ端から動画を再生しそれを見比べる。
どの女優も色白のショートカットなのである。
そうか、僕はずっと初恋の女性を追い求めてたんだな――
渡辺は、長年の謎が解けてすっきりし、自慰活動ですっきりし、ダブルのすっきりで至福のひと時を過ごしたのであった。
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