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恭庵書房(きょなんしょぼう)

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記事一覧

稲田 俊輔『異国の味』

稲田 俊輔『異国の味』

東京には世界各国のレストランがある。日本人の食に対する好奇心と、本物をやんわり拒む全体性、シェフのアレンジ能力の高さが、現在の独特な雰囲気を作った。エリックサウスの稲田さんが東京(および日本)で独自の変化を遂げた○○料理の解説に唸った。

僕は大学に入るまで、ほとんど外食をしたことがなかった。料理経験なしで自炊を始め、本書にも片鱗の出てきていそうなマニアックな京都の飲食店にたまに出かけていた。その

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白石 哲也/松本 剛/奥野 貴士『研究者、魚醤と出会う。: 山形の離島・飛島塩辛を追って』

白石 哲也/松本 剛/奥野 貴士『研究者、魚醤と出会う。: 山形の離島・飛島塩辛を追って』

飛島(山形唯一の離島)の醤油にフォーカスした超マニアックな本。研究者の生態(仕事と遊びの融合)がノマドワーカーのそれと同じであることが分かり、また、飛島には行かねばと思わせる内容だった。

伝統を守らねばという内容ではない。研究者として、一般的な感覚として発想のスタートはそこにあるのだが、島の人たちの感覚であっさり否定される。僕は魚醤が好きだから、読む前は「絶えないでほしい」というような気持ちを持

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オリバー・バークマン『ネガティブ思考こそ最高のスキル』

オリバー・バークマン『ネガティブ思考こそ最高のスキル』

僕は常にポジティブであろうとしているし、ネガティブな言葉は基本的に好きじゃない。だから、この本が届いてから半年以上、手に取る気になれなかった。

読んでみてビックリ。僕自身の思考は、著者の言う「ネガティブ思考」だった。確かに僕は、ネガティブな言葉を発する人と同様に、全てをポジティブに置き換えてネガティブが透けて見える人が嫌いだ。だから僕はネガティブは嫌いなんだと思っていた。そうではないのだ。

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ロッコク・キッチン 人をつなぐ本

ロッコク・キッチン 人をつなぐ本

先週から『ロッコクキッチン』の販売を始めた。

僕が読みたかったので取り寄せつつ、この本の存在を一人でも多くの人に知らしめたいなと思い、10冊だけ仕入れた。先日、著者の川内有緒さんがラジオに出演し、この本のことを紹介したらしい。それを鋸南の方が聞いた。

「ぜひ読んでみたい」と思って調べたら、「鋸南町」の文字が見えて驚愕したそうだ。なんで鋸南に売ってるの!と。こうして僕は、この本を通じて鋸南に知り

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中島岳志『思いがけず利他』

中島岳志『思いがけず利他』

利他について語られることが増えたが、どうにも安っぽい。企業担当者がSDGsを嬉々として語る姿を見て「正気かよ」と思ってしまう。その理由が本書を読んでよく分かった。利己的な利他、合理的な利他、自己責任論。「日本最高!」と叫ぶテレビに洗脳されている現代日本人の病について、よく考えてみるきっかけとなった。

コワーキングの良さを語るときに僕の語ることは、そこにいる人の行動と思考が、見返りを求めず「思いが

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千々和泰明『日米同盟の地政学:「5つの死角」を問い直す』

千々和泰明『日米同盟の地政学:「5つの死角」を問い直す』

平和学徒の僕は“Si vis pacem, para pacem”(汝平和を欲さば、《戦争でなく》平和に備えよ)という言葉の信奉者だが、本書をたまたま見かけて久しぶりに国際政治の視点からじっくり考えてみることにした。

「一国平和主義」に「第三者的視点」で切り込む論点は、リアリズムの世界での我々の生き方に目を開かせた。「非核三原則」などという建前も含めて、事態の説明が言い訳や隠蔽に終始し、密約で物

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坂上 香『プリズン・サークル』

坂上 香『プリズン・サークル』

対話による更生を目指す刑務所の話。この本について知り、発注したときはどこか外国の話だと思い込んだ。本書を開いた瞬間、これが日本で起こった話だと知って驚いた。一瞬希望を感じ、しかしそこに描写されている日本社会の現実に打ちのめされながら、最後まで読むのをやめられなかった。

日本での受刑者の処遇は、国連や人権団体から繰り返し批判され、勧告を受けているそうだ。それは塀の中だけの特殊な話ではない。犯罪の前

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探求と変革

探求と変革

現代社会は複雑であり、様々な課題に直面している。その一つは、精神衛生という重要な問題だ。日本は、世界でも精神科病院の数が最も多く、長期入院者も世界一多いとされる。これは問題であるとともに、新たな発見の可能性を秘めている。

変化をもたらす上での最大の問題は、アイデアの欠如ではなく、行動を変えられないことである。願望や望む結果に向かって前進する行動は、個々人や組織によって異なる。しかし、長期的な変革

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ガンジス川のチャイハネ #世界カフェ紀行

ガンジス川のチャイハネ #世界カフェ紀行

『世界カフェ紀行 5分で巡る50の想い出』(中公文庫)を読んだ。短い50ものエッセイにレビューを書いてもしょうがないので、51番目のエッセイを書いてみました。

ガンジス川のチャイハネ

佐谷恭

大学生のころ。インドは最後に旅すると決めていた。特別感を感じていた。それに、行くのがちょっと怖かった。「卒業旅行」の行き先にインドを選ぶ人は、同じような気持ちだと思う。

2回生の冬。いろいろな旅人から

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paxi
割引あり
行動思考術 旅人経営者の1年 #38

行動思考術 旅人経営者の1年 #38

2024年3月10日配信開始の『行動思考術』を全文公開しています。8万9千文字以上あります。リンク先のAmazonでレビューしていただければ嬉しいです。

週1回できないことを、毎日の習慣にする誕生日にはいつも、新たなことを始めたり、決意したりしています。38歳の誕生日には“有料メールマガジンのスタート”を、一大イベントにすることに決めました。

実は2年ほど前から始めるように言われていました。し

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岩崎 圭一『無一文「人力」世界一周の旅』

岩崎 圭一『無一文「人力」世界一周の旅』

「できない」理由のほとんどは「お金」である。旅でも起業でも。「先立つもの」がないので行動しない。お金が少しできたとしても、未来永劫それが続く保証がないから、やっぱり行動しない。

圭さんは、行動しない理由の第一位である「お金」を、もっと明確にいうと「お金への執着」をやめて旅に出た。「お金」を全く使わないわけではない。路上でマジックを披露して、必要なものを買ったり食事をしたりもする。でも、節目節目で

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「ありえない」をブームにするオンライン相談会(書籍5冊つき):30分

「ありえない」をブームにするオンライン相談会(書籍5冊つき):30分

誰もやっていないことを実現したい、夢をかなえたい、膠着状態を打破したい。もっと楽しい人生を送りたい方々を、発想の転換でサポートいたします。

オンライン相談に『「ありえない」をブームにするつながりの仕事術』5冊つきで8900円。書籍が一冊1925円なので、それなりにお得です。
(1925 x 5 = 9625)

1人でもいいし、5人までのチームを対象とします。お申込みいただくとまず書籍をお送りし

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《一箱古本市》本に親しむ夏休み! きょなんブックフェアー

《一箱古本市》本に親しむ夏休み! きょなんブックフェアー

夏休み、本屋さんになってみませんか!
オリジナルの棚をつくり、自分が好きな本、紹介したい本を展示して、販売してみよう。

朗読会や読書会、ビブリオバトルなど、本に関するイベントに参加したり主催したりすることもできます。

開催期間: 2022年7月22日(金)〜8月28日(日)のうちの金土日月の各曜日
営業時間: 11時から16時まで
参加費用: 2500円(一箱あたり)
開催場所: パクチー銀行

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恭庵書房のオススメ書籍 2022/4

恭庵書房のオススメ書籍 2022/4

笹生 浩樹『房総の頼朝伝説』

鋸南町を歩いていてもそこかしこに見つけられる源頼朝の足跡を、わかりやすく解説した本。鋸南の竜島海岸に上陸してから鎌倉へ行くまでの、頼朝の辿ったであろうルートを示してくれている。この本を元に、頼朝の道を走ってみようと思う。

南房総地域を旅する人に、ぜひ目を通して欲しい一冊。

『地球の果ての歩き方〜一度は行きたい世界の「端っこ」を景観&旅の雑学とともに解説』
#地

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