白石 哲也/松本 剛/奥野 貴士『研究者、魚醤と出会う。: 山形の離島・飛島塩辛を追って』
飛島(山形唯一の離島)の醤油にフォーカスした超マニアックな本。研究者の生態(仕事と遊びの融合)がノマドワーカーのそれと同じであることが分かり、また、飛島には行かねばと思わせる内容だった。
伝統を守らねばという内容ではない。研究者として、一般的な感覚として発想のスタートはそこにあるのだが、島の人たちの感覚であっさり否定される。僕は魚醤が好きだから、読む前は「絶えないでほしい」というような気持ちを持っていたが、流れに任せるというのもいい(絶えてほしいというわけではない)。
「伝統」だから「守る」とか「予算をつける」のではなく、守りたいと思った人が独自に記録や発信の活動をするのがいい。すべての伝統が保存されるとしたら新しいものを生む余白が無くなるから。「守りたい?」という質問に「別にー」と答えるのもアリだと学んだ。
伝統は「ノウハウ」だけで守られるものではない。その土地で取れるものが変わった時、それに応じてやり方は変化する。だから諦めるのではなく、一冊の本にまとめ上げたことが素晴らしい。
この文章を含む第7章(松本剛著)はぜひ読んでほしい。
パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。