若きサムライのために (7)
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若きサムライのために (7)

(中高時代の恩師に依頼されて書いた文書をnoteでも公開しています。各話1,200字/全7回)

さて、●●先生も、他の先生方も、親御さんも、そして僕自身も、自分の経験から色々なことを話します。

過去の結果としての現在を知っているからこそ、避けられたミスやエラーを皆さんに繰り返して欲しくない、あるいは、他に選択できた道にも気づいてほしい、という思いは大いにあるはずですし、アドバイスはアドバイスとして耳を傾けていただきたいと思います。

他方、経験とはあくまでも過去のものであって、過去と戦っても未来には勝てない、という歴史の真理に学ぶ必要があるとも思います。

司馬遼太郎の『坂の上の雲』に、日露戦争で活躍した児玉源太郎が、戦術の専門家たちを前に怒鳴った挿話が紹介されています。
「諸君はきのうの専門家であるかもしれん。しかしあすの専門家ではない」

しかしその日本軍も、日露戦争の成功体験に溺れて、軍備も戦術も思考が止まってしまいました。
陸軍は三八式歩兵銃(明治38年採用)を太平洋戦争まで使い続けて、既に世界の標準になっていた機関銃の装備が遅れました。海軍も敵艦を近海で迎え撃つ作戦しか考えず大艦巨砲主義にこだわった結果、航空機の発展に気づかず、戦艦大和は米軍の航空部隊に集中攻撃を受け、あえなく轟沈しました。

過去に成功したという自慢話を聞く時に、実績を挙げた方への尊敬の気持ちは抱いておくにしても、その自慢は未来にわたって有効なネタではなく、ご自身が単純に真似をしても仕方がないという自覚もまた必要だと思います。
年寄りの昔語りを、そこからご自身のヒントを引き出せるよう注意しつつ話半分にいなすというのも、若い皆さんに必要なスキルかも知れません。

長々述べて参りましたが、おしまいに一点だけ。

皆さんが将来進学して、学生になり、研究生になり、あるいは会社員になるとしても、必ず必要になる資質というものがあると思います。

それを一つだけ選べと言われたら僕は、
「人を心配させない、その心がけができること」
だと思っています。

皆さんが拙文を読んでくださっているのも、恐らくは、ご自身の将来という未知なるものに挑む不安を少しでも取り除きたい気持ちがあったからだと思います。
こういう気持ちは、これから会社で接するお客さんであったり、一緒に働く上司同僚も同じように抱いています。

アイツ前に約束したこと忘れていないよな、ちゃんと仕事してんのかな、言ったことやってくれてんのかな、どこまで進んでるのかな………
といった小さな不安の気持ちにキチンと対応出来る人というのが、社会人としての資質がある人ということになるんじゃないかと僕は思っています。

僕が●●先生から教わったことをほとんど覚えていないように、高校時代に見聞きしたことなど大方は忘れてしまいます。
しかし、この「不安にさせない」という心がけだけは、これから先の人生にもずっとつきまとうお話ですから、ぜひとも忘れないで頂きたいと思います。

御清覧いただき、ありがとうございました。

(1,200字)

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