記事一覧
「正しい主張の反対は、ただの誤りだが、深い真実の反対は、もうひとつの真実である」 物理学者 Niels Bohr
「人は後ろ向きに未来に入っていく」ポール・ヴァレリー。
過去の成功体験を引きづられて意思決定をしてしまう私たちの習癖を端的に表しています。ちょうどボートを漕ぐように後ろ向きに進むかのように。
一方、「我々が歴史から学ぶことは、人間は決して歴史から学ばないということだ」とヘーゲル。
二つの相反する格言は、ボーアの言う「深い真実の反対は、もうひとつの真実」の好例でしょう。
証券市場の中心が、アム
貪欲さ愚かさの潮流に抵抗する
「読書は体制をくつがえす行為であり、それによって、私たちを窒息させようと脅かす貧欲や愚かさの潮流に抵抗することができるのてす。洪水の脅威を前にして、一冊の本は一艘(いっそう)の方舟だと言えるでしょう。」
『読書の歴史』アルベルト マングェル著より
芝健介著『ヒトラー』では、ドイツ国民がナチ党による一党独裁を支持する過程が早送りの動画再生のように描かれています。辻野弥生著『福田村事件』では、関東
およそ〈怒りの陥穽(かんせい)〉は、〈怒らないことの陥穽〉の裏に他ならず 『まなざしの地獄』 見田宗介著より
謝罪を当然とする風潮に「怒らないうことの陥穽」を憂う
陸上自衛隊射撃場での殺傷事件を受けての幕僚長による謝罪会見に違和感を超えた不安感を感じます。
「このような事案は、武器を扱う組織として決してあってはならない。今後このような事案が二度と発生しないよう、再発防止の徹底を図ってまいります。この度は国民の皆さまにご心配をおかけし、申し訳ありません。」
幕僚長による声明は、今の日本の社会が醸し出す行き
「大衆化した人間は、自分の宿命である不動の堅固な大地の上に足場を固めることをしない。むしろ、空中に宙吊りの虚構の生を営む。いまだかつてなかったように重量も根も持たぬこれらの生が、おのが運命から根こぎにされて最も軽薄な風潮の中を流されるままになっている。」 オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』より
大衆は足場を固めることをしないと、オルテガは指摘しています。ただ、大衆は望んで足場を固めることをしないのだろうか、と疑問がわきます。実は、固めるべき足場を探してさまよっているのではないでしょうか。
高度経済成長を支えた大衆の「足場」として大いに機能した組織は、宗教(主に創価学会)、政治(共産党)、労組の三つでした。農村の村社会という足場に代えて、都市に集中する大衆の足場として、三つの組織が機能し、
「自分の時代の問題、自分の時代の言葉の中でだけ考えるのでは、自己を開くに足る事柄が躍動しない。ゆえに古に学ぶのだ。」 伊藤仁斎
荻生徂徠や山鹿素行に比べて、伊藤仁斎の名前は語られていないように思います。あらためて、その主著『童子門』を手がかりに、伊藤仁斎の人となりを空想してみました。
「卑きときは則ち自ずから実なり。高き時は則ち必ず虚なり。」この言葉に、仁斎の剛毅でありつつも、慈しみ深い人柄が滲み出ているように感じます。小難しく理屈だけをこねる思考を「虚」と退けます。天下国家を論じるよりも、もっと身近な、親に孝を尽くすこ
自由への大いなる飛躍 「出離」のパラドックス マチウ・リカール著 『幸福の探究』より
「出離」を禁欲主義や厳格な戒律と結びつけるべきではないと、「出離」のパラドックス(逆説)が明確にされることで、読者は自然と本章へ引き込まれていきます。そして、「利己主義、権力や所有の争奪戦、快楽への飽くなき欲求などの操り人形でいる自分に我慢するな」とも。
こうしたパラドックスの提示は、執行草舟氏の著書『生くる』にもあります。「無償」のパラドックスとして、「見返りを求める心を悪いと思うことはない」
「予約された結果を思うのは卑しい。正しい原因に生きること、それのみが浄い。」 〜 理想と現実の間で 〜
「予約された結果を思うのは卑しい。正しい原因に生きること、それのみが浄い。」高村光太郎
パーパス経営にも通じる高村光太郎の言葉は、経営者たらんとする者の背中を押してくれます。しかし、この高邁なる意思を堅持するには、あまりにも厳しい現実に私たちは直面します。一つの実例を紹介します。
健康寿命と寿命には10年程の差があります。この差を縮めたい、できれば「ピンピンころり」と天寿を全うしたいと、多くの
組織の弱体化につながる360度評価
部下が上司を評価する360度評価制度。部下からのフィードバックを得て、上司はリーダーシップスキルを磨くことが期待されています。響きだは良いです。しかし、組織の成熟度を考慮して、導入すべき施策です。未成熟な組織が、闇雲にこれを導入すれば、上司が部下に「サービスする」ことにもなりかねません。結果として、組織が弱体化することになります。
欧米の組織と異なり、日本の組織では常に「情」が絡み合います。部下
歴史の皮肉:「迷走5年、英国からの警告」
「迷走5年、英国からの警告」と題する記事(2023年1月4日 日経朝刊より)に寄せて:
ブレグジットを日本の攘夷に現代版とし、隣人(E U)に背を向けた結果の経済的・政治的迷走としています。ただ、この筋書きには違和感を覚えます。ブレグジットをE U嫌いの有権者の感情を煽った帰結として、あるいは、衆愚政治の結末として捉えるのは短絡的です。むしろ、なぜE U嫌いの国民が一定数存在するのかを考察してみ