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外資系サバイバル術 西洋思考 vs. 東洋思考

将棋に定石があるように、外資系企業(特に欧米系外資)では、そこで「巧みに生き抜く技法」があります。定石を身につけた上で対局に臨むように、この技法をマスターして、自分の土俵へ勝負を持ち込もう。


日常業務に於ける本社との折衝には利害の不一致がつきものです。本社の方針を各国の商習慣や規制を無視して落とし込むことは、必ずしも最善の策ではないでしょう。唯々諾々と本社の指示に従うだけでは、現地法人の価値はありません。しかし、本社と衝突ばかりしていては、現地法人の戦略的価値を毀損します。ここでは最良のバランスを図る力量が求められます。こうした総論を理解しつつも、実践できるか否かは、西洋的思考の根幹にあるものを理解した上で折衝にあたるか、単に表面的な議論に終始するかにあります。相手の主張の根幹にある西洋的思考を理解した上で、東洋的思考を基盤とした主張を展開し、合意形成を図ることが理想的です。


西洋的思考とは、常に選択を迫る思考です。権限委譲か、中央集権化か。業務の集約か、分散か。プロセスの標準化か、カスタマイズか。外資系子会社は、本社から矢継ぎ早にこうした選択を迫られます。マイケル・サンデル教授の白熱教室で取り上げられた「トロッコ問題」的世界が日々展開されます。こうした中で、AかBかを迫られても、建設的にCを提案することで本社、日本法人の双方が利することを模索したいものです。即ち、実験的にCの道を進み、その軌道を是正する必要があれば適宜修正する。分岐する道の選択を繰り返す発想が西洋的思考であり、一本の道を邁進しつつ軌道修正を図ることが東洋的思考です。


例えば、確定給付年金制度か確定拠出年金制度か、と選択を迫られた場合(実際は確定給付年金制度から確定拠出年金制度への移行を本社が迫るケースが大半です)、「分岐する道」(AかBか)の選択を迫られていることになります。西洋的思考の典型です。ここで同じ土俵に立つと視野狭窄に陥ります。東洋的思考をフル回転させて、C案を絞り出してましょう。このケースでは、既存の社員は現行の確定給付年金制度を維持し、これから入社する社員に対しては確定拠出年金制度を導入すると言った具合に、「A」でも「B」でもなく、「C」を提示することで、日本的労使慣行に沿った施策で、本社との合意形成を図ります。

また、本社の折衝相手が子会社に対してA(またはB)威圧的に迫ってくる場合は、その下敷きに何があるのかを観察します。上司から圧力か、本人の不安の裏返しか。更にその深層にある西洋的選択思考。この点を東洋人として充分に理解をし、その上で、東洋的思考で論陣を張ることで、日本法人の価値を更に高めることができるはずです。


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