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博士のアルバム 11話
実家から離れたい。先生と同じ。私も実家を出たくて仕方がなかった。
冷え切った父親と母親の間で神経を尖らせながら生活するのに疲れていた。
絶対に家を出る。家庭内のストレスを勉強することで紛らわせた。
その甲斐あって他県にある有名私立大学に入学することができた。母は泣いて喜んだ。
お坊ちゃん、お嬢ちゃんが、多く通う大学でお金はかかるが母がなんとかしてくれると思っていた。
初めての一人暮らし。夜
博士のアルバム 10話
先生のところに来て一年が経った。私は自分の過去を打ち明けようと何度も言いかけては止めた。先生は私にいろんな話をしてくれた。穏やかで決して人を悪く言わない先生。打ち明けたかった。誰かに言えば楽になれるとずっと思っていた。それでも言えなかった。信頼関係が崩れるのが怖かったからだ。
私の母は家庭におさまるタイプの女性ではなかった。
私が幼稚園に通い始めた頃からだ。パートに出た母は浮気に走った。
父
異動してきた管理職は、叱れないリーダーだ。重大なミスをした人に注意もできずトイレに逃げる。見て見ぬふり。よく管理職になれたもんだ。それでもまわる。腑に落ちないけど、社会とはそういうもんだ。
博士のアルバム 9話
「会えると思ってたら駄目なんだ。いつでも会えるなんて甘かった。人の寿命はわからない。こんな老いぼれより先に死ぬなんて順番が違うよな。でも、現実なんだ。受け入れるのは割と早かったよ。逆に死に恐怖を感じなくなった。早くあの世に行きたいと思った。でも、僕はまだ生きてる。なかなか死ねないんだ。こんな体になっても、まだ生きている。人の寿命って神様が決めてるのかな。それがわかれば楽になれるのかな」
先生が手
チキンのトマトソースかけ。最近、野菜多めのメニューを心がけて作っている。
2ヶ月に一回、血液検査のため病院に通っているのですが、どこをとっても数値が良いと先生に褒められるのが嬉しい。
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博士のアルバム 8話
カサカサカサカサカサカサカサカサ。
ベッドの足元から聞こえる音。小刻みに震える先生の足がシーツに触れる音。今日は一段と激しく早いリズムだった。薬を飲んでも抑えが効かない。手の震えで箸が持てなくなっていた。
「もういいよ。ごちそうさま」
口元を拭き食器を片付けようとした時、先生が言った。「そのうち飲み込めなくなるんだろうな」
私は、先生を励ましたかった。
それは過去の自分の過ちを消したいだけかも