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かざみどり 教授と学生と私
大学院生の頃、妻子持ちの大学教授中村と不倫関係にあった吉岡理子は大学を追い出されカナダへ渡り生活をしていた。
ある日、一人暮らしの母が認知症を患ったことをきっかけに帰国することに。
母を施設にあずけ、中村の勤務する大学で働き始めた理子。再び不毛な関係が始まる。
博士のアルバム 9話
「会えると思ってたら駄目なんだ。いつでも会えるなんて甘かった。人の寿命はわからない。こんな老いぼれより先に死ぬなんて順番が違うよな。でも、現実なんだ。受け入れるのは割と早かったよ。逆に死に恐怖を感じなくなった。早くあの世に行きたいと思った。でも、僕はまだ生きてる。なかなか死ねないんだ。こんな体になっても、まだ生きている。人の寿命って神様が決めてるのかな。それがわかれば楽になれるのかな」
先生が手
チキンのトマトソースかけ。最近、野菜多めのメニューを心がけて作っている。
2ヶ月に一回、血液検査のため病院に通っているのですが、どこをとっても数値が良いと先生に褒められるのが嬉しい。
博士のアルバム 8話
カサカサカサカサカサカサカサカサ。
ベッドの足元から聞こえる音。小刻みに震える先生の足がシーツに触れる音。今日は一段と激しく早いリズムだった。薬を飲んでも抑えが効かない。手の震えで箸が持てなくなっていた。
「もういいよ。ごちそうさま」
口元を拭き食器を片付けようとした時、先生が言った。「そのうち飲み込めなくなるんだろうな」
私は、先生を励ましたかった。
それは過去の自分の過ちを消したいだけかも
固定資産税、一括払いに割引制度がない。税金は取れるとこからしっかりとるのだ。一生懸命働いて貯めたお金なのだから無駄に使わないで欲しい。
博士のアルバム 7話
先生がお昼寝をしている間に覗いたパソコンの画面。詩の中から先生の不安を感じた。
私が介護士としてできることはなにか。この問題にぶち当たるたび、無力さを感じる。
人の心までは読めない。私は先生が強い人だと勝手に思っていた。
人が生きる上で、当たり前にできていたこと。それができなくなると誰かの手を借りないといけなくなる。
いずれ、来る。私にもそんな日が来る。
先生が目を覚ました。
「病院、疲
博士のアルバム 6話
病院から退院した翌日、抜けうつ雨の音で目を覚ました。
僕は、気球に乗って空に浮かんでいた。
子猫のような可愛い顔をした目の大きなふ少女が雲の上から何かを言っていた。
気球は流れ少女から離れていく。
「また会おうな!」
さけんでいるのに声が出ない。
夢だった。
遠くで雷の音が聞こえてきた。
瞬く間に土砂降りになった。
ピカピカ、ガシャン、ドッシーン
早く元気になってねと、
雷さまが僕に言って
博士のアルバム 5話
このところ雨が続いていた。先生は、窓から庭を眺め時々ため息をついていた。前よりため息の数が多くなったきがする。愚直一つこぼさず現実を受け入れようとしている。私は、そんな先生を強い人だと思った。
庭のあじさいが雨粒を弾く。それがきれいだった。
先生は、歩く練習をしなくなった。あれだけ歩きたいと言っていたのに、まるでやる気がなくなっていた。
「研究チームから外れたよ」
先生がぼそりと言った。