虹乃ノラン

主成分は猫。受賞作『銀盤のフラミンゴ』『ベイビーちゃん』が発売中。『そのハミングは7』…

虹乃ノラン

主成分は猫。受賞作『銀盤のフラミンゴ』『ベイビーちゃん』が発売中。『そのハミングは7』にて第9回カクヨムWeb小説コンテスト特別賞(エンタメ総合)を受賞。ココア共和国傑作選(4コマ詩)及び佳作、引きこもり文学賞入選、人生逆噴射文学賞審査員賞及び佳作。創作WS、なごや文芸マルシェ

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マガジン

  • 「ファミリア」全23話

    ケイト・クーパーは左頬に火傷痕のある十二歳の少女だ。母のジェシカ、飼い犬のチク・タクと共にフィラデルフィアのアパートで暮らしている。ある日見かけた車の衝突事故で、お気に入りのストロベリークリームサンドビスケットのキャラクター、フラミンゴの絵を描いているイラストレーターが死ぬところに遭遇する。  チク・タクとの散歩中、事故現場でみかけた黒いレインコートの薄気味悪い男、ジムに会うが……。(創作大賞2024ファンタジー小説部門) ※『幸せのコイン』とクロスオーバーしています。

  • 「獏」連載中

    黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。 「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、獏みたいなもんだ」  毎日、毎日人間どもの欲望の抜け殻を拾っては集め、そして金を貰い、俺たちは生きている。

  • 「ホテルエデン」連載中

    愛猫の「楓」を亡くし、泣き暮らす千里は暗闇のなか目覚めた。そこには黒髪の少女アケルと仮面の総支配人ケルビムがいた。そこはホテルエデンの東館。なぜそこにいるかもわからぬまま、ケルビムの頼みでアケルをオーナーの元へ届けるため本館を目指す……。(ホラー小説部門) ■目次 プロローグ 第一章「美しい変化」 第二章「大切な想い出」 第三章「遠慮」 第四章「調和」 虹の橋のたもと エピローグ

  • 「&So Are You」完結済み 全50話

    バラは赤い、スミレは青い、お砂糖は甘い、そうして君も……。 一九六三年ミズーリ。代々トウモロコシ農家を営むベンの住む田舎町へやって来たハンナは、初対面でズケズケものを言う嫌味な女だった。母親を亡くし、フィラデルフィアでの美術教師の職を辞めてきたという。ベンたちのさぼり場である湖の景観の美しさに心を奪われたハンナは、そこをアトリエ代わりに通うようになる……。★R15(恋愛小説部門) 愛と友情の物語です。 (装画協力:ヤマウチタカノリ)

  • 🐾cat🐾noran diary。

    《不定期更新》日記です。

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「ファミリア」第一話

プロローグ 澄み切った十月の青空の下、わたしたちはサウスフィラデルフィアにあるとある教会の墓地に立っている。  墓石に彫られた名前はジェシカ・クーパー。  大好…

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「ファミリア」第二十三話

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「ファミリア」第二十一話

Jim (9)  再びICUと呼ばれる病室の中、母親の脇に腰掛けたケイトは、彼女の手を握り、呼びかけている。 「お母さん、必ず良くなるよ。だから心配しないで、今はゆ…

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「ファミリア」第二十話

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Jim (7)  ジョーは、命の尽きた妻に向かって愛を告げ続ける。 「なあ? 君たちにとって、『愛』とは一体何だ?」  横に立つサマンサに私が訊ねると、彼女は「人間み…

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「ファミリア」第十八話

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虹乃ノラン
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「ファミリア」第十七話

Jim (5)  ロベルトと父親が色鮮やかなテントの露店に並び始めたとき、私は一つの事柄に気が付いた。それは、私と同じ同僚たちの存在だった。  皆、それぞれターゲッ…

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「ファミリア」第十六話

Jim (4)  それは私が気に入っていた絵描きの、その中でも私が最も好きだったフラミンゴのイラストだった。――それに気づいたとき、私は彼女に言い知れぬ親近感を覚え…

虹乃ノラン
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「獏」第十話

第三章爆心 (1)  天上の星がきれいな夜だ。空気は乾燥し、肌を刺す冷たい空気のせいで温かい缶コーヒーをよりいっそう美味しく感じさせた。  ワイヤレスのイヤホンを…

虹乃ノラン
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「ホテルエデン」第九話

 でき上がった料理を三人で食堂まで運ぶ。 「チクワ!」  アケルが切り株の椅子の上で飛び跳ねる。待ちきれないのだろう。 「それじゃあ食べようか?」 「食べる!」  …

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莫迦 (4)  すべての回収を終えた俺は、港にある処分場へと車を走らせた。  パッカーのケツをスイッチで押し上げ、積んだゴミを押し出す。さらに車を降りてパッカーの…

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「ホテルエデン」第八話

美しい変化 (7)  大広間の奥、大きな木の植えられた左手に厨房への開かれた入口がある。中へ入っていくと厨房の中もなかなかの広さだった。 「竹輪かー。冷蔵庫かな?…

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美しい変化 (6)  時間はあっという間に過ぎていった。私たちが目を奪われていると、両の手に料理を盛った皿をいくつも乗せて仮面の男が戻ってくる。 「さぁさ、お食事…

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「ファミリア」第一話

「ファミリア」第一話

プロローグ 澄み切った十月の青空の下、わたしたちはサウスフィラデルフィアにあるとある教会の墓地に立っている。

 墓石に彫られた名前はジェシカ・クーパー。
 大好きなお母さんの名前だ。

 教会の鐘の音が晴れやかに響くと、それに驚いた鳥たちが一斉に青空の中へと飛び立っていく。
「ワン! ワン!」
 威嚇めいた鳴き声を上げて一匹の小さな犬が飛び出すと、わたしの隣で車椅子に座るマギーおばさんが笑いなが

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「ファミリア」第二十三話

「ファミリア」第二十三話

Jim
(11)

 局長室へと向かう途中、アニーが信じられないといった表情で私に訊ねた。
「ジム。一体どうしたというの? あなたのような優秀な死の使いが、まさか掟を破るような馬鹿な真似をするなんて!」
 責めたてるアニーに私は答えた。
「君も『愛』を知ればきっとわかるさ。私も、その『愛』によって突き動かされた者の一人だ」
 この言葉は彼女の心の奥へと届くだろうか? 私がヴァレリーと出会い、彼等を

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「ファミリア」第二十二話

「ファミリア」第二十二話

Jim
(10)

「チク・タク! こっちよ!!」
 ケイトは叫び、チク・タクを迎えるため大通りへ飛び出した。
「あれほど言ったのに!」私は慌てて道路を引き返し、叫んだ。「ケイト! 今すぐに戻れ! チク・タクは安全だ! 彼にその予定はないんだ!」
 大通りを進む車が、大きなラッパを鳴らしながらケイトへと迫っている。正面に捉えた弟を死なせないために、ケイトは全神経をチク・タクに集中させていた。
 私

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「ファミリア」第二十一話

「ファミリア」第二十一話

Jim
(9)

 再びICUと呼ばれる病室の中、母親の脇に腰掛けたケイトは、彼女の手を握り、呼びかけている。
「お母さん、必ず良くなるよ。だから心配しないで、今はゆっくり体を休めてね」
 自分に残された時間を意識しながらも、どこか彼女は、母親に残されている時間の方が、自分のそれよりも遥かに長いことを喜んでいるようだった。
 そしてケイトは、マギーとの別れのときと同じように、切なさと深い悲しみ、そ

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「ファミリア」第二十話

「ファミリア」第二十話

Jim
(8)

「いや、肉体の死は決定事項だ。たとえ彼女がドニーから逃げおおせても、また別の事柄で、彼女は命を失っただろう」
 私は彼女の質問に答え、そして彼女の返答を待つ。
 彼女は本当に優しい人間だ。今、この瞬間もケイトの頭の中では様々な憶測が飛び交い、私の問いに答えるべく最も相応しい答えを探しているのだろう。
 そう考えると、私は彼女の優しさに言葉では言い表せない胸の熱さを感じていた。

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「ファミリア」第十九話

「ファミリア」第十九話

Jim
(7)

 ジョーは、命の尽きた妻に向かって愛を告げ続ける。
「なあ? 君たちにとって、『愛』とは一体何だ?」
 横に立つサマンサに私が訊ねると、彼女は「人間みたいなことを考えるのね」と笑いながら答えた。
「愛って、それ以上先がなく、そして、最果てもない。そんな絶対的なものだとわたしは思うわ。神のようにね」
 そして、ジョーの背中側へ進み出ると、彼を包み込むような仕草をして言った。
「ジョ

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「ファミリア」第十八話

「ファミリア」第十八話

Jim
(6)

「ロベルト!!」
 すっかり変わり果てた息子をきつくその腕に抱きしめる父親の姿を私は直視することができず、目を背けたままその場に立っていた。
 ルカの魂を冥界に送ったアニーが戻ってくると、「ジム! まだ此処にいたの?」とすっかり呆れた様子で言った。
「すまない、彼をなかなか説得できなくて……」
「ジム。説得など無用よ。一体どうしたと言うの? あなたらしくもない」
 アニーの反応は

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「ファミリア」第十七話

「ファミリア」第十七話

Jim
(5)

 ロベルトと父親が色鮮やかなテントの露店に並び始めたとき、私は一つの事柄に気が付いた。それは、私と同じ同僚たちの存在だった。
 皆、それぞれターゲットから少し距離を置いていたが、見る限り、このテントに向かって、少なくとも三人の同僚の存在を私は確認していた。
 こういった場合に想定できるのは、このテントをきっかけに起こる突発的な大きな事故か、もしくはこのテントに向かって起こる突発的

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「ファミリア」第十六話

「ファミリア」第十六話

Jim
(4)

 それは私が気に入っていた絵描きの、その中でも私が最も好きだったフラミンゴのイラストだった。――それに気づいたとき、私は彼女に言い知れぬ親近感を覚え、自分に課せられた掟のことなどすっかり忘れ去った。絵描きについて彼女が知っていることをすべて聞きたいと思わず口をついた。
「その絵描きのことで何か知ってることがあるなら、私に教えてくれないか?」
 彼女は目を丸くし、ひどく戸惑う様子を

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「獏」第十話

「獏」第十話

第三章爆心
(1)

 天上の星がきれいな夜だ。空気は乾燥し、肌を刺す冷たい空気のせいで温かい缶コーヒーをよりいっそう美味しく感じさせた。
 ワイヤレスのイヤホンを耳につけ、パッカーのエンジンを掛ける頃、いつものメンバーから電話が掛かってくる。
『おはよう! D.J.今日は一段と冷えるな!』
 威勢の良い声が飛び込んでくる。イケモトだ。
「おはよう、イケモト、ジャスティスもいるのか?」
『いりゅよ

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「ホテルエデン」第九話

「ホテルエデン」第九話

 でき上がった料理を三人で食堂まで運ぶ。
「チクワ!」
 アケルが切り株の椅子の上で飛び跳ねる。待ちきれないのだろう。
「それじゃあ食べようか?」
「食べる!」
 サラダに煮物、焼き物に炒め物。まさに竹輪祭り。こんなに素敵で幻想的な大広間の中央テーブルでアケルと竹輪料理を食べ始めていることがとてもおかしくて、内心くすりと笑ってしまう。
「ではわたくし、せめてものお詫びとして音楽を奏でさせていただき

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「獏」第九話

「獏」第九話

莫迦
(4)

 すべての回収を終えた俺は、港にある処分場へと車を走らせた。
 パッカーのケツをスイッチで押し上げ、積んだゴミを押し出す。さらに車を降りてパッカーのケツへまわり、捨て残しがないか確認する。
 個体差はあるが、だいたいパッカーを満タンに積めば八立米。重さで言えば四トンくらいだが、パッカーは爪で捲き込みながら圧をかけて詰めるので、唸りこそすれ、ぎゅうぎゅうと詰めていけば相当の量が捲き込

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「ホテルエデン」第八話

「ホテルエデン」第八話

美しい変化
(7)

 大広間の奥、大きな木の植えられた左手に厨房への開かれた入口がある。中へ入っていくと厨房の中もなかなかの広さだった。
「竹輪かー。冷蔵庫かな? どこかしら?」
 厨房というからには、きっと業務用の大きな冷蔵庫があるはず。だが見当たらない。おかしいな、と思いながらさらに奥まで進みかけると、後ろから「おねえちゃん!」とアケルが呼んだ。
「どうしたの?」
「あった!」
 アケルが指

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「獏」第八話

「獏」第八話

莫迦
(3)

 アトラスのナビに従って、俺はすぐに問題の店までたどり着いたが、その頃にはすでに事態は収束しそうな状況だった。
「ジャスティス! 平気か?」
 俺がパッカーを停めて駆け寄ると、ジャスティスは驚いた顔をした。
「D.J.? 一体どうしたんだよ。ここはお前の担当じゃないだろ?」
「あぁ、イケモトから話を聞いて心配になって様子を見に来た」
 イヤホンからはしばらく黙っていたイケモトとアト

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「ホテルエデン」第七話

「ホテルエデン」第七話

美しい変化
(6)

 時間はあっという間に過ぎていった。私たちが目を奪われていると、両の手に料理を盛った皿をいくつも乗せて仮面の男が戻ってくる。
「さぁさ、お食事に致しましょう」
 仮面の男はいくつもの皿をひとつずつ器用にテーブルに降ろすと、料理の名前を読み上げながら、大きな花びらを散らすように皿を美しく並べていった。
「前菜は、新鮮なマグロのタルタル、空豆のピュレ添え。空豆は野生の緑の味わい深

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Cat.11 noran diary.

Cat.11 noran diary.

 ヘッダの画像は、モノカキコさんの新作あじさいです!かわいい!インスタにレイヤーがわかる3枚の画像が掲載されています。天井にあるライト(この画像ではその光は割愛されている)のセンスも最高でした。

 えー、タイトルに猫足を載せていない理由は、ひとえにATOKをいれたので、だしづらくなった、ということで。え、なぜATOK? そうなんです、一太郎をついに買ったぜ!